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[report]『川端龍子+高橋龍太郎コレクション コラボレーション企画展「ファンタジーの力」』(大田区立龍子記念館)


開催情報

『川端龍子+高橋龍太郎コレクション コラボレーション企画展「ファンタジーの力」』
場所:大田区立龍子記念館(東京都大田区)
開催日:2024.12.7.sat-2025.3.2.sun
入館料:1000円(一般)
※65歳以上(要証明)、未就学児及び障がい者手帳等をお持ちの方とその介護者1名は無料

内容:川端龍子の作品と高橋龍太郎氏のコレクションのコラボレーション企画展。
ブックディレクター・幅允孝がテーマに沿って選書した本を展示室に設置。アートと本を通して想像の扉を開く。(展示作品約60点、選書約100冊)

※ 今展は写真撮影可
※ 開館時間 9:00-16:30

https://www.ota-bunka.or.jp/facilities/ryushi

・龍子公園の案内:開館日 10:00、11:00、14:00(30分程度)
※ 時間外は閉門

・アトリエ内の作品見学:開館日13:30-14:00(要事前予約・定員15名)
・アトリエでの読書体験:開館日11:30-13:00(要事前予約・定員8名)
 資料費(幅允孝の選書リスト):一般200円、小中学生100円
※ アトリエは暖房機器が整っていない。暖かい服装で。
※アトリエ・公園内にトイレ無し。(利用できるトイレは記念館のみ)

主な登場人物

  • 川端龍子(1885-1966)

  • 高橋龍太郎(1946-)

  • 幅允孝はばよしたか(1976-)
    ブックディレクター

  • 児島やよい
    本展共同キュレーター

章構成覚書

第1章 旅立ち
1940年、川端龍子は中国(満州)へ旅をし、《花摘雲》を描いた。
《花摘雲》(1940年)×さわひらき
「川端龍子の旅行鞄」×宮永愛子

第2章 そこにいるのは誰?
アーティストが描く世界は、あなたの物語と繋がっているかもしれない。
西ノ宮佳代、堂本右美、杉戸洋、丸山直文、目[mé]、宮永愛子、町田久美

第3章 土と光、風の物語
さまざまな風景。さまざまな光、空気のゆらぎ。土の匂い、陽の光。

《土》(1919年)×伊勢周平、樫木知子、中村和美

熟れた麦畠に、今孵ったばかりの雲雀の雛の喜びの声。それは太陽への讃美、大地への感謝といったものを織り込んでの一作でした

川端龍子 「展覧会ガイド」より

《日々日食》(1958年)×李禹煥、玉山拓郎

ビルを表通りに建てられたその裏側の人たちの住宅では、来る日も来る日も、太陽はビルの角から一寸覗くだけであって、何も物珍しく金環触と騒ぐまでも無いことで、こうして日々日食に出会ひつつある社会情景なのだった

川端龍子 「展覧会ガイド」より

第4章 夢の領域
1951年、川端龍子は平泉中尊寺の発掘調査によりミイラが発見された新聞記事をもとに《夢》を描いた。
《夢》(1951年)×青山悟、安藤正子、大野智史、池田学

奥の細道行脚の折柄、前年から行われていた平泉中尊寺に藤原氏四代の遺体木乃伊(ミイラ)の調査が色々と取り沙汰されていた。そこで自分も光堂を訪ねたのであったが、音楽で云へば幻想曲を聞きながらに其の画想を得たとでも云ふか…。

川端龍子 「展覧会ガイド」より

第5章 海の物語
《龍巻》(1933年)×西ノ宮佳代、草間彌生

四部構成の序曲として太平洋上でしばしば生起する自然現象、龍巻の壮観に取材したのです。画中に扱った生物の類は、サメ、アカエイ、タチノウオ、ムラサメモンガラ(カワハギの一種)、クラゲ等々です。

川端龍子 「展覧会ガイド」より

第6章 日々、物語はつづく〜見慣れた光景、大切なもの
あなたの物語は、あなたの大切なものとともに、ずっと続いていく。
小林孝宣、奈良美智、西ノ宮佳代、奈良美智、名和晃平、西村陽平、青山悟、草間彌生

番外編 アトリエの異世界
加藤泉、西村陽平、宮永愛子


私が死なねばならないとしても、きみは生きねばならない
私が死なねばならないとしても それが希望を伝えるものとなり ひとつの物語となるように

リフアト・アルアライール『物語ることの反撃 パレスチナ・ガザ作品集』河出書房新社

→ 絶望の淵にあっても、物語る力を手放してはならない。

感想

JR大森駅より歩く事、約20分。
平坦でわかりやすい道とはいえ、一般的には駅からバスがおすすめかも。

「龍子記念館」は、川端龍子自らが1963年に自宅の前に建てた美術館。
旧宅は現在「龍子公園」として、開館日に一日3回、ガイドがある。(ガイドの時以外は閉門)
どちらも龍が大好き・川端龍子のこだわりが、たっぷり詰まった設計。

龍子記念館(美術館)
当初は、大きな窓から入るたっぷりの自然光での鑑賞が想定されていた。
現在は作品保護のため、全て塞がれている。
このあたりは地盤が低いそうで、高床式。
中庭「龍子草苑」には、別荘・青々居のある修善寺の桂川から石を選び運んだ。
ススキなどが植えられているが、ちょうど刈り取られた後でスッキリ。

龍子公園内のアトリエは、通常入ることはできないが、なんと!
今展では事前予約でアトリエ内に入室し、展示されている作品を鑑賞することができる。
また、アトリエ内での読書体験(要事前予約・別途資料費200円←幅允孝氏による選書リスト)のイベントもある。
せっかくなので「公園案内」「アトリエ見学」「読書体験」全て参加してみた。
「読書体験」は 11:30~13:00、「アトリエ見学」は 13:30~14:00。
龍子記念館の中にも周辺にもランチできる所はないので、大森でブランチしてから参加。


「アトリエでの読書体験」

アトリエ内
本棚には幅允孝の選書が各章15〜20冊、計100冊ほどが並ぶ。
絵本・児童書、コミックもあり。
ここから好きな本を選び…
(背中に加藤泉作品の視線を感じながら)ソファに座り、お庭を眺めつつ、読書。
本から、ふと、目を上げた時の光景。

アトリエの窓ガラスは、一枚も割れず、当時のままとのこと。
古いガラス特有の歪みがある。(この時代に、こんな大きなガラス凄い)
鳥の鳴き声と、時々車の音、風で窓がガタガタ揺れる音がする他は、とても静か。
床と上部の磨りガラスに木漏れ日がチラチラ揺れて、川端龍子もこうして庭を眺めたのだろうかと思うと、感慨深い。
…が、しかし…寒い。
川端龍子は寒がりで暖房を入れていたそうなのだが、アトリエが国の有形文化財なためか、暖房が入れられないようで、足元からシンシン冷えてくる。
雨や雪の日も素敵だろうな、和歌山生まれの龍子はお庭にいっぱい梅を植えているから梅の季節もよいだろうな、と思うのだが、寒さに耐えられるか。
これから行く方は、防寒対策お忘れなく!

今回、私が選んだ本。
みなさん、どの本を選んだのだろう。

「アトリエ見学」と「龍子公園」
アトリエで一際目を引くのは、加藤泉《Untitled》。
日が暮れて、アトリエ内に照明が入った状態で外から見たら「異世界」感スゴイんじゃないかと思う。見てみたい。(開館時間的に無理)

加藤泉《Untitled》2020年
加藤泉《Untitled》(部分)
足元の石(?)にも顔(?)があって、じっと見てしまう。
あんまり目を合わせちゃいけない気がする。
宮永愛子《くぼみに眠る海 - 仔犬-》の写真
奥の小さい畳の部屋に、宮永愛子作品の展示。
鏡文字を読むもどかしさが好き。
日当たりの良い場所に龍子の机。電話はひとつは内線らしい。

アトリエも旧宅もお庭も、龍モチーフがいっぱいのこだわりの造り。
「爆弾散華の池」や持仏堂の伝 俵屋宗達《桜芥子図襖》のレプリカなど、見どころ満載。


龍子記念館「ファンタジーの力」

今展のチケットは川端龍子《龍巻》に描かれた生物、6種の栞風。
私はサメをチョイス。クラゲが一番人気らしい。

最も印象に残ったのは、チラシにも使われている第5章のコラボ。
蛸のお出迎えから、龍巻→海底の流れがピッタリで、この組み合わせを見つけたから今展を企画したのではと思ってしまうくらい。

左から
草間彌生《海底》1983《自転車と三輪車》1983
川端龍子《龍巻》1933
西ノ宮佳代《蝶恋花ー蛸》2011
中央の茶色い箱は本箱。
宮永愛子《letter》2013、《suitcase -key-》2013、《book -key-》2014
川端龍子の旅行鞄
第1章の鞄コラボも楽しい。

展示中で一番好きな龍子作品は《日々日食》。
表通りに建ったビルの裏側の住宅では、太陽は隙間から覗くだけで"日々日食"。

川端龍子《日々日食》1958

高橋龍太郎コレクションで特に心惹かれたのは、奈良美智と西ノ宮佳代の猫づくしと…

上:奈良美智《Pave Your Road -2》《夜の暗ネコ》
下:西ノ宮佳代《猫だるまー弐拾壱ノ姫・日月》《猫だるま-拾玖ノ姫・愛 》《猫だるま - 弐拾ノ姫・青薔 薇》
「猫だるま」の毛の感じとか、目がキラッとするところとか…
 「夜の暗ネコ」封筒なところとか、表情も足がいっぱいなのも…たまらん
西村陽平《辞書》1992
約1200度で焼成した辞書。
書かれていた文字は昇天し、ミイラになったように思えた。

さわひらきのビデオも好きだし、池田学《領域》、青山悟《夕暮れの新宿》も好きだなあ。
振り返ると、延々写真貼り付けてしまいそうなので、ここで止めておこう。
展示スペースは、けっして広くなく、展示数も60点ほどだが、公園・アトリエも含め、とても楽しかった。

ショップで絵葉書が50円(横長の大きいものでも100円)だったので、つい購入。
今回は企画展で入館料1000円だが、常設展は200円とリーズナブル。
違う季節に、また行ってみたい。






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