ブドウの木、ぐねぐね曲がる。
誰もが一度は食べた事がある(と思う)ブドウ。
では、ブドウの木をじっくり観察した事はあるでしょうか。
私は、実家に植えられてるブドウも、ブドウ狩りの時も、その木をじっくりと観察したことはありませんでした。
昨年、SNSで知り合った愛好家の方から葡萄の木を分けていただき、その時に初めて材木としての葡萄をじっくり観察する機会をいただいたのですが、第一印象は「物静かな暴れん坊」。
今回ご縁があって、地元の葡萄農家さんから葡萄の木を分けていただいた時の事をブログに投稿しましたが、その時のブドウを使った制作から感じた、ブドウという木の生命力についてお話したいと思います。
一晩でぐにゃり!
ブドウはつる性植物なので、木としてはあまり太くありません。
実家の木は樹齢10年ほどですが、根元の太さは人の腕ぐらい。それに比べて、枝葉を広がりは旺盛で、ブドウ農家の辻さんによると、1本の木が10mぐらい枝を張るのだそうです。何という生命力!
さてその木から何を作るか、ということですが、これはどんな木でも、毎回、一番頭を悩ませる所です。なるべく見合った用途で使いたいと常々思っています。
今回は材の大きさから、ベビースプーンを作ってみることにしました。今、ご縁をいただいてベビースプーンなど赤ちゃん用の木彫り作品を作っているのですが、その試作を兼ねてと、辻さんのお孫さんに使って貰えたら、と思ったのです。
さて一番大きな株元部分をバンドソーで粗方四角に木取りしたら、スプーンの形に(大き目に)切り出します。まだ生木なので、(木が)動くだろうから、しばらく置いて様子を見る事にしました。
そして翌日。
何とまぁ、切り出した形なりに、ぐにゃりぐにゃりと曲がっているではありませんか。
これまで見てきたどんな生木よりも動く。びっくりしました。ブドウを観察した経験から、「爆ぜる」「うねる」ことは体験していましたが、ここまでとは…と驚きを隠せませんでした。まるで地層のずれ、褶曲のようです。何という力強さ。
これでは作品にならないな、と一瞬思いましたが、スプーンの形まで彫ってあったものを手に取ると、なんだか使いやすい。よく見てみると、持ち手部分が指の形に合わせたようにグニャグニャと曲がっているのです。まるで、どうせ削るならここまでやりなさいよ、と言われているよう。
形にするということ。
今回、この程度動くだろうという先入観は何の役にも立たず、言ってみればブドウの木にコテンパンにされたようなものですが、それがすごく清々しく、私は何もわかってなかった、ということが分かったというか(笑) やっぱり木はすごい!と畏怖・尊敬の念を新たにしました。
形にするということは、それ自体はエゴでしかないのですが、使い手の使いやすさや、木の性質を改めて深く洞察することで、エゴを超えた何か、不要なものを削ぎ落した形に到達できるのではないか、と思わされた出来事でした。
それにしてもぐにゃりぐにゃりとよく曲がるブドウの木、それはそれで素晴らしい性質で、魔女のステッキでも作ろうかな、と思ったりしました(^_^)先端に鉱石をはめたり。そんな造作があってもいいかもしれませんね。
最後まで目を通して下さりありがとうございました。
ではまた。
2023年1月20日
もくたん工房
ばしょ あゆみ
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