手塚治虫「ジャングル大帝」はそれほど傑作と呼べるのだろうか?

手塚治虫が1950年から雑誌)漫画少年」に連載したのが「ジャングル大帝」です。しかしこの作品、手塚治虫の代表作の1つとされてはいますが、数奇な運命を持った作品です、何回も改訂版が出たり、あるいは一部の原稿の紛失というあり得ないアクシデントがあり、描き直した部分もあり、どれが決定版か分からなくなっています。

そしてこの作品にみられるのは、後年の手塚治虫の作品からは考えられないような「近代化への讃歌」です。レオたちが住むジャングルに近代的な医学などを持ち込めば幸せになれるという、極めてシンプルな近代化への志向です。しかしこれは後年の手塚治虫の作品にみられる悲劇の最終、両性具有の世界、変身、近親相姦、科学の暴走、などとは異なりあまりにも優等生過ぎる作品です。

これには当時のマンガが置かれた状況を反映しているものと考えられます。すなわちマンガを悪書として追放しようという動きが教員界やPTAを中心に巻き起こっていまさした。手塚治虫も学校やPTAの場に出たことがあります。

つまりこの作品は「良い漫画」として、PTAや、教育関係者が推薦できる作品として描かれ、改訂版を出す時も、その事を意識して改訂したのだと思われます。これは、後年の手塚治虫作品の世界とは、全く相容れません。私にはそれほどの傑作てはどうしても思えないのです。