見出し画像

仮想通貨(暗号資産)のマルチ商法

今朝の朝日新聞に

こんなニュースが出ていました。

今、若者の間で仮想通貨に関するマルチ商法で損害を受けた、という相談が急増しているとのこと。
この手の詐欺の話はなくならないなぁ…と感じましたので、今日はいつもとガラッとテイストを変えて、このニュースについて注意喚起を含めて書いてみたいと思います。

1、そもそも仮想通貨とは

仮想通貨は、本質的な特徴は

①暗号化されている
②特定の国家による価値の裏付けがされていない

というものです。
これらの特徴を担保しているのが、「ブロックチェーン」と呼ばれる技術。
分散型台帳技術や、分散型ネットワークとも言われますが、つまり

世界中のコンピューターに、送金や取引に関するデータが分散されて保存されるため、一部を改ざんしたり消去することは実質的に不可能

です。
そういった意味では、(51%攻撃など、欠陥がないわけではありませんが)ネットワークそのものの安全性は高いと言えるでしょう。
この技術を応用して様々な業務をネットワーク化したり、可視化しよう(捏造や改ざんを防ぐ)という試みもされています。

また、②の特徴から、
「特定の国家や組織、あるいは個人によって支配されない」
とも言われますが、実際のところ仮想通貨の多くは、発行者、或いは最初期からの大量保有者(通称「クジラ」といいます)が保有しているため、その辺りは正直なところ微妙ではないか…と思っています。

ちなみに、度々報道されているハッキングは、仮想通貨のネットワークそのものの弱さではなく、ハッキングされる側の仮想通貨の保管の甘さが原因です。

仮想通貨のセキュリティは、「暗号鍵」と呼ばれるもので守られています。
暗号鍵には「公開鍵(=これを持つ者はネットワークの参照はできるが、送金などの操作はできない)」「秘密鍵(=これを持つと、参照や送金などあらゆる操作ができる)」の2種類があり、秘密鍵は通常、決して公開されることはありません。
仮想通貨のハッキングでは、この秘密鍵を何らかの方法で盗み出しているケースが多いようです(2018年のコインチェックのハッキングはそれです)。

あるいは、SNSと同じ「なりすまし」で、仮想通貨取引所などへのログインIDやパスワードを盗み出すケースもあります(パスワードをあちこちで使いまわして利用しているユーザーの被害が多い)。

また、2017年以降に仮想通貨が注目を集めたのは、ひとえにその価格上昇によるものでしょう。
例えば、仮想通貨を代表するBTC(ビットコイン)は、コインチェックがサービスを開始した2014年9月19日の価格は¥42710でした。
今が110万円くらいですから、実に30倍。
もっと遡れば、2010年5月22日の価格は¥0.2でした。220万倍。もはや想像がつかないですね。

BTCに限らず、様々な銘柄の仮想通貨が異常な高騰を見せたことで、資産1億円を超えたという、いわゆる「億り人」が多数生まれました。
当時のメディア取材にも多くの「億り人」が応じていました。

そのニュース、あるいは取引所が放映したCM

を目にした人々がさらに仮想通貨取引に参入したのが、2017年末から2018年初頭にかけてのことです。

しかし、2018年1月以降、仮想通貨の価格は大暴落。
さらに、ICO(Initial coin offering)の流行で損失を拡大した多くの個人投資家が、市場から去って行ったのが2018年です。

2、マルチ商法の流行

日本で、今回の記事になったようなマルチ商法が流行し始めたのは、2018年頃からです。
これらのマルチ商法で勧誘されるケースは、大別して3種類に分かれます。

①ICO案件への投資
②HYIP案件への投資
③ウォレット案件への投資

①については既に2017年頃から行われていましたが、案件が急増したのは2018年に入ってからです。

ICO(Initial coin offering)とは
特定の企業や個人が、事業計画や資金使途を示した上で、それに賛同・共感する投資家から資金調達を行う仕組み。
株やファンド出資と目的は同じだが、多くの場合、資金の払い込みは仮想通貨で行われ、また、出資者には事業者が発行したトークン(仮想通貨)が配布される。
事業者は簡易・迅速な手続きで資金調達ができるメリットがあり、出資者は、事業が成功すれば配布されたトークン価格が高騰する可能性がある。

事業が成功すれば巨額のリターンが得られるため、多くの個人投資家がICOに出資しました。
その額は2兆円を超えると言われてます。
しかし、その9割がたは詐欺だった(そもそも事業計画自体が架空)と言われており、詐欺ではなかったが失敗した事業も多く、ICOで資金調達をして現在も活動を続けている事業者は少ないのが実情です。

表立ってマルチ商法と言えるような仕組みではありませんが、インフルエンサーと呼ばれるSNS等で影響力を持つ人々が、事業者から報酬を受け取り宣伝をしていたと言われています。


②は、2018年後半くらいから多く見られるようになりました。
HYIPとは「High Yield Investment Program」の略。
和訳すると「高収益投資プログラム」です。
多くの場合、通常ではありえない高利回りをうたっています。
例えばKirkland…(すでに閉鎖。一部名前を伏せます)というHIYPでは、日利7%という金利をうたっていました。
…普通に考えてあり得ないですよね。
「日利7%」。つまり、「1日に7%の利息を付ける」ということです。
そんな利益を出せる企業があれば、今頃世界中の大企業を追い越して、世界一になっていることでしょう。

こういったプラットフォームの多くは、「ポンジ・スキーム」と呼ばれる手法で運営されていました。
これは、「後から参加させた別の出資者から新たに集めたお金を、以前からの出資者に“配当金”などと偽って渡すことで、あたかも資金運用が行われ利益が生まれてそれが配当されているかのように装うもの」で、比較的古典的な投資詐欺の手法です。

運営を維持するためには、「参加者を増やし、資金を集め続けること」が絶対条件です。
参加者集めのために取られた手法がMLM(Multi Level Marketing)と呼ばれるもの。
新たに勧誘した投資家の入金や運用金額の一部を勧誘者にキャッシュバックすることで、勧誘のモチベーションを上げていく手法で、これも比較的古典的です。
上の記事中にもそれらしい記載がありますね。

ただ、いずれにしても自転車操業には違いありませんので、新規参加者が先細りになった時点で運営は破綻(通称「飛ぶ」といいます)してしまいます。
儲かるのは、最初期から参加した一部のメンバーのみ(大抵は運営の人々と個人的なつながりがある)で、大半の人は損失を受けて終わるでしょう。


③も、2018年末頃から流行している印象です。
HYIPよりは利率が低い(月利10%程度)で、大抵の場合アービトラージ(取引所間の差額を利用した取引)や、不動産投資など実際の事業を行っている…と称しています。
MLMの仕組みを持つ点もHYIPと同じです。

HYIPに比べると利率が低いため、これは本物の事業だ!と考える向きもありますが…月に10%(MLMの報酬や、会社の運転資金を考えたら20%以上)の利益を上げられる企業がどれだけ存在するのか…と考えると、やはり多くのケースはポンジ・スキームなのではないかと疑わざるを得ません。


①については、案件の内容を精査できない人は参加しないべきですし、「あのインフルエンサーが推しているから」という思考も危険です。
そのインフルエンサーは、単に報酬をもらって宣伝しているだけかもしれません(むしろその方が多い)。
※ちなみに最近は、少し形を変えてIEO(Initial Exchange Offering)と呼ばれるものが流行しています。本質的にはほとんど同じものです。

②や③については、極めてハイリスクです。
入金したその日に「飛ぶ」可能性すらあります。そのリスクを理解した上で参加するなら良いのですが、甘い言葉に踊らされてくれぐれも大金を投資することはないようにしましょう。

「この手の案件は、9割(以上)は詐欺である」ということをくれぐれも忘れずに…。
騙される人の多くは、他の投資経験がない(案件の内容や利率が異常だと気づかない)ようです。
仮想通貨に投資する前に、株や通貨など、他の投資についても学んでみると、「おかしい」ということには気づくかな?と思います。


というわけで、今日はこのような詐欺に引っかかる人が少しでも減ることを願って、この記事を書いてみました。
少しでもお役に立てば幸いです!

サポートは、資料収集や取材など、より良い記事を書くために大切に使わせていただきます。 また、スキやフォロー、コメントという形の応援もとても嬉しく、励みになります。ありがとうございます。