工房を辞めた美の職人さんに会いに行く日
例えていうなら、私は美しく華麗な装飾を施したヴェネチアングラスを持っていたのだと思う。
見つめるだけで幸せな気持ちになり、その時々の光の加減で多種多様な輝き方を見せてくれるそのグラスを、いつもうっとりと眺めていた。
どんなに苦しい事があってもそのグラスの輝きを支えに自分も頑張ろうと思えたし、そのグラスを持つのにふさわしい人になりたいと思ってきた。
繊細で華奢な作りの品だから、いつかは壊れてしまうだろういう不安は常にあった。
手にするたびにほんの小さなほころびも見逃さないよ