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[report]『石川九楊大全【状況篇】言葉は雨のように降りそそいだ』(上野の森美術館)
開催情報
『石川九楊大全 後期【状況篇】言葉は雨のように降りそそいだ』
場所:上野の森美術館(東京都台東区)
開催日:2024.7.3.wed-28.sun
入館料:2000円(一般)
内容:書家・石川九楊の書作品から厳選した300点余を、前期・後期ひと月ごとに全て掛け替える大規模連続展覧会。
※ 前期は6月30日に終了
※ 展示室内撮影不可
※ コインロッカー無し(貴重品以外は受付で預かってくれるようです)
主な登場人物
河東碧梧桐(1873-1937)
俳人。石川九楊(1945-)
書家。福井県出身。師・垣内楊石より、故郷・九頭竜川の「九」と楊石の「楊」の字をとり「九楊」の名前をもらう。
関連書籍
『図録 石川九楊大全』石川九楊 左右社
ISBN : 9784865284171
書店取り寄せ可。
ほとんどの元のテキストや源氏物語シリーズの作品解説は掲載されているが、河東碧梧桐シリーズの作品解説はない。こちらの作品解説は『石川九楊作品集 俳句の臨界-河東碧梧桐一〇九句選』に掲載されているよう。
作品の画像はほとんどは縮小されている。ところどころに拡大画像が入る。
河東碧梧桐シリーズは、かなり縮小されているので、このシリーズが好きなら『石川九楊作品集 俳句の臨界-河東碧梧桐一〇九句選』がおすすめかもしれない。『石川九楊全作品集』石川九楊 思文閣出版(2024年夏発売予定)
ISBN : 9784784220595
会場で予約すると、石川九楊氏のサイン入りが届くようです!
…お値段税込22万円…『河東碧梧桐-表現の永続革命』石川九楊 文春文庫
ISBN : 9784168131073『石川九楊作品集 俳句の臨界-河東碧梧桐一〇九句選』石川九楊 左右社
ISBN : 9784865280692
関連ページ
↓ Art Plaza Times レビュー(ライター:森聖加)
章構成覚書
<第一室>下部へ、下部へ、根へ、根へ、花咲かぬところへ。暗黒のみちるところへ(谷川雁)
「原点が存在する」「おれは砲兵」谷川雁
《可能性が可能性のまま凝固してしまう》
<第二室>わが神、わが神、どうして私をお見捨てになったのですか(マルコ伝)
《エロイエロイラマサバクタニ又は死編》
《はぐれ鳥とべ》
《世界の月経はとまった》
《生れ生れ生れて生の始めに暗く、死に死に死に死んで死の終わりに冥しI》
《言葉は雨のように降りそそいだ 私訳イエス伝》
<第三室>関係双曲 革命円環 生活楕円 人間不能(石川九楊)
夜の沈黙の中でひとり静かに墨を磨れ
心細かったら今もどこかで同じように
生きることの悲しさと苦しみとを
織り込むように仕事をしている人が
間違いなくいることを信じて墨を磨れ
(石川九楊)
<第四室>ローマの花 ミモーザの花 其花を手に(河東碧梧桐)
碧梧桐一〇九句選
<第五室>国の名の下での凶悪犯罪は合法という、御伽話からの卒業が必要だ(石川九楊)
《ドストエフスキー カラマーゾフの兄弟》
《二〇〇一年九月十一日晴ー垂直線と水平線の物語》
《追悼吉本隆明「もしもおれが死んだら世界は和解してくれ」と書いた詩人が逝った》
《東京でオリンピック?まさか!》
《「全顔社会」の回復を願って》
《「ヨーロッパの戦争」のさなかにー人類の未熟について》
直筆原稿
感想
時系列でシリーズ毎の展示。全5室。
1970年代の作品を中心とする<第一室><第二室>は、演劇を連想した。
《エロイエロイラマサバクタニ又は死篇》は、血を吐くような叫びに、終盤の墨の雫は涙に見えた。
《はぐれ鳥とべ習作》の、いくつもの小さい習作は、舞台俳優の稽古を連想した。
言葉をどのように表現するか、というところは、演劇と似ていると思った。
階段を登った<第四室>は、河東碧梧桐シリーズ109点がズラリと並ぶ。
1、2室と緊張感のある大きな作品が続いた後、日常の光景を俳句に詠んだシリーズに気持ちが緩む。暮らしの中のハッとする瞬間、ふふふっと微笑ましい句もある。
最後の<第五室>は、石川九楊氏自身の言葉を書にした作品ということもあり、氏の思考をそのまま紙に映し取ったように見えた。
どこかシナプスやニューロン、シグナルを思わせる筆跡だからかもしれない。
「人を殺し、川や建物を破壊することが、国の名の下ならば合法という御伽話は卒業しよう。人が生贄として国家に捧げられる神話から目を覚そう。」という石川氏の呼びかけが聞こえる。
展示されている手書き原稿と講演のレジュメが、とても興味深い。
原稿の紙は「石川九楊用箋」!罫線の色はグレー?
小さめのマス、周囲の余白が広め…に感じるが確信なし。
筆記具はなんだろう?文字の色は黒。
修正した部分は完全に読めなくなるまでグルグル書きで潰されている。余白に多くの追加の書き込み。
速さを優先した、ちょっと乱雑な文字。
講演会のレジュメは、5ミリ方眼に一文字ずつ、きっちり丁寧に書かれている。筆記具は鉛筆あるいはシャーペン。HBくらいか。
文章が組み立てられていく過程や、書いている姿が想像できる手書き原稿は、見ていて楽しい。
『GENJI55 石川九楊 源氏物語書巻五十五帖』
ミュージアムショップに前期にはなかった冊子を発見!
石川九楊「源氏物語」図版、2冊セットで2200円(税込)。
1冊はモノクロで、ほぼ実寸の図版が見開きに1つずつ印刷。(ページ番号がないので、目当てのページは探しづらいし、付箋を貼ると紙が傷みそうなのが難点。)
もう1冊はカラーで拡大した図版と作品解説、巻末に各帖のあらすじが(とても小さい字で)印刷されている。
縦256mm×横200mmほどの大きさ。コミック紙のような紙(タブロ)で、表紙も同じ紙なので、あまり耐久性はなさそう。
でも、ほぼ実寸大なのは魅力。高級感はないが、これはこれでカッコイイ。
こちらは一般書店に流通しないので、気になる方はぜひショップへ!
サンプル手にとれます。
【新刊】『GENJI55 石川九楊 源氏物語書巻五十五帖』
— 文字文明研究所 (@mojibunmeiken) July 14, 2024
石川九楊の書作品「源氏物語」全55点の図版を収録した本誌と、それを元に拡大カラー図版を展開、各帖のあらすじと作品解説が掲載された副読本の2冊組。
上野の森美術館で開催中の「石川九楊大全」展覧会ショップにて販売開始です! pic.twitter.com/Ccdjc4i2vo
余談1:トーハク常設
年パス購入して年4回発行の「東京国立博物館ニュース」をコンプリートするのが目標だったのだが、トーハクのために1日使おうと思うと、後手後手になりがちなので作戦変更。
「近くまで来たら、30分でいいから寄ろう。」
日頃 かわかわ さんの note 記事で妄想東博観光しているのだが(いつも記事をありがとうございます)、これはぜひ観たくて、これだけでも観ようと立ち寄った。
トーハクは大きな本屋さんに似ている。お目当てがあっても、たいてい予想外の出会いがある。
若冲の中でも屈指に好きな《玄圃瑤華》が展示されていた。
2階8室だったかな。
2階10室 浮世絵は国芳三昧。
![](https://assets.st-note.com/img/1721627854193-ClzLY3DU4e.png?width=1200)
余談2:不忍池で蓮が見頃
![](https://assets.st-note.com/img/1721617461607-Ydde053Nha.png)
蓮見デッキでは沢山の風鈴がカラコロ涼しげに大合唱
7月12日〜8月12日まで「うえの夏まつり」開催中