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#20 神保町ひとりブックフェスティバル
毎年10月末を楽しみにしています。
世界でも有数の本の街、神保町が1年で1番盛り上がるお祭り、神保町ブックフェスティバルが開催されるからです。
同時に神田古本まつりも開催され、文字通り神保町は人と本で溢れかえります。
たくさんの本がお値打ち価格で出されて、本好きとしてはたまらないのだけど、毎年楽しみにしているのはそれだけが理由ではありません。
本を作る人、本を売る人、本を買う人それぞれがみんな本当にいい顔をして集まっているからです。
わたしはそれが見たくて毎年神保町へ行っています。
子供を産んですぐの頃でさえ、段差だらけでベビーカーはたたんで歩かなければならないし、オムツを替える場所もままならない神保町に、なんとか短時間でも…と足を運んでました。
今思えばよく行ったなと思う……
でも結果、毎年本当に元気をもらって帰ってきます。
いい大人たちがみんな子供のような目をして、本を前にしてはしゃいでいるのを見ると、なんだかもうわたしは何もかもが満ち足りているという感じがして幸せになってしまい、ここにある本みんなわたしが買っちゃるって気分でついついたくさん本を買ってしまうのです。
結局、持ちきれなくなってクロネコヤマトに駆け込んでしまうのです。
そうして家で戦利品を見つつニヤニヤしながらビール飲んじゃうのです。
そんなわたしの楽しみが、今年はコロナウィルスのせいでなくなってしまいました。
仕方ないとは思います。もう夏頃から覚悟はしていて半ばあきらめてはいたので、落胆もそこまではしないですみました。
でも、10月に入ってやっぱりとても寂しくなってきてしまって、ツイートでいくつかの出版社さんが、それぞれで小さい神保町ブックフェスを感染対策をしてやると発表されてるのを見たせいもあり……
でも残念ながらその日はもうすでに仕事で行けなかったので、その少し前にやっぱり自分で神保町に行くことに決めました。
気になっていた南インドカレーのレストラン、三燈舎さんに行ってみたかったのもあったので、そこも目的の一つにしようと思って神保町へ足を運んだのでした。
秋晴れの神保町は仄かな銀杏の香り。
朝急いで出てきて珈琲を飲みそびれていたので、まず珈琲を飲もうと、トロワバグへ。
前に行ったような気がしていたんだけど、入ってみると初めて入ったお店だったと気がつきました。
神保町は昔ながらの喫茶店という雰囲気の店が多くて好きです。
気になる名物メニューもたくさんあったんですが、とりあえずネルドリップのブレンドを。
赤いソファーに座るだけで、なんでこんなに落ち着くんだ。
家に赤いソファーなんかあったら絶対落ち着かない気がするのだけど。
もう最初から動きたくなくなってしまいます。珈琲も美味しいし、ここで本読んでたいなぁって。
でも今日は時間が限られているので先を急がなければいけないのでした。
せっかく久しぶりに来たのだからいろいろ見て回りたい。
ということで、まずは神保町に来ると大体ここから周り始める古書センターから。
全国の古本屋さんが買い付けにくる場所ですね。
一般人にも売ってくれるお店がたくさん入っています。
わたしは大体3階鳥海書房さんに行きます。
ここは博物誌や動植物の図鑑などが豊富にそろっています。
眺めているだけでも楽しいので絶対行ってしまいます。
ここでクジラ、イルカの生態本を800円で見つけて買いました。
岩波ブックセンターが今はこんな感じになってるんですね。
カフェも併設されていてお洒落な雰囲気でした。
靖国通りをてくてくと歩き、気になるお店をちら見していきます。
途中、お値打ちの写真集を2冊見つけて買いました。
そして小宮山書店に久しぶりに入ってみたら、もう完全に写真集専門のお店になったのですね。以前は少しだけ文芸書も扱っていてとてもいい本がそろっていたように記憶していたんですが、もうなくなってしまっていて残念でした。
神保町古書店街は専門書はそれぞれ本当に強いところが揃っていますが、普通の文芸書となるとどこが1番そろっているんだろう?とちょっと考えてしまいます。わたしが知らないだけなんだとは思いますが。
靖国通り沿いの本屋だけささっと見て、さっそく三燈舎さんに向かうことにしました。
おなかがすいたので。
場所がよくわからなかったのでグーグル先生に聞いてその通りに行ってみましたが、まったく辿り着かず!
一駅分くらい歩かされたのでさすがに違うだろうと思って戻ったら、先ほど通った靖国通り沿いにドーンとありました。反対側だったんで全然気づきませんでした。
めちゃめちゃわかりやすい場所にあるじゃんかーとちょっと泣きそうになりましたが泣きませんでした。大人なので。
この入り口が雰囲気ありますね。
今日のカレーはこんな感じ。
毎日違うものが食べられるのもいいですね。
そして花びらのお出迎えが素敵。
ランチメニューも外に貼ってありました。
迷いましたが、せっかくなので全部食べたい!とCセットにすることにしました。
階段を登るとなんと何人か並んでいました。
さすが人気店。
最後尾について待ちましたが、ほんの5分程度で中に通されました。
中に入るとなぜか言いようもない懐かしいにおい。
スパイスの香りと混ざった完全に異国の香りがします。
インドには行ったことがないのですが、スリランカに20年以上前に行った記憶でしょうか。
それともドバイやエジプトなどの中近東の記憶と混ざっているのか……
なんだかホッとする香りでした。
こじんまりした店内で厨房も見えていて、シェフは完全にインドの方のようでした。
Cセットを頼み、付け合わせのドーサかバトゥーラを選びます。
ドーサとは南インドのクレープのような食べ物で、米と豆を合わせてペースト状にすりつぶし発酵させた生地を鉄板の上でクレープのように薄く焼いたものだそうです。
バトゥーラとはナンのようなものですが、焼くのではなく油で揚げたものをバトゥーラと呼ぶそうです。
わたしは今回はドーサにしました。
来たのがこちら。3種のカレー。ドーサで見えてません。
・チキンキーマとピーマン(辛)
・エビのシチュー(中辛)
・かぶとモロッコいんげん(マイルド)
そしてラッサム(トマトのスープ)
サンバル(豆と野菜の煮込み)に手前の寝てるのがドーサ、奥の立ってるやつがパパド(豆などから作られる極薄の煎餅)
以上がランチのフルコースセットのメニューです。
まずそれぞれ一口ずつ食べてみます。
かぶとモロッコいんげんから。
うわー、口から鼻からスパイスの香りがぶわっと広がって突き抜ける感じ。
美味しい。
かぶもいんげんもくたくたに煮込まれていて口に入れるととろけて甘い。
エビのシチューはまた衝撃的うまさ。エビの旨味がよく出ていてシチューとついているようにまろやかでクリーミー。でもしっかりスパイスの香りがあって本当に美味しい。
チキンキーマとピーマンはかなり辛い!口に入れた瞬間一気に身体中がぽかぽかして汗がふき出ます。ちょっと酸味もあってこれまた全然違う味。美味しい。
なるほど3種類こういう風に全然違うタイプのカレーを組み合わせるんだな。ラッサムとサンバルもそれぞれ違ったタイプのスープで美味しかったんだけどなんせチキンキーマで舌をやられてしまって味がよくわからなかった。激辛……とまではいかないと思うけど、かなりしっかり辛い!辛いの苦手な方は要注意です。
それぞれ食べたら、今度はご飯と混ぜていただきます。
やっぱりインドカレーにはバスマティライスが合います。ご飯はおかわり自由で、たくさん食べたい人にも嬉しいです。
それぞれ混ぜながら食べると混ざり具合で口の中にいろんな味が広がります。これが南インドミールスの醍醐味の一つでしょう。全てをよく混ぜても美味しいし、まだらに混ぜてもいろんな美味しさが楽しめます。パパドを砕いて入れるのもアクセントになって良いし、ドーサも優しい甘さでカレーとよく合います。
人気のお店のスパイスカレーを食べてみて、やっぱり自分が作ったものとは当たり前だけど全然違うなと思いました。
香りの豊潤さ、味の深さ、素材の活かし方、何もかもが足りてなくてやっぱり自分のカレーはまだまだ足元にも及ばないことを痛感させられました。
カレー道果てしないです。
現地式に手で食べるのもおすすめだそうです。ただその手を洗うボウルなどはなくて、お手拭きも何枚使えばふけるかわからないと思ったので、わたしはやめておきました。
美味しかったー
さすがにCセットはボリューム満点。お腹いっぱいになって苦しくて食べ終わった後お水を飲んで消化していたら、5分もしないうちに店員さんがやってきてお待ちの方がいるのでと言われてしまいました。
そんなに長居したつもりがなかったのでちょっとびっくりしましたが、人気店ゆえ仕方ないですね。食べたらすぐ出る。忙しいオフィス街にある人気店だからここはちょっと気をつけなければいけなかったと反省いたしました。
店を出るともうあまり時間がなくなってしまっていて、本当は本の雑誌社さんとか白水社さんとかお世話になってる出版社にご挨拶に行きたかったし、会いたかった方もたくさんいたのですが泣く泣く断念して、最後にここに来たら東京堂さんだけは寄らねばと、大好きな書店の一つに入りました。
ここは、本好きの聖地と呼ばれる新刊書店で、独自のフェアがいつも素晴らしく目を引くし、並べられている本もかなり厳選されていて他の書店とは一味違うラインナップとなっています。
ここに入ったら、まず手ぶらで出ることは不可能。
わたしもまんまとやられてしまいました。
本当は気になっていた写真右下の『人類堆肥化計画』だけ購入しようと思っていたのですが、
まず真っ先に目についたのが『マンガ人類学講義 ボルネオの森の民にはなぜ感謝も反省も所有もないのか』。
こんな本が出ていたのか!という驚き(わたし普段書店員なのでここにある本は全て商品として知っていてもおかしくないのですが)。人類学なんていうテーマのものが漫画になっているのかという面白さ。ボルネオの森の民の文化もものすごく気になり、これは真っ先に買うと決めました。
そして平凡社ライブラリーの復刊フェアもやっていて『日本の音』というなんとも魅力的な本が出ていたのでこちらも手に取ったら戻せなくなり、
その後ガイド本が並んでいるところで『食べ歩くインド』北東編と南西編を見つけて、こちらはかなり迷ったんですが、広大なインドの食文化がこれ2冊にぎっしり詰まっていて、しかもオールカラーという豪華なものだったので思い切って買うことにしました。
全部で1万円ちょっと。
買ったなぁと思ったけど、わたしの前に会計していたおじいさんは9万円超えだったので、あぁ自分はまだまだだと思ったのでした。
東京堂さんは1万円超えると無料で配送してくれるそうで、ありがたくサービスを受けさせていただきました。
こういうサービスは素直に嬉しい。本は重いから。
あっという間の神保町ひとりブックフェス。
ブックフェスと言いつつ、大半カレーだった気がしますが、今回はプロのカレーの味も確かめられたし、古書店の棚作りやサービスなども見てたくさん勉強になりました。
中でもどちらかの古書店さんがやっていた(名前を忘れてしまいました)本を千円以上買うと飲み物サービスというのは、ぜひ真似したいと思いました。本を買うと珈琲や紅茶が無料だったらちょっと嬉しいですよね。そして配送無料も村内だったらわたしが配送しますという形で取り入れられそう。そういう使う人がちょっと嬉しくなるような取り組みを取り入れられたらなと思っています。
長くなってしまったので今日はこの辺で。
また来週!
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