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[report]『異端の奇才 ビアズリー展』(三菱一号美術館)


開催情報

『異端の奇才 ビアズリー展』
場所:三菱一号美術館(東京都千代田区)
開催日:2025.2.15.sat-5.11.sun
入館料:2,300円(一般)

内容:英国の画家オーブリー・ビアズリーの初期から晩年までの作品、約220点を通じてビアズリーの芸術を展覧する。
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)から150点来日。

キャッチコピー:「25歳。時代を駆け抜けた。」

※ 第3章の展示室のみ撮影可
※ 紙の作品リストなし(公式サイトにPDFへリンクあり)
 自宅で印刷すると19ページ!しかも作品の途中で改行・改ページしている。
※ 再入場不可(建物の構造上、最終章後から最初に戻るのは難しい)

○ 単眼鏡お持ちの方は、持って行くといいかも。
 小さくて細かい作品が多いです。

【巡回予定】
2025.5.24-8.31 久留米市美術館(福岡県久留米市)
2025.11.1-2026.1.18 高知県立美術館(高知県高知市)

【同時開催】
小企画展『江戸から東京へ―浮世絵・近代版画にみる』
開催日:前期 2025.2.15.sat-4.6.sun
    後期 4.8.tue-5.11.sun
※ 小企画展のみの入場は不可

主な登場人物

  • エドワード・バーン=ジョーンズ(1833-1898)

  • ジェームズ・A・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)

  • ウィリアム・モリス(1834-1896)

  • オスカー・ワイルド(1854-1900)

  • メイベル・ビアズリー(1871-1916)
    オーブリーの姉。女優。

  • オーブリー・ビアズリー(1872-1898)


単語

  • 【アングロ=ジャパニーズ様式】1862年、第2回ロンドン万博で日本の品々が紹介されたことにより、当時のイギリス人の好みにあった英和折衷的な様式が生み出された。

  • 【唯美主義運動】感性に訴える表現を追求する。中心人物はオスカー・ワイルド。

  • 【ラインブロック】写真製版を利用した腐食銅版画の一種。安価で簡単だが、中間色が出せない。

  • 【ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館】ロンドン
    デザインを主題にした博物館。


関連書籍

  • 原田マハ『サロメ』文藝春秋
    ISBN : 
     9784167914868(文春文庫・文庫本)
     9784163905891(文藝春秋・ハードカバー)

章構成覚書

第1章  はじまり
オーブリー・ビアズリー(1872-1898)イギリス ブライトン
1879(7歳) 肺結核(生涯患う)
1889(17歳) 事務員として働くかたわら、独学で絵画を学ぶ。

初期の傑作《「ジークフリート」第2幕》、風刺画の小品
ビアズリーが生涯参照した A.マンテーニャの版画、幼少期に愛好した K.グリーナウェイの絵本を紹介。

第2章 初期ビアズリー
1891 E.バーン=ジョーンズの元、数ヶ月画家修行
1892 J.M.デントから『アーサー王の死』挿絵一式を依頼される。
1893(21歳) 画業に専念を決意

同期の書物や定期刊行物に発表された風刺画
ビアズリーが影響を受けた J.M.ホイッスラー、W.クレインの作品もあわせて展覧

第3章 成功ー「ビアズリーの時代」の到来
1893 芸術雑誌『ステューディオ』創刊号で大々的に取り上げられる。
ワイルドの英訳版『サロメ』の挿絵画家に抜擢。

『サロメ』挿絵に描かれたアングロ=ジャパニーズ様式の調度とともに「ビアズリーの時代」に思いを馳せる。

第4章 ワイルドの「サロメ」
1895(23歳) ワイルドが同性愛の科で逮捕され、ビアズリーも失業。

ワイルドが本来どのような「サロメ」像を求めていたのか。
20世紀の舞台芸術における「サロメ」の多様な姿を、舞踏を中心に参照する。

第5章 制作の裏側
ロンドン自邸の制作環境の一部を再現
生活費を稼ぐために手がけた「卑猥な絵」の優品を紹介

第6章 成熟に向けて
『髪盗み』『ヴォルポーネ』など洗練された装丁や挿絵
文芸雑誌『サヴォイ』に発表された作品

1898(25歳) 肺結核が悪化し他界


感想

初日はポスタープレゼントがあったためか、大盛況だったそう。
その後も平日でも混雑しているとの情報に恐る恐る足を運んだ。
確かに会期前半の平日とは思えない観客数。しかも老若男女幅広い。
基本的に写真撮影不可だが、第三章の部屋だけ撮影可。
しかし、ここは代表作・サロメの挿絵の展示室で、サロメ挿絵前は混雑で容易に近づけない。
先に見やすい展示を見て、二周目回ろうと思ったら、最後から冒頭へ戻るのは来た道を戻るしかなく、ウッカリショップに出てしまったら再入場不可だった。
…人垣の隙間から垣間見たので、全然見てないわけではないが、しくじった。

展示は時系列…と、言っても、ビアズリーは25歳で亡くなったので、亡くなるまでの約5年間に制作された作品。
サロメ挿絵の背景にも描かれた「アングロ=ジャパニーズ様式」の家具や、様々な画家の描いたサロメの絵の展示もある。

ビアズリーの初期の風刺画は初めて見た。
39.《ウォルター・クレインの政治的見解》とか揶揄してるけど愛も感じられて、非常に好き。プッと吹き出してしまいそうになる。

第三章で《ワーグナー崇拝者》の原画とライン・ブロックが並べられているのも面白かった!
(写真撮ったが、黒っぽいので写り込みが激しく使えない)
そもそもキャプションによく出てくる"ライン・ブロック"って何?と、調べたら印刷方法だった。(ネット検索かけると「LINE ブロック」がヒットして大変探しづらかった)
この技法、安価にできる代わりに中間色が出せないのだが、それを逆に効果的に仕上げているのに感嘆した。

第三章のサロメ以外の挿絵も楽しい。
ビアズリーの挿絵で、もう一度読んでみたくなる。

オーブリー・ビアズリー 《アシャー家の崩壊 ――『エドガー・アラン・ポー作品集』[刊行中止]の挿絵 》1894年頃 | ライン・ブロック | Kコレクション
…コシュキンのギター曲『アッシャー・ワルツ』は大好きだが、原作の良さは正直よくわからん。
でも、『アッシャー・ワルツ』とこの絵は合う気がする、
オーブリー・ビアズリー《黒猫 ――『エドガー・アラン・ポー作品集』[刊行中止]の挿絵》
1894年頃 | ライン・ブロック | Kコレクション
…こんなシーンあったっけ?
もっともビアズリーは原作にない絵をよく描く人だったらしい

最後の部屋の作品群の線の美しさも印象に残った。
212.《アリババ》盗賊の親玉のわがままボディのふっくらした線、好きだー(笑)

企画展最後のフォトスポット
オーブリー・ビアズリー《アレクサンダー・ポープ著 『髪盗み――英雄喜劇的な5篇の詩』の表紙》
…『髪盗み』の物語が、何を言わんとしているのか、いまひとつよくわからない。

しかしながら、展示作品で最も長く足を止めたのは、第四章に展示のモロー《サロメの舞踏》。
ユイスマンス『さかしま』好きなら必見。
ビアズリーも『さかしま』を愛読していたそうで納得。
ルービンシュタイン『サロメ』「7つのヴェールの踊り」の衣装デザインや踊るロイ・フラーを描いた絵など、サロメ関連展示が楽しい。
ロートレック《ロイ・フラー嬢》から、当時の舞台の様子が伝わってきて、見てみたかったなあ!と思う。

展示室があちこちビアズリー風にデコってあるのも楽しい。

オーブリー・ビアズリー《アヴェニュー劇場公演の宣伝ポスター》1894年 | リトグラフ(多色)
ヴィクトリア・アンド・アルバート博物館



ビアズリー展を抜けると、小企画展『江戸から東京へ―浮世絵・近代版画にみる』。
ビアズリー展が混んでいて酸欠気味だったので、ホッとしてしまった。

川瀬巴水《東京二十景 桔梗門》
昭和4年 木版画 渡邊庄三郎 三菱一号美術館蔵
…一服の清涼剤

でも、ビアズリー展と小企画展、もう少し関連付けてもいいのでは?
みなさん、ほぼほぼショップに直行しちゃうんですが…




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