アメリカ合衆国、枯れる地下水
少し古い記事になりますが、Forbesの10月5日の記事にこのような話が。
アメリカのカリフォルニア州はアメリカ西海岸にあり、人口は50州の中でも最大で、4,000万人に達します。
有名な都市としてはロサンゼルス、サンフランシスコ、サンディエゴ、そしてシリコンバレーの都市として名高いサンノゼなど、錚々たる名が連なっています。
セントラル・バレーとは
そして、中央部には、東をシエラネバダ山脈、西を海岸山脈、さらに北はカスケード、南もテハチャピ山脈に挟まれた「セントラル・バレー」があります。
つまり、巨大な盆地状の地形。
東西幅こそ100㎞に及びませんが、南北幅は700㎞に達する広大な平野で、アメリカ合衆国でも最も優れた農業地域(生産性が高い)ことで知られています。
セントラル・バレーはかつては海、その後は巨大な湖を含む湿地帯だった時期もありますが、現在は半乾燥地帯。
また、サクラメント川、サンホアキン川などの河川が流れており、半乾燥地帯+河川という農業に非常に向く組み合わせになっています。
しかし、この巨大な農業地域は、その生産性の高さ故に常に環境問題と隣り合わせでした。
セントラル・バレーの農業問題
同地の農業問題は、肥料や農薬の使用による土壌や地下水大気の汚染。
アメリカ合衆国の農業は、「資本集約型」という言葉で分類できる特徴があります。
農業形態としてはやや粗放的ですが、大資本による農薬や化学肥料、そして農業機械の利用や適地適作、大規模化など、徹底した合理化により世界屈指の農業生産力を維持しています。
しかし、環境負荷が大きい農業とも言え、同国の農業は度々環境問題のテーマとして取り上げられます。
ちなみに、セントラル・バレーについては、先述の通り盆地状の地形になっており、汚染物質が大気中に放出されると長期にわたって滞留し続けます。
これは、自動車の排気ガスなどについても同様で、人口が増加するにつれてこれらの汚染は深刻さを増しています。
さらに、同地での農業や生活用水の需要が急増したことにより、河川による灌漑では足りず、地下水のくみ上げも盛んに行われてきました。
同地の地下水層はかなり巨大で、アメリカ合衆国内では、オガララ帯水層に次ぐくみ上げ量を誇ってきました。
下の図はオガララ帯水層の分布図。とてつもない大きさです。
しかし、過去50年に渡りくみ上げ量が急増した結果、遂に枯渇する井戸が出始めたのです。
実は記事中にある2040年代の枯渇というのはやや楽観的で、2030年代に枯渇してしまうという推計も存在します。
ちなみに世界最大の地下水層であるオガララ帯水層も、2050年代には枯渇すると懸念されています。
ここに、異常気象による乾燥、さらに山火事の頻発など、まさに踏んだり蹴ったりの状況にあるのが現在のセントラル・バレーと言えます。
世界屈指の農業地域であるセントラル・バレー、この地域の危機は、世界の食糧事情にも影響を及ぼしかねません。
今後の動向に注目です。