「ラウテンベルク」

「ラウテンベルク」とは、手で弾いて音を出すリュートの音色を、鍵盤を弾いて演奏できるようにした楽器です。「ラウト」とはドイツ語で「リュート」を指します。

この楽器の製作にはヨハン・セバスティアン・バッハ(以下「バッハ」と略する)が関わっているという言い伝えがあります。

バッハはリュートの音色が好きでしたが、リュートの演奏は出来なかったようです。これは彼がアイゼハナにいた少年時代に、周辺にはリュート演奏ができる者がいなかったことを示しています。成人して一人前の音楽家となったバッハは、リュート演奏ができないことを悔やんだに違いありません。その証拠にバッハはリュートのための組曲を数曲しか残していませんし、それもオリジナルの作品ではなく、他の楽器のための組曲を編曲した作品になっています。

それでバッハは得意の鍵盤楽器でリュートの音色を出せる楽器の製作について、知り合いの楽器製作者に相談しました。その結果完成したのがラウテンベルクだった、という言い伝えです。完成した楽器をバッハは気に入り、よく演奏して音色を楽しんだようです。

しかし1750年7月にバッハが亡くなった後、彼の遺品目録の中にラウテンベルクは見当たりません。誰かの手に渡ったものか、あるいは全くの作り話だったのかも知れません。