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感覚派と理論派の成長方法。

感覚派と理論派――写真を語るとき、よく話題に上るテーマだ。
実際、この二つのタイプは頭の使い方が根本的に違う。

たとえば、車を運転しているとしよう。
ナビや地図を駆使して最短ルートを算出するのが理論派。
一方、道路標識や風景を頼りに目的地を目指すのが感覚派。そんな違いだ。

ただし、感覚派と理論派には明確な優劣はない。
これはあくまで成果に至るまでのアプローチの違いに過ぎないのだ。そして努力次第で、感覚派が理論派になったり、理論派が感覚派的なセンスを磨いたりすることも可能だ。

かく言う僕は、感覚派の人間だ。
それを知ったのは、以前勤めていた写真スタジオで行われた入社時のテストのおかげだった。

20枚ほどのランダムな写真が並べられ、どの写真が良いと思うか、またなぜそう思うかを語るという内容だ。
僕は、表情や雰囲気から「楽しさ」や「幸せさ」を感じた一枚を選び、その感情について話した。
一方、同時に入社した同僚の女性は、別の写真をピックアップし、ライティングやポージング、構図といった技術的な観点からその写真を評価していた。

結果、僕は感覚派、彼女は理論派と分類され、それぞれに合った教育が施されることになった。

僕には写真の基礎が叩き込まれた後、多くの写真を見ることが求められた。
良いと思った写真をプリントアウトし、トルソーを使って再現する。その過程でライティングや構図を意識することが、感覚派の僕が理論派的な思考を身につけるきっかけとなった。

ただ、これらは慣れでなんとでもなる。
感覚派でも「この感じで撮るにはモノブロックをここに置いて、強すぎると嫌だから弱めに当てて、あとは何枚かテストショットするか」という半分理論みたいな事もできるし、撮影のプランを脳内で作る際にも、何度かトライアンドエラーを繰り返し、自分の中で撮影の台本を作ってしまえば良いだけだ。

理論派に関しても同様だ。
「自分だけでなく世間で良いとされる写真をとにかく沢山見て、自分なりに解釈する」ということを繰り返す。時には写真から離れて絵画を見たり、映画を見たり、MVを見たり、デザイン書を読むことも重要だ。

特に、あまり言われることはないが、MVを見ることは大切だ。
MVにはまず世界観という土台が存在し、そこからメッセージ性が生まれる。
それを再現するためのライティングや編集が施される。
つまり、アーティストの伝えたいことや世界観を理解した上でライティングを観察すれば、感情に合ったライティングの技法が学べる。
色味や画角を分析すれば、それが現像技法の助けになる。
これほど効率的な勉強方法はない。

逆に言えば、感覚派がより感覚を澄ませたいというのなら、上記のような芸術鑑賞によるインプットを行えばいい。
理論派に関しては、自分の中の台本を制作し、それを研ぎ澄まし、台本数を増やしていけばいい。

実際、大手の写真スタジオでは感覚派の教育は難しい。
写真は理論に基づき構成され、お客の求めるものに応えなければならない。感覚に頼った不確定要素の多い撮影はリスクが大きいのだ。

長くなってしまったが、ここまでを読んだ君はどちらだろうか?
感覚派か、それとも理論派か。どちらに属していても、伸ばし方次第で新たな可能性を見つけられる。君の写真ライフが、少しでも豊かになることを願っている。

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杢璃/Mokuli
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