上高地の魅力①
以前から、上高地を離れるときには独特の寂しさを感じていました。
取り返しのつかないような、時間の区切りを告げられるような。
上高地自体に、滅びと再生を表現した魅力があることを知っていました。
最近はそれとは違う視点で見ることが出来るようになった気がしています。
明神池の前に明治時代の猟師、上条嘉門次の小屋があります。
家族を里の明ヶ平に残し、山で暮らしているライフスタイルに、これまでの自分自身の暮らしと共通するところがあります。
今、私が感じている上高地の魅力には、嘉門次の暮らしの中にあった自然観と近いものがあるように思えてなりません。
様々な地域を旅して、私にとって心が休まる地域というのは決まって、おそらくいい水がある場所です。
湧き水が美味しい地域は、それだけで豊かな恵みを感じます。
実用的というだけでなく、生命のメタファーとして、生きていく上での安心感を与えてくれるようです。
特別名勝地で特別天然記念物である今の上高地は、生えているものを採取することは出来ませんが、植物、魚、動物、様々な生き物が共生している場所です。
炉端で火を焚き、岩魚を焼きながら美味しい水に酔いしれる。
そんな姿を思い浮かべるとき、たとえ社会的な存在価値の是非や価値観の相違があったとしてとも、やはり奥行きの深い本質的な豊かさがあるような気がします。
また、上高地を訪れ、また上高地の魅力を誰かに伝えていくと思います。
生命が懐かしく喜ぶ場所であることが、私にとっての上高地なのだと思います。