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鈴木智花『いつか骨まで海になるまで』
鈴木智花さんの歌集『いつか骨まで海になるまで』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。
やさしさがひとつもこぼれないように静かに静かにあける缶詰
缶詰を開けた時に、フチぎりぎりまで入っているシロップですね。
誰かに対する主体のやさしい気持ちが、あふれんばかりに詰まっています。
缶詰を静かに開けるには、少し力がいりますね。
やさしさを誰かに手渡すためには、強さも必要なのかもしれませんね。
家族ってとても 曖昧ミイマイン ゆうぐれカレーのにおいがするわ
語感がとてもよくて、口ずさみたくなるお歌です。
家族関係は強固なようで、実は線引きが曖昧です。
私は、私の、私に、私のもの。
家族は私のものといえる時もあれば、とてつもなく遠い存在に感じる時もありますね。
いろいろ悩んだり考えたりすることはあるけれど、結局は今のおうちに帰るとほっとするのだと、下の句が言っている気がしました。
毎日は常に実践のみである繰り返すこれは訓練ではない
毎日は繰り返しのように見えて、全く同じ日はありません。
人生に巻き戻しはありません。
毎日は常に本番なのです。
「である」「ではない」という硬い口調が似合っているお歌だと思いました。