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「チェンバロ」という楽器の魅力

6月6日は「楽器の日」です。

私は、父が音楽関係の仕事をしているため、楽器に昔から触れる機会がありました。
最も接点が多かった楽器はギター(クラシックギター)なのですが、個人的に印象に残った楽器があるので紹介させていただきます。

それは「チェンバロ」

という楽器。

14世紀末の書物に登場することから、楽器としての歴史はかなり古いものです。
登場から400年の間、ヨーロッパでは人気があった楽器なのですが、18世紀末のピアノの登場で活躍の場を奪われました。
その後、19世紀末、ピアノメーカーがピアノの技術をベースに復活させたモダン・チェンバロが制作されるようになりました。
さらに20世紀後半、ヨーロッパを中心に、17~18世紀のチェンバロを修復・復刻したヒストリカル・チェンバロが制作されるようになり、現在に至ります。
古典楽器としては代表的なものですが、日本ではピアノのような知名度があるとは言えません。

外見はピアノと似た感じですし、ぱっと見の内部構造もピアノに近いのですが、チェンバロとピアノには大きな違いがあります。


①音の出し方が違う

ピアノの内部を見ると、

ハンマーで弦を叩く構造になっています。
このような楽器は「打弦楽器」と言います。

打弦楽器の元祖と言われるのが、古代ペルシャ(現在のイラン)のサントゥール(Santoor)という楽器。


イランのサントゥール。
演奏はこんな感じ

です。素敵ですね。

一方、チェンバロの内部は

こんな感じ。見えづらいですが、爪で弦をはじく構造になっています。
これは「撥弦楽器」といい、ギターや琴・三味線などの仲間です。

見た目は似ているのに、楽器としてのジャンルは全然違うんですね。


②音の聞こえ方が違う

ピアノは、叩いた音が純粋にそのまま響くように作られています。
一方、チェンバロは多くの倍音(出した音の整数倍の波長の音)が含まれているため、かなり複雑な聞こえ方をします。

これは、ピアノは弦の振動を駒が響板に伝え、響板が振動することで音を出すのに対し、チェンバロは楽器全体を共鳴させて音を出す、という仕組みの違いも関係しています。


③弾き方が違う

ピアノは、ペダルを用いて音の強(フォルテ)弱(ピアノ)をつけることができます。
また、音を伸ばしたり止めたりすることも可能です。

一方、チェンバロはそのような機構を一切持たないため、ピアノとはまた異なるかなり繊細な演奏法が必要です。

ちなみに、18世紀から19世紀前半に作られたフォルテピアノ

は、1700年頃、フィレンツェのチェンバロ製作家、バルトロメオ・クリストフォリによって考案されたもの。
音の強弱をつけることができる点が最大の特徴でした。

また、当初のフォルテピアノの構造には、繊細な弦など、チェンバロにかなり似た部分もあったことから、チェンバロと(フォルテ)ピアノは兄弟に近い存在であるとも言えます。
何せ、当初クリストフォリがこの楽器につけた名前は
「クラヴィチェンバロ・コル・ピアノ・エ・フォルテ(弱音も強音も出すことができるチェンバロ)」
なのです。

そんなチェンバロの演奏、実際の音はこんな感じ。

民音音楽博物館の楽器紹介動画と共にどうぞ。
素敵だと思いませんか?

また、チェンバロは元々、上流階級の屋敷の調度品として用いられたため、外装に優美な装飾を施すことが一般的です。
これも、機能性重視のピアノとはまた異なる特徴ですね。

日本ではあまり知名度がないチェンバロ。
個人的には、この楽器の魅力はもっと広まっていいと思っています。

日本チェンバロ協会

では、会員によるコンサートの広報も行っています。
もし、よろしければ是非!



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瀧波一誠
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