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コロナ禍中に大好きなタカラジェンヌさんの退団を経験して思ったこと

愛するものを失う辛さは「時」という優しい友達に抱かれることでしか、癒すことはできない。 大好きだった人の退団発表から東京の千秋楽までに、私には約4ヶ月間という時間があった。 短いようだけれど、一定のまとまった時間だったと思う。 今思えば、その時間は彼女からの贈り物だったのかもしれない。 私は、その貴重な時間の使い方を間違ってしまった。 強い愛を持ち続けるだけではなくて、彼女への気持ちを少しずつ薄めていくことに使うべきだった。 退団を決めた彼女たちは、その時点でタカ

    • 3通の手紙

      これは架空の手紙です。 2022年宝塚宙組公演「Never Say Goodbye」の登場人物ピーター・キャラウェイが、帰国後に何年かにわたり受け取った手紙という想定です。 観劇した一個人の感想から生まれた単なる妄想にすぎませんので、「感想文」としてお読みください。 1通目 1942年 ピーター・キャラウェイ様 お世話になっております。 先ごろクランクアップした弊社新作映画「オリンピック・パーク(Montjuic Park)」の著作権について、全米脚本家組合の仲裁委員会

      • 工房を辞めた美の職人さんに会いに行く日

        例えていうなら、私は美しく華麗な装飾を施したヴェネチアングラスを持っていたのだと思う。 見つめるだけで幸せな気持ちになり、その時々の光の加減で多種多様な輝き方を見せてくれるそのグラスを、いつもうっとりと眺めていた。 どんなに苦しい事があってもそのグラスの輝きを支えに自分も頑張ろうと思えたし、そのグラスを持つのにふさわしい人になりたいと思ってきた。 繊細で華奢な作りの品だから、いつかは壊れてしまうだろういう不安は常にあった。 手にするたびにほんの小さなほころびも見逃さないよ

        • 【小説】惑星間移民船コロナ号

          1メール  「○○ファンクラブ、ご担当様  いつも○○さんの情報をありがとうございます。先日はサマーカードについてお問い合わせをしてしまってごめんなさい。今日、東京劇場公演のお礼状と一緒に届きました。  もう少し待てば良かったですね。毎日『そろそろかな?』とソワソワしていたので、ついメールしてしまいました。 お礼状のお写真も、サマーカードもとても素敵です。  ところでお礼状の舞台写真は、もしかして大劇場公演の時のでしょうか?私が東京宝塚劇場で観劇した時とお衣装の飾りが少し違う