サン・ジョルディの日
今日は、本好きにはちょっとした記念日かもしれません。
4月23日は、「サン・ジョルディの日」。
スペインのカタルーニャ地方に伝わる伝統の記念日です。
互いに薔薇の花と本を贈りあい、愛を確かめ合う日とされています。
1、サン・ジョルディとは何者?
スペインのカタルーニャ自治州に伝わる守護聖人ゲオルギオス
のことです。(ジョルディはゲオルギオスのカタロニア語読み)
イングランドやグルジア、モスクワの守護聖人であり、イギリスの「セント・ジョージ」も同一人物を指しています。
彼の生涯については(実在したかも含め)諸説ありますが、代表的な説は
・3世紀後半、パレスチナのリュッダ生まれ
・ギリシャ系貴族のキリスト教徒の家庭に育った
というもの。
そして彼は、ローマ皇帝ディオクレティアヌス帝(在位:284年~305年)
による、キリスト教徒に対する「最後の大迫害」の時代に捕らえられ、棄教と改宗を迫られましたが拒絶。斬首され殉教したと伝わります。
2、伝説のドラゴンスレイヤー
そして彼の残した最も大きな伝説は、「竜殺し(ドラゴンスレイヤー)」です。
カッパドキアの都ラシア付近に、悪しき竜が住んでいました。
人々は、毎日2匹ずつの羊を生け贄にすることで、何とかその災厄から逃れていました。
しかし、羊を全て捧げてしまった人々は、人間を生け贄として差し出すことになってしまいます。そして、生け贄を選ぶくじに当たったのは王の娘でした。
絶体絶命の危機、そこに白馬に跨る若い騎士が通りかかりました。彼こそゲオルギオスです。
彼は竜の話を聞き、颯爽と竜退治に赴きます。
そして何と、竜の口に槍を突き刺し、生け捕りにして都まで引きずってきたのです。
よく見ると、彼に関する絵の場面
はまさに竜を倒した瞬間ですね。竜は意外に小さい…??
個人的には、こういう感じのを想像してました(笑)
さて、生け捕りになった竜を見て騒然とする人々に、彼は「キリスト教徒になると約束するなら、この竜を殺してあげましょう」と提案します。
人々はそれを受け入れ、騎士は竜を殺しました。
溢れ出した竜の血は真っ赤な薔薇に変化し、彼はその薔薇を王女に贈ったと言われています。
これが、薔薇を贈る習慣の起源ですね。
3、カタルーニャの誇りと本
ところで、「サン・ジョルディの日」に「本を贈りあう」習慣が根付いたのは何故でしょうか。
それは、1939年~1975年、カタルーニャの人々に訪れた苦難に関連しています。
14世紀、カタルーニャの人々は地中海の覇者として栄華を誇りました。
しかし、大航海時代になり、地中海の重要性が薄れたこと、そして地中海の覇権もオスマン帝国に奪われたことにより、カタルーニャは衰退していきます。
その後のカタルーニャはスペインの支配下となり、被支配者として苦難の歴史を歩み始めます。
特に、20世紀、スペイン軍事政権、さらにフランコ政権下で、カタロニア語使用や民俗舞踊サルダーナの禁止など、民族として存亡の危機を迎えます。
この状況下でカタルーニャの人々は、互いにカタロニア語の本を贈りあい、民族の団結を忘れず、その存続のために戦い続けました。
サン・ジョルディの命日4月23日がスペインの文豪セルバンテスの命日と同じだったこと、そして自分たちの戦う姿が守護聖人サン・ジョルディと重なるものがあったのでしょう。
いつしか、この本を贈りあう習慣も「サン・ジョルディの日」に取り入れられ、「薔薇と本を贈りあう日」、となったのです。
ちなみに、1995年、サン・ジョルディの日はユネスコによって「世界本の日」とされています。
日本でもこの日を2001年から、「子ども読書の日」と定めました。
というわけで、今日は本を贈りあう日…なのだそうです。
気になる方に薔薇と本を贈ってみてはいかがでしょうか?
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