ギニアの巨大鉄鉱山
本日のニュースは、東洋経済オンラインより、ギニアにおける資源開発のお話。
鉄鉱石産地というとオーストラリアやブラジルなどが挙がります。
しかし、鉄は地球を構成する中で最も一般的な物質です。
何せ、地球の重量の35%は鉄でできており、その可採埋蔵量(商業的に採掘の目途が立っている量)は1,000億トンに迫ると言われています。他の資源と比較して圧倒的な量を誇ります。
鉄は宇宙空間の中でも最も安定した物質のひとつです。
恒星がエネルギーを生み出す核融合反応の最後に残るのは鉄であり、そこで反応が終わることからも安定性が伺えます。
また、惑星は恒星に近いほど重い元素で構成される性質があり、そのため地球も宇宙空間に漂う量が多く、かつ重い鉄が主体となって作られています。
このように地球は「鉄の惑星」であることから、鉄鉱石は、比較的偏在性(地域による分布の偏り)が小さい資源。鉱床そのものはあちこちに存在しています。
勿論、立地によってその経済性には大きな差があり、例えば日本では経済性のある有力な鉄鉱床は残念ながら存在しません。
そんな中で、今回はギニアの鉱床にスポットが当たりました。
ギニアはアフリカ大陸西端に位置する熱帯の国で、ボーキサイト、金、ダイヤモンドなど豊富な鉱産資源が特徴です。
しかし、度々の政情不安(クーデター)、疫病(エボラ出血熱など)の流行により度々国内が混乱し、インフラ整備が遅れており、その開発が進まず経済が停滞していました。
現在の同国の主力となっている鉱産資源はボーキサイト。生産量は世界3位。埋蔵量は世界一。
ボーキサイトの世界の総量320億トンのうち、1/4の80億トンを誇ります。
そして、鉄鉱石は未開発ながら巨大な鉱床を有することはかねてから知られており、今回話題に挙がっているシマンドゥ鉄山は22億トンの埋蔵量があると推計されています。
「世界最大」という言葉は決して大げさではありません。
例えばブラジルにある世界でも類を見ない巨大鉄山、カラジャス鉄山(埋蔵量180億トン)やイタビラ(50億トン)と比べてはいけませんが、埋蔵量22億トンは主要生産国の一角、カナダやウクライナの国全体の埋蔵量に匹敵します。
ギニアには推定で40億トンの鉄鉱石埋蔵量があると言われており、今回の開発はそのおよそ半分にあたります。
ただ、やはり問題になるのがその積み出し手段。
シマンドゥ鉄山は南東部の内陸にあるため、鉄鉱石を積み出すとなれば、その手段は輸送費が安価な鉄道しかありません。
地理の学習内容で言えば、一般的に重量があり、かさばる、しかも重量当たりの価格が安い鉱石や穀物などは、輸送に船舶及び鉄道を使うことが一般的。
逆に、軽く小さく、単価が高い半導体などは、自動車や航空機などを用いる、という話がありますね。
しかし、鉄道の問題点は、敷設時に多大な資金が必要になることです。
記事によれば、それらの鉄道敷設も含め、中国資本がかなり大きな役割を果たしそうです。
近年、アフリカの資源開発では中国資本が大きな役割を担うことが増えており、今回もその流れになりましたね。
ちなみに今回の開発に関わっているのは、シンガポール、中国、イギリスの3国と地元の資本。どうやら主導権は中国資本が握っているようです。
何となくこの構成は、アフリカ大陸南部のカッパーベルトを挟むように敷設されているタンザン鉄道とベンゲラ鉄道の話を彷彿とさせます。
開発コストはおよそ150億ドル(2兆円)と言われているのですが、その多くは鉄道と港湾設備に費やされると言われています。
西の積出港から鉱山までの距離はおよそ650㎞ですので、確かにこれは大変な事業です。
ところで、1970年代くらいから、日本の商社が同じ地域で鉄鉱山の開発計画を展開していた筈なのですがいつの間にか開発の主体が入れ替わっています。不思議…。
ちなみに、記事の通り鉄鉱石が年間1億2千万トン産出できるとすれば、ギニアは鉄鉱石産出量5位(ロシアを追い抜き、インドに迫る)に躍り出てきます。
生産が始まった翌年には、鉄鉱石産出の上位に変動があるかもしれませんので、統計資料には要注目です。
そういった意味でも、今後の開発進捗に注目ですね。
今回はこれくらいで。