俳優・伊丹十三のこの1本〜 『吾輩は猫である』
俳優時代の伊丹十三といえば、監督デビュー直前の時期にあたる『家族ゲーム』『細雪』の印象が強いかもしれないが、筆者が〈俳優・伊丹十三〉で1本を選ぶなら、『吾輩は猫である』で演じた美学者・迷亭役を挙げたい。
おなじみの夏目漱石の同名原作を、市川崑監督によって映画化したもので、苦沙弥教師役には仲代達矢が扮している。
猫が主人公の映画というのは撮影に苦労しそうだが、すでに『私は二歳』で赤ん坊を主人公にした映画を見事に傑作に仕上げた市川崑からすれば、技工を凝らして猫を擬人化させ