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山田航『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』

山田航さんの『寂しさでしか殺せない最強のうさぎ』(書肆侃侃房)を拝読いたしました。
印象に残った歌を引きます。

寂しくて死ぬというより寂しさでしか殺せない最強のうさぎ

寂しさでしか殺せない存在は本当に最強なのでしょうか。
寂しさって案外簡単にやってくると思うんですよね。
季節の変わり目、人との別れ、自らの老いなどなど、寂しくなる要因は至るところにあります。
他の要因では死なない。
でも寂しくなったらあっけなく死ぬ。
それをあえて「最強」と言っているところに、強さに憧れるもろさを感じました。

振り向いて笑ってみせたりしなくていい傷つく場所を間違えちゃだめだ

誰かのために笑ってみせるときってありますよね。
自分の意思に反して笑顔を見せるとき、人は傷ついているのかもしれません。
その傷はきっと他人には見えない。
誰にも見えない場所を傷つけちゃいけないんです。
その傷は、自分でも気づけず悪化させてしまうかもしれませんから。

犀ねむる雪のくさはらあきらめることを強さに変へたくなくて

生きているとあきらめるものがたくさんあります。
この歌で詠われているのは、「誰かと分かり合うこと」ではないかと思いました。
他人に期待しないというのは、ある意味強いとも言えます。
他人の言動に一喜一憂せず、淡々と何かをこなす姿に憧れることもあります。
ですが主体は、強さを別のところに求めます。
他人を信頼するのはとても怖いことです。
人との繋がりをあきらめずにもがく姿は、格好悪く見えることもあるでしょう。
それでも、主体は他人に向かって自分を開くことをあきらめたりしません。
私はこの歌の主体が好きだなと思いました。


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