拝啓
お元気ですか?
君のことだから元気に決まってる。
君が、この手紙を読んだら「なんだよ、これ」「LINEしてこいよ」ってバカにして笑って、最後までちゃんと読んでくれる。
図星だな、きっと。
言いたいのはね、「あの時は、ありがとう」ってことなんだけど。ほらほら、興味なさそうに目を細めた そこの君に補足説明させていただきます。
今でもたまに思い出すんだ。
君は覚えてないだろうなあ。
今思えばさ、部活ができなくても大したことないと思えるけど、あの時は全てを失った気分だった。
膝の靭帯って、あんなに簡単に切れちゃうんだなあって思っていると、あっけなくて、情けなくて、受け入れきれなかった。
みんなの気遣いは、嬉しかったよ。
ただ「大丈夫」だとか「大変だね」だとか聞けば聞くほど、大丈夫じゃないし、どうして自分がこんな目に合うんだよって、誰かどうにかしてくれよって思ってた。我ながら、ほんと性格悪いな。笑
やさぐれ。投げやり。何も出来ない。何もしたくない。
そんな時、君のことばに救われた。
「前進あるのみ」
泣いてても、笑ってても、ずっとこのままが良くても、嫌でも時間は過ぎて、物事は進んでいく。
残酷で、平等で、変わらない事実。
ありきたりな言葉かもしれない。でも。
前進あるのみ
どうにもならず止まっていられると思っていたのになあ。進むことしかできないんだなって。
あの時、諦めた。止まってること。巻き戻すこと。
同情でも、優しさでもなかった。
今の自分の姿を教えてくれた。
狭くて身動きひとつとれない箱に詰め込まれたと思ってたのに、顔を上げれば、終点まで途中下車を許されない、常に進み続ける箱にいた。いくら後ろへ走っても戻れはしない。うずくまっても止まれはしない。
あの時は、ありがとう。
君のことばに救われた。
敬具
追伸
最後まで読んでくれてありがとう。