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[report]『皇室のみやびー受け継ぐ美ー第4期:三の丸尚蔵館の名品』(皇居三の丸尚蔵館)

※ タイトル絵 高階隆兼《春日権現験記絵》(部分)皇居三の丸尚蔵館


開催情報

『皇室のみやびー受け継ぐ美ー第4期:三の丸尚蔵館の名品』
場所:皇居三の丸尚蔵館(東京都千代田区)
開催日:2024.5.21.tue-6.23.sun
    一部展示替え・頁替えあり 5.21-6.2 / 6.4-6.23
入館料:1000円(一般)
    ※オンラインによる日時指定制
    ※高校生以下及び満18 歳未満、満70 歳以上は無料。

内容:「皇室のみやび」をテーマに、皇居三の丸尚蔵館を代表する多種多彩な収蔵品を4期に分けて展示。(プレスリリースより)

※入門にあたり手荷物検査あり

単語

  • 【和漢朗詠集】平安時代に藤原公任ふじわらのきんとうが日本・中国の漢詩、和歌の名句を選び、まとめたもの(展示室内 解説映像より)

  • 粘葉本でっちょうぼん】2つ折りした料紙(装飾した紙)の折り目側をのりで綴じる仕立て(展示室内 解説映像より)

展示資料覚書

  • 粘葉本でっちょうぼん和漢朗詠集》

※書き下し文は川口久雄『和漢朗詠集 全訳注』による
十八公栄霜後露 一千年色雪中深  順
十八公しうはっこうえいしものちあらはれ 一千年いっせんねんいろゆきうちふかし)

含雨嶺松天更霽 焼秋林葉火還寒 江
あめふく嶺松れいしょうてんさられたり あきやく林葉りんえふかへつてさむし)

ときはなる まつのみとりも はるくれ
は いまひとしほの いろまさりけり  源宗于むねゆき

われみても ひさしくなりぬ すみよし
の きしのひめまつ いくよへぬらむ

展示室内 キャプションより

和歌 Japanese poem on "pine"

あまくだる あらひとがみの おひあひ
を おもへばひさし すみよしの松 安法々師

漢詩 Chinese poem on "bamboo"

煙葉蒙籠侵夜色 風枝蕭颯欲秋声  白
煙葉蒙籠えんようもうろうとして夜を侵す色 風枝蕭颯ふうししょうさつとして秋になんなむとする声)

阮籍嘯場人歩月 子猷看處鳥栖煙  章孝標
阮籍げんせきうそぶにわには人月に歩む 子猷しゆうが看る処には鳥煙とりけむりむ  章孝標)
※訓読は川口久雄『和漢朗詠集 全訳注』を参考

展示室内 解説映像より
  • 《春日権現験記絵 巻一》

春日権現験記絵かすがごんげんげんきえ 巻一 第二段 竹林殿事ちくりんでんのこと(1)

大和国平群郡夜摩郷に 一の霊地あり
竹林殿と号す
春日大明神御影向の所也
むかし右馬允藤原光弘 広瀬郡吉南殿といふ所にすみけり
大和河の北の辺をみれは よなよなひかる所あり
貴女この所におはして 子孫繁昌すへき所なり との給
いかなる人 いつれの所より来給にか と 光弘申けれは
  我屋戸はみやこのみなみしかのすむ
    みかさの山のうきくものみや
かくおほせられて見給はす
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むかし広瀬郡吉南殿というところに、藤原光弘が住んでいた。
大和河の北の方が夜な夜な光っていたので行ってみると、高貴な女性がいらして、
「ここは子孫が富み栄える所である」
と告げた。光弘が、どこから来たのか尋ねると、その女性は、
「我が屋戸(宿)は、都の南、鹿がすむ、三笠の山の浮き雲の宮」
と答えて姿を消した。

展示室内 キャプションより

春日権現験記絵かすがごんげんげんきえ 巻一 第三段 竹林殿事ちくりんでんのこと(3)
光弘夢想によりて 天暦二年二月廿五日 はしめて土木をかまへて
村上天皇に奏聞して 同年六月十六日より 此ところにすむ
其後 正暦三年のころ 藤原吉兼か夢に 家の西南の竹林のうへに 貴女飛来ての給やう
我は 汝か氏春日大明神也
家たかく竹しけくして 竹林園に似たるゆへに この所に来宿
もし竹しけくさかりならは 汝か子孫繁昌すへし
と被仰と見けり
やかて社をたて 神をあかめたてまつりてなかく神竹をきるへからさるよし
起請をかきけり
いまに脩竹いよゝかにして 梁園にことならすとなむ
--------------------------------------------------------
 藤原光弘は、天暦二年(九四八)に、お告げを受けた地に住居を構えた。
 正暦三年(九九二)頃、光弘の子孫の吉兼は、家の竹林の上に高貴な女性が飛来し、
「我は汝の氏、春日大明神である。
 もしこの竹が繁り続けるならば、
 汝の子孫も富み栄えるだろう」
と告げる夢を見た。吉兼は社を建て、この竹林の竹を神竹とし、決して切らないことを誓った。

展示室内 キャプションより

関連書籍

  • 『和漢朗詠集』川口久雄 講談社学術文庫
    ISBN : 9784061583252

感想

去年、第1期に行き、満員電車級の混雑その他諸々にグッタリ、感想を聞かれても愚痴しか出ない状態で2期3期に行く気を無くしていたが、4期のラインナップの豪華さに負けた。
覚悟して入場したが…あれ?もしかして、1期より定員減らした?
それなりの混雑ですが、1期より全然良い。


《春日権現験記絵 巻一》
"
Volume 1 of Illustrated Miracles of the Kasuga Deity"

春日権現験記絵かすがごんげんげんきえ》が想定外に楽しかった!
第1期で(鹿さんいっぱい)巻十二を観たはずが、あまり記憶に残っておらず…
今回見た巻一は、建設現場の人々が生き生きとして、700年前のものとは思えないほど色も鮮やか。
一人ひとり単眼鏡でのぞいていくと、声が聞こえてきそう。

藤原氏の氏神を祀る奈良・春日大社の創建と霊験を語る絵巻です。緻密な描写が特徴で、巻一第三段の建設現場では水平を確かめる水盛みずもり、礎石を固める地搗棒じつきぼう、材木に目印を入れる墨縄すみなわなど、当時の技術が仔細に描かれています。人々の生活を活写した中世絵巻の傑作です。

展示室内 キャプションより
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
…細い穴に通そうとしているのかな?
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
…左の人、頑張れ!
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
…奥は食事中。何食べてるのかな〜と単眼鏡でガン見
ご飯よそってもらおうとしてる人の顔が無くなってしまったのが残念!
でも、きっと笑顔かな
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
手前で子どもが遊んでいる?
高階隆兼《春日権現験記絵 巻一》(部分)皇居三の丸尚蔵館
…寝落ち?

入り口近くなので、入場時間の00分と30分過ぎは混んでいます。
20分か50分頃見に行くと良いかも。
それでも、それなりに人はいるので長時間は立ちどまれず、何度か回遊。


粘葉本でっちょうぼん和漢朗詠集》
"Collection of Japanese and Chinese Poem to Sing(Detcho Version)"

美しいとは思うものの、相変わらずなんて書いてあるのか、ほぼ読めません。
いつの日にか、ムスカ大佐のように「…読める、読めるぞ!」と言ってみたいものです。(勉強しなきゃね)
どちらの料紙も美しいですが、特に亀の料紙(写真右)が可愛らしい。
展示室内でこの作品の解説動画が流れています。

伝 藤原行成《粘葉本でっちょうぼん和漢朗詠集》(部分)皇居三の丸尚蔵館
頁替えあり。こちらは6月2日まで。

動植綵絵どうしょくさいえ
"Colorful Realm of Living Beings"

伊藤若冲《動植綵絵》からは4点。

伊藤若冲《動植綵絵 老松孔雀図》(部分)皇居三の丸尚蔵館
"Old Pine Tree and Peacock"
どこを切り取って拡大しても見応えある
明るい緑の葉脈が好きです
この上に繊細なレース編みのような白い孔雀、ゴージャス!
伊藤若冲《動植綵絵 諸魚図》(部分)皇居三の丸尚蔵館
"Fish and Octopus"
ちっちゃいタコがくっついていて可愛い
上に描かれている魚の目は、厚塗りで少し立体的。
見上げた時に目が合うように?

狩野永徳・狩野常信《唐獅子図屏風》
"Chinese Lions"
以前、東京藝術大学『日本美術をひも解く』で見た時は、展示位置が高く獅子の威圧感を感じたが、今回は目線がほぼ同じで獅子が可愛らしくも感じた。

高島屋呉服店《閑庭鳴鶴かんていめいかく九重ノ庭之図刺繍屏風ここのえのにわのずししゅうびょうぶ
"Cranes in a Quiet Garden and Imperial Garden"
公式サイトのキャッチコピーは「大礼を祝す 光り輝く刺繍の美」
絹糸が光り輝き、角度が変わると煌めいて美しい。

高島屋呉服店《閑庭鳴鶴かんていめいかく九重ノ庭之図刺繍屏風ここのえのにわのずししゅうびょうぶ》(部分)皇居三の丸尚蔵館

日本の作品を英訳すると、あまりにイメージが違ってびっくりすることがあります。
「伊豆の踊子」→「Izu Dancer」とか…そうなんだけど、なんか違うというか…
同時に、外国人になって違う視点で見ているような不思議な感覚になります。
今回の展示、英語タイトルが目立つので(出品リストも日本語と英語の両面だし)、英語だとそうなるのかーと新鮮でした。

皇居東御苑

※月・金 休園(天皇誕生日以外の「国民の祝日等の休日」は公開)

絵画世界に入り込んだようで、楽しい。

竹林(撮影は2023年秋)
二の丸池のヒレナガニシキゴイ
上皇陛下の御発案により、インドネシアのヒレナガゴイと日本のニシキゴイを交配して生まれた

次回予告(皇居三の丸尚蔵館)

2024.7.9.tue-9.1.sun
伊藤若冲《動植綵絵 池辺群虫図》出ます。(8.6-9.1)
他にも魅力的な出品…うーん…


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