[report]『国宝・燕子花図屏風 デザインの日本美術』根津美術館
開催情報
『国宝・燕子花図屏風デザインの日本美術』
場所:根津美術館(東京都港区)
開催日:2024.4.13.sat-5.12.sun
入館料:1500円(一般)オンライン日時指定予約
1600円(一般)当日券
※5.8.wed-12.sun 夜間開館 夜7時まで開館
内容:「燕子花図屏風」を中心にすえ、近世の作品をとりあげながら、デザインの観点から日本の美術をみつめる。
同時開催
【ホール・展示室3・地階】仏教美術の魅力 ─日本の小金銅仏と仏具─
【展示室4】古代中国の青銅器 Ancient Chinese Bronzes
【展示室5】地球の裏側からこんにちは! ─根津美術館のアンデス染織─
【展示室6】初風炉の茶 Tea Gathering as the Brazier Season Begins
【特別ケース】宝飾時計 Decorated Clock
※展示室内は写真撮影不可
※庭園のカキツバタは、多分GW頃に見頃
主な登場人物
凡河内躬恒(859?-925?)
歌人。官人。三十六歌仙の一人。『古今和歌集』の撰者。野々村仁清(?)江戸時代前期(1603-1850)
陶工。尾形光琳(1658-1716)
絵師。尾形乾山(1663-1743)
陶工。絵師。尾形光琳の弟。立林何帠(?)
絵師。尾形寒山の弟子。光琳の画風を継承。柴田是真(1807-1891)
絵師。根津嘉一郎(1860~1940)
実業家。東武鉄道社長。日本・東洋の古美術を蒐集。茶の湯もいそしんだ。根津嘉一郎(二代目)(根津藤太郎)(1913-2002)
東武鉄道社長。財団を創立し、根津美術館を開館。根津公一(1950-)
実業家。根津美術館現館長。野口剛(1966-)
根津美術館 学芸部長
単語
【古今和歌集】醍醐天皇の詔により撰ばれた最初の勅撰和歌集。
【玉葉和歌集】第14番目の勅撰集。正和元年、伏見院の命を受けた藤原為兼の撰,総歌数2800
【勅撰集】天皇または上皇・法皇の命により編纂された公的な和歌集。
【伊年印】俵屋宗達が主宰した工房作を示す商標印
【首級】討ち取った敵の首
【初風炉】立夏を過ぎ、茶室で初めて風炉を用いること。夏向け茶道具の取り合わせの始まり。
章構成覚書
和歌と物語のデザイン
絵の中にいかにして和歌を取り込むか
(1)伝 藤原公任筆《尾形切(業平集断簡)》
雲母+銀泥
(2)本阿弥光悦筆《和歌色紙》
緑+金泥 波と枝垂れ柳
凡河内躬恒「心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花」
(4)板谷広長筆《伊勢物語図》
4段「西の対」
51段「人の前栽に菊」
色紙形=絵に和歌を書くためのデザインツール
(6)《吉野龍田図屏風》
「古今和歌集」「玉葉和歌集」から奈良 吉野・龍田の桜と紅葉の名所を詠んだ和歌
短冊=和歌を書くためのフォーマット→和歌を絵の中にデザイン
(9)《邸内遊楽図・ 三十六歌仙和歌短冊貼交屏風》
右:若衆茶屋
左:藍と紫に染めた繊維を漉き込んだ料紙。草花模様の屏風と襖
《燕子花図屏風》と宗達工房の草花を描いた絵との比較
《燕子花図屏風》は単なる草花図ではない 象徴的な構図
古典に対する知識→鑑賞者が《燕子花図屏風》から文学的なイメージを読み取る
(11)伊年印《桜芥子図襖》
川端龍子が妻子の菩提を弔うために作った持仏堂と仏間の仕切りに使用
(12)尾形光琳筆《燕子花図屏風》
『伊勢物語』在原業平 東下り かきつばたの名所
からころも
きつつなれにし
つましあれば
はるばるきぬる
たびをしぞおもふ
(15)伝 立林何帠筆《木蓮棕櫚芭蕉図屏風》
たらしこみ工芸の中の絵、絵の中の工芸
(32)《誰が袖図屏風》
右:女物の小袖→太夫
左:子供、男物→禿、客
遊里の光景
『地球の裏側からこんにちは! ─根津美術館のアンデス染織─』
初代 根津喜一郎が昭和初期に購入
【パラカス文化】(紀元前6世紀〜紀元頃)
砂漠→保存状態が良い
【ワリ文化】(8-10世紀)
ナスカの影響
専門の職人→歪みない綴織
チャカーナ(アンデスの十字架)
4つの頂点=方位、暦、現在・未来・過去・永遠
【チム・チャンカイ・イカ文化】(10-15世紀)
チム:北海岸・専制的国家体制
ワリ:南海岸→イカ
チムとイカに挟まれたチャンカイ
【インカ帝国】(1438-1532)
アンデス文明最後の先住民国家
染織品製作専門機関 全国から選抜された女性=アクリャ
関連サイト
↓美術展ナビ レビュー(読売新聞デジタルコンテンツ部美術展ナビ編集班・彩、岡本公樹)
↓アイエム レビュー
↓美術展ナビ X 根津美術館 学芸部長 野口剛さんが語る見どころ
感想
毎年恒例、根津美術館の燕子花図屏風です。
混んでそうなので行ったことがなかったのですが、今年は頑張って行ってきました。
…木島櫻谷(泉屋博古館東京)、川端龍子(山種美術館)と合わせて燕子花図屏風3comboしたかった…
まあまあ混んでいましたが鑑賞できないほどではなく、空いているところを見ながら周回する作戦でいきます。
燕子花図屏風の前の大きいソファで随時 HP を回復。(体力ないんですヨボヨボ)
今年のテーマは「デザインの日本美術」。キャプションに「デザインツール」や「フォーマット」など、日本美術展ではあまり聞かないフレーズが目を惹きます。
根津美術館は外国人観光客多いので、それを意識しているのかな?
冒頭は和歌をいかにして絵に取り込むか、というコーナー。
こういうのを見るたび、自分の古典知識のなさを痛感。
美しい料紙を見ているだけでも楽しいですが、文字も読めて分かったらもっと楽しいんだろうなあ。
古典を勉強したいと思いつつ思いつつ…
6.《吉野龍田図屏風》は、圧がすごい。
桜と紅葉と短冊がギュウギュウ。
昭和の満員電車を彷彿とさせます。
9.《邸内遊楽図・ 三十六歌仙和歌短冊貼交屏風》若衆×和歌集?!
「若衆茶屋」を描いたものだそうですが、単眼鏡で「何やってんの?」と見ていると、覗きをしているような後ろめたい気持ちになってきます。
右下の籠の中でぐったりしてる人足が気になる。
疲れちゃったのかな?
12.《燕子花図屏風》の部屋。
真ん中の大きなソファーが、ありがたい!
「大吉原展」の時、思ったのですが、墨と金と白と赤と緑がメインの絵が並んでいる中に、鮮やかな青があるとハッと目を惹きます。
この"青"、他の作品で見たことない気がするけど、なんだろう?と、ネット検索したら「アズライト」と「マラカイト」らしい。
この青の厚い重ね塗り…背景は全部金箔って、小心者で小市民のワタクシ、ガクガクしてきました。
この青い燕子花はとても美しいけど、手が届かない天上の花に見えてきた。(実際、そうなんですが)
15.《木蓮棕櫚芭蕉図屏風》
とても好き。
遠目で見るとベージュで地味ですが、近づくと「たらし込み」し放題なところが、「うわー、"たらし込み"楽しいっスね!」って声が聞こえてきそう。←勝手なイメージ
目線が、屋根の上から少し見下ろしているようで開放感があるところ、シュロのちょっぴり南国風な雰囲気、シュロの花の粒々をめっちゃ描き込んでいるところ、諸々、好みです。
隣の部屋は工芸がメイン。
ラストは32.《誰が袖図屏風》。
人物不在の部屋、掛けられた着物、書物などの小物…登場人物やドラマを妄想してしまいます。
特別展は以上。
ホール・展示室3・地階は「仏教芸術の魅力」
2階に上がります。
2階【展示室4】古代中国の青銅器
根津美術館は饕餮のコレクションも素晴らしく、饕餮好きにはたまりません。
今回は展示室中央に《饕餮文方盉》トリオが象がパオーンと鼻を掲げるように向かい合っています。
《饕餮文方盉》!!!かっこいい!!!
トリオにそれぞれついている文様が異なるところも楽しいです。
…これ、"ゾナウギア"みたいですよね。3つを正しい位置に置くと「ちゃららら ちゃらららん♪」て音がしそう。
2階【展示室5】地球の裏側からこんにちは! ─根津美術館のアンデス染織─
初めて見ました。
遠山記念館蔵にもコレクションがあるということは、結構みなさんコレクションしてたんでしょうか?
これ、図録欲しい!
グッズでワッペンとかあったら、多分買います。
ネコ?はネコというより、多分ピューマ的な?
顎と頭から出ているコンセントみたいなのは何でしょ?
《蝶文様》が"蝶"というより人に見えて…アンデスの蝶って大きそう…
16.《綴織裂 鳥幾何文様》がアンノーン(ポケモン)みたいで可愛い。
【展示室6】はお茶。
残念なことに、私はお茶の知識はほぼ皆無でよくわかりません。
ハマったら沼とは聞きますが。
お庭編
《燕子花図屏風》とお庭のカキツバタを一緒に鑑賞できるのが謳い文句ですが、見頃はGW頃になりそう。
ここのお庭は、いろんな置物があって楽しい。