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[report]『漢字のはじまり』(書道博物館)

※ タイトル画像:本展チラシと《甲骨文字第1期・牛肩甲骨》(書道博物館 蔵)が表紙を飾る「サライ9月号」


開催情報

『漢字のはじまり』
場所:書道博物館(東京都台東区)
開催日:前期:7.23.tue-9.29.sun / 後期:10.1.tue-12.15.sun
入館料:500円(一般)
※ ぐるっとパスで入場可

内容:中村不折コレクションからホンモノの考古品で漢字のはじまりについて解き明かす

※ 本館の一部をのぞき、展示室内撮影不可。

主な登場人物

  • 蒼頡そうけつCāng Jié
    漢字を発明したとされる伝説の人。「黄帝之史倉頡,見鳥獸蹄之跡,知分理之可相別異也,初造書契。」『説文解字』
    黄帝に仕えた。観察眼が鋭かったので、目が四つある姿で伝えられる。
    ちなみに、筆の発明は「蒙恬もうてん」、紙の発明は「蔡倫さいりん」とされる。

  • 始皇帝(紀元前259-紀元前210年)
    漢字を統一。

  • 鍾繇しょうよう(151-230)
    書家。政治家。

章構成覚書

中村不折記念館 1F
漢字のはじまり
六書りくしょ
 ・象形:もののかたちをかたどる方法。
   ex)雨、雲、月、日
 ・指示:何がどこにあるか、どれだけあるか。
   ex)上、下、至
 ・会意:すでに作られた字を組み合わせる。
   ex)武(戈+進むことを意味する足跡[止])
 ・形成:最も多い作り方。へんは字の意味、つくりは音を表す。
   ex)酒、漁
 ・仮借:作られた字のもとの意味が全く別のものになった。
   ex)無(もとは踊り子の姿、発音が"無い"と同じ)、不(花のがく→"無い"の意味)
 ・転移:本来の意味から転じる。

漢数字
 指示:一、二、三、四
 仮借:五、六、七、八
 象形:九、十

中村不折記念館 2F
漢字の発明伝説:蒼頡そうけつ=漢字を発明した伝説の人。四つ目の姿で伝わる。
 商(殷)(前1300年頃)
  甲骨文字:亀の甲羅や動物の骨に占いを刻む。熱を加え生じたヒビで占う。
 西周(前11頃-前8世紀)
  金文(青銅器に文字を鋳込む)
  西周中期:占いは行わない。祭祀は継続。太さが均一化。
  西周後期:線が均一、長文化。諸侯の自立化。
 春秋戦国時代(前770-前256):それぞれの国ごとに発展
 秦(前221-前3世紀前半):始皇帝が文字を統一。篆書の完成。大篆→小篆
 「泰山刻石」
 漢(前1世紀頃-200年頃):隷書の発達。篆書→隷書(正式書体)
 三国時代(250年頃):楷書
  すばやく書く、補助的書体=行書、草書

本館2F
 甲骨文字
  第1期:雄偉ゆうい
   大きな字、美しいかたち、ざっくり豪快。
  第2期:謹飭きんちょく
   小ぶり、整った構え。
  第3期:頽靡たいび(期間が短い)
   占いをおろそかにした?字が雑、整わない。
  第4期:勁峭けいしょう
   亀甲占いがない。第1期を思わせる字。
  第5期:厳整げんせい
   小さく細かい。

中村不折記念室
糸瓜忌へちまき:俳人・歌人 正岡子規の忌日。9月19日。
「糸瓜咲て痰のつまりし仏かな」
※ 書道博物館のほぼ向かいが子規庵

関連書籍

  • サライ2024年9月号(2024年8月8日発売) ※月刊誌 毎月10日頃発売 小学館
    大特集:「漢字」に遊ぶ 甲骨文字から街のネオンサインまで
    ISBN : 4910142110948
    雑誌コード:14211-9
    …もう一つの特集は「あんみつ」…つい、こっちを見てしまう…

関連サイト

↓漢字を古代文字で表示できる「白川フォント」(立命館大学)
 ※ 個人の非商用利用は無償ダウンロード可

「立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所ホームページ」

「白川フォント」
…現代の漢字は古代文字だとどんな字か、検索表示できるページ
 ここからフォントのダウンロードもできる。

感想

中村不折コレクションの甲骨文字や青銅器、石碑などから、「漢字のはじまり」を解き明かす展示。(殷の甲骨文字から三国時代くらいまでの所蔵品を主に展示)
夏休み(もう終わるが)の自由研究にもピッタリ。
周期的に同様の展示を行なっている、定番テーマのようだ。
展示室内のキャプションは、親しみやすく丁寧なのだが、図録や小冊子がなく撮影も不可なので、博物館を出ると8割内容忘れてしまう自分の記憶力が悲しい…
今回は『サライ』9月号の漢字特集で、書道博物館の所蔵品の写真を用いた漢字の歴史の記事があるので、予習・復習に眺めている。

「甲骨文字第1期・牛肩甲骨」は、『サライ』の表紙だと大きく感じるが、実物は思ったより小さい。(牛の骨だし)
しかし、三千年前に王が占いに使った実物と思うと説得力があるし、今日までよく残ったと驚く。(…表面が平らでないので、これに文字を彫るのは大変だろうな〜と思ったり…)

甲骨文字の象形文字は、絵に近いので見ていて楽しい。
文字の方向が天地がバラバラなのが謎。なぜ天地が決まっていないのだろう?
丁度、書道博物館公式Xがポストしていたのでリンクを貼る。

「虎」「馬」「鹿」天地バラバラ…なぜだろう?骨に書きやすい方向?
「虎」は、いつもこの方向なんだろうか?それに意味はあるのか?

展示された甲骨文字ひとつひとつに、その成り立ちが解説されている。
「そういう意味なんだ〜」「なんでそうなった!?」などと思いながら、見ていくのは楽しい。

大好きな字は 2F の金文の「子」。
子どもが両手を広げて「ワーイ」としているようで、かわいい。
戦国時代の国ごとに独自に発展した字体も面白い。
水玉を散りばめたような「陳純釜銘ちんじゅんふめい」の肥点(丸い点)がついた文字が、かわいい。
丸い点はスタンプみたいにしているのだろうか?

一文字毎に、古文・篆書・隷書を並べて記した三体石経さんたいせっけいも、この字がこうなるのか〜と見ていて楽しい。
…ポケモンの進化みたい…と、思ってしまった。

寄り道:トーハク常設

書道博物館からトーハクまでは、歩いて行ける距離。
トーハクでは 8.6.tue-9.16.mon の期間、本館1階18室で河鍋暁斎《地獄極楽図》が展示されている。メンバーズパスを活用し、これを見に行こう!

大きくて題材もキャッチーな《地獄極楽図》は、外国人観光客のみなさんにも大人気。
しばし、近くの《老猿》を鑑賞しつつ様子を伺ってみたが、観客が途絶えることはなかった。

高村光雲《老猿》(部分)東京国立博物館 蔵

本館2階8-2室。
亜欧堂田善あおうどうでんぜんの版画は初めて観た。…もっと観たい!

亜欧堂田善あおうどうでんぜん《龍図》東京国立博物館 蔵
江戸時代の銅板印刷
司馬江漢《不忍之池しのばずのいけ》東京国立博物館 蔵
「日本ではじめて銅版画を完成させた司馬江漢による覗き眼鏡で見るための銅版画です。」(キャプションより)
"不忍池"って、こんなだったっけ?というパラレルワールド感

本館1階 15室。
フォローしている かわかわ さんが紹介なさっていた"ピングイン"を見に行こう!と思ったのだが…

展示替えになってしまったようで、"ピングイン"には会えず、代わりに山禽の駝鳥に出会った。

《禽譜_山禽1》 堀田正敦編 東京国立博物館 蔵
…『アフターマン』かと思った
「疑ラクハ誤寫ナルベシ」と書いてある


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