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新旧水力「スマートミックス」
今日のニュースは、熊本日日新聞より。熊本県美里町にある大正時代建築の水力発電所について。
今回記事として取り上げられているのは、1922年に運転が開始された流れ込み式の水力発電所、「大井早[おおいそ]発電所」のトンネル。
美里町は熊本市の南東、熊本平野の南端付近にあり、8割は山地です。
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そのため落差を作りやすく、このような流れ込み式の水力発電所が多く建設されたようです。
ちなみに、日本の発電に関する変遷を見ると、
①1887年~1911年頃は小規模な火力発電所が多く建設され、主に電灯などの小さな需要に対応していました(火主水従)。
②その後1912年から62年まで、水力発電所が多く建設され、さらに発電所も大型化。工業の近代化に大いに貢献しました(水主火従)。
③その後、高度成長期から東日本大震災(2011年)までは電力重要の増加に火力と原子力の増設で対応(ベストミックス)。
④2011年以降は再生可能エネルギーの普及を進め、さらに再度地域分散型を図る「スマートミックス」志向しています。
この記事の発電所は②の時期のものに該当しますね。
ちなみに、日本でアルミニウム精練が行われていたのも水力発電が主体で、発電コストが安かった②の時期。その後③の時期に入って衰退しています。
下の記事は2014年のもの。
既に国内にはアルミニウム精練の拠点は存在しません。
日本の場合は、エネルギー資源を輸入に依存しているため、火力はどうしても発電のコストが高くなってしまう傾向があります(産油国であれば話は別ですが)。
大量の電力が必要なアルミニウム精練は、コストが上がり成り立たなくなります。
それにしても、②の時期の発電所でもまだ現役のものがあるというのはなかなか驚きです。
ちなみに熊本県は④の方向でも注目を集める取り組みがあり、阿蘇カルデラ南部、棚田の広がる南阿蘇村では、2021年に、豊富な水量と棚田の落差を利用した小水力(マイクロ水力)発電所が設置されています。
熊本地震により完成が遅れたものの、今後その他複数の場所にも設置が予定されており、売電収入は棚田の維持などに使われるそうです。
棚田については、文化的な価値は高いものの、その維持の困難さと高齢化が懸念されていたことから、この取り組みにより地域の負担が軽減することが期待されています。
この小水力発電も、同じ流れ込み式ですね。
大型の施設が不要で構造がシンプル、メンテナンス性が高いことが利点です。
というわけで、新旧の水力発電施設が共に地域を支える熊本。
小水力発電は現在注目を集めている方式の一つですが、日本の山村にはメリットの大きい方式と言えそうですね(とはいえ、初期費用をどのように捻出するかや水利権の部分は問題ですが)。
今回はこれくらいで。
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