[report]『日本画ができるまで』(鏑木清方記念美術館)
開催情報
『日本画ができるまでー鏑木清方の制作風景ー』
場所:鎌倉市鏑木清方記念美術館(神奈川県鎌倉市)
開催日:2024.8.31.sat-10.22.tue
入館料:300円(一般)
内容:鏑木清方作品の本画と下絵を合わせて紹介し、清方の創作過程を辿りつつ、素材の美を含めた日本画の魅力を味わう
※ 館内撮影可のスペース以外は撮影不可。
主な登場人物
水野年方(1866-1908)
鏑木清方の師。鏑木清方(1878-1972)
日本画家。13歳で水野年方に弟子入り。木村荘八(1893-1958)
鏑木清方の弟子。岩田専太郎(1901-1978)
感想
鏑木清方の本画と下絵を並べて展示した美術展。
《桜もみぢ》、《朝夕安居》、徳川慶喜を描いた《慶喜恭順》などが、下絵と共に鑑賞できる。
通常、美術展ではあまり見ることのない下絵がたくさん見られるのが楽しい。
今展のメインはチラシのメインも飾る《桜もみぢ》だろう。
秋晴れの日に山路へ遠出した商家の姉妹を描いた作品。
左が姉、籠に乗っているのが妹。(チラシは左隻なので姉しか見えない)
本画、下絵、小下絵、桜と蔦の紅葉のスケッチが展示されている。
小下絵には姉妹の後ろに小さく山が描かれていているが、下絵からはなくなっている。見比べると面白い。
↓紅葉のスケッチは、こんな感じ。(たぶんこの左の絵)
葉っぱだけでも美しくてため息が出る。
砂糖を精製したようにスッキリと選ばれた線の本画も美しいけれど、かちわり黒糖のようなスケッチの味わいも好きだ。
《桜もみぢ》の姉は、下絵も美しい。
徳川慶喜を描いた《慶喜恭順》は初めて観た。
清方は一度、60代半ばの徳川慶喜に接したことがあり、その時の印象から30歳若くしたイメージで《慶喜恭順》を描いたそう。
徳川慶喜の表情は、下絵の方が好きだ。
鏑木清方記念美術館は、作品の紹介だけでなく、鏑木清方その人について知ることができるのが、良いなあと思う。
清方が13歳で水野年方に弟子入りした頃、水野が人物スケッチの見本に描いた清方像のスケッチが展示されていて、隣にその絵を元に清方が描いた自画像があった。
入門した頃に描いた模写、朝顔のスケッチ、16歳の時の作品なども展示されていて、若き日の鏑木少年に想いを馳せる。
清方が牛込矢来町 夜蕾亭に住んでいた頃、木村宗八、岩田専太郎に、髪の生え際のぼかし方を指導している写真もある。
小説や雑誌の挿絵を多く手がけていたことも知らなかった。
尾崎紅葉「金色夜叉」や泉鏡花「風流線」、谷崎潤一郎「少年」の挿絵もあり驚いた。
図書コーナーには、少年少女向け雑誌に描いた挿絵を集めた図録があり、洋風の絵もあったりして面白い。
つい読み耽って、長居してしまった。
余談:8月31日は清方の誕生日
8月31日は清方の誕生日!
今年は 8/31〜9/6 の期間中、先着10名に図録プレゼントとの事で、頑張って行ってきました。
…ここ、9時オープンなんですよね。
普段より早起きし、通勤通学のみなさんに紛れて電車に揺られ、これで11人目だったら泣くな…と思いましたが、無事、プレゼントいただきました。
ありがとうございました!