よもやよもやのノミ騒ぎ。降って湧いた、猫も人間も痒くて痒くて上へ下への大騒ぎ。
昨年9月の末頃だっただろうか。突然、足にひどい痒みが発生した。そろそろ秋口だし、皮膚が乾燥して痒みが出たかな、と思っていたが、例年ないことである。
なんとなくおかしいな、と思っていたら、家人も足が痒いと言い出した。ここに来ていよいよおかしい、と思っていたが、決定打がない。日々「?」となっていたが、ある日、猫ケージの掃除をしていて気が付いた。
…黒い粒々が大量に落ちている。いくら掃除しても、それは絶えることがなかった。ネットで調べてみると、ノミの糞である可能性が出てきた。水分を与えると、赤く滲むという。ノミは吸血するからだ。先程、拭き上げて捨てたウェットティッシュをゴミ箱から引っ張り出し、見てみると、物の見事に赤く滲んでいる。
これは、そういうことか。ノミだ。ノミが、猫たちに発生してしまった。原因不明。人間は、ノミに噛まれたのだ。
その頃、まだ黒猫ケイちゃんは別室で暮らしていた。そちらには黒い粒々は出ていない。サビ猫のチャコさま、ポンちゃま、チャコさま母のハナちゃんの暮らす部屋で発生している。
虫落としを入手しなければならない。三匹のうち、誰かを獣医に連れて行こうかと思ったが、もう寄生されていると思われるので、下手に連れて行くと周りへの感染源になる。
動物病院に電話で相談すると、虫落としを販売してくれるという。そして私は無事、四匹分の「フロントラインプラス」を入手した(別部屋のケイちゃんはノミが発生していない可能性が高かったが念の為である)。
フロントラインプラスは、猫の首筋に滴下して使用する。首筋に垂らして、全身の皮膚に薬が回ってノミを落とす算段だ。さて、ここでどうしよう、である。ポンちゃまとケイちゃんは抱っこできる子なので、投与は容易い。問題はチャコさまとハナちゃんだ。抱っこができない。覚悟を決めた。
バスタオル(より正確に言うと、ペット用の大判タオル。100cm×100cmくらいある。人間用のバスタオルだとサイズが足りないことがある)でおくるみにした上で洗濯ネットに入れ、首筋を露出させて投与するしかない。
と、言葉にすると簡単なのだが、猫は、身体こそ小さいが本気を出したら猛獣だ。私も何度、引っ掻かれ噛み付かれ、大流血したことか。一仕事である。
投与のタイミングであるが、四匹一斉が望ましい。でないと、先に投与した子からノミが逃げ出し、他の子に付いてしまうからだ。取り急ぎ、ポンちゃまとケイちゃんを抱っこし投与した。
続いてチャコさまとハナちゃんである。
チャコさまをケージに追い詰め、タオルでおくるみにしたい。三階建のケージを上から下まで逃げ回り、果てはタオルを差し入れるために開けたケージの扉から脱走し、再度ケージに追い詰め、上から下まで逃げ回り、うんこしっこ肛門腺と一通り失禁し…大乱闘の末、やっとの思いでタオルでふんづかまえ、洗濯ネットにむぎゅうと押し込んだ。
タオルを手繰る。顔が出てしまうと抵抗が激しくなるので、顔はタオルでくるんだまま、首筋だけを出さなければならない。なんとか首筋は出たが、身体が横倒しなので、薬の滴下がやりづらい。薬を絞り出して、解放した。チャコさまはほうほうの体で逃げていった。
…これをもう一度、ハナちゃんでやらなければならない。もう一度乱闘の末、同じことを繰り返し、四匹分の投与に成功した。
凄まじかったのは翌日である。ケージの段に敷いてある敷物にコロコロをかけると、ノミの死骸がたくさんくっついてきた。頭がくらくらするほどの量だった。
しかしこれで残滅とはいかない。何度か、虫落としの投与を繰り返し、また、部屋を徹底的に綺麗にしなければ、ノミは駆除できない。バルサンが炊ければ一発なのだが、我が家には水棲ガメがおり、バルサンが炊けなかった。いや、水棲ガメを水槽ごと避難できればよいのだが、あいにくと90cm水槽と大きいので、現実的に無理だったのである。
虫落としの投与だが、二回目以降からは薬を「ブロードライン」に切り替えた。これは、ノミが媒介する内部寄生虫の、瓜実条虫を同時に駆除できるかできないかの違いによる。ブロードラインは駆除できるのだが、フロントラインプラスはできない。
動物病院にお願いして入荷してもらい、二回目、三回目と投与を繰り返した。その度に、チャコさまとハナちゃんとは大格闘となる。こちらも猫も、精神的にも体力的にもへとへとになりながらの投与であった。
実は初回の投与の時、チャコさまがあまりに手こずるので、投与を後日にしようかと諦めかけた。しかしその時である。チャコさまの眉間を、ノミが歩いていくのが見えた。これはいけない、やはり投与しなければと、勇気を奮い立たせて再びチャコさまに立ち向かったのであった。
うちの子達は、チャコさま、ハナちゃん、ケイちゃんが短毛で、ポンちゃまはやや長毛である。そのせいか、ポンちゃまはノミが落ちきるまで日数がかかった。そんなポンちゃまに、ノミ由来の思いがけないことが降りかかるが、これはまた後日書く。
とりあえず三週間おきに三回投与したところ、ノミは見かけなくなり、人間も噛まれなくなり、部屋も綺麗にしたので、なんとかなったようでは、ある。
手元には四回目投与分のブロードラインがあるが、あの大格闘を思うと、チャコさまとハナちゃんには大きなストレスになるし、天秤にかけて今は投与を差し控えている。もちろん再発生するようであれば投与の覚悟は決めている。
ノミの卵は一年くらいは持つという。なので、昨年9月くらいからの一年間は、懇意の保護猫カフェには伺わないことにし、保護猫カフェさんにも連絡を入れた。保護猫のかわいい子猫たちには会いたいが仕方がない。ノミを移したらこれは大変なことになってしまう。
それにしても、ノミに人間が噛まれた時の痒みはとんでもないものであった。蚊に刺された痒みなど比較には及ばないほどの激烈な痒みが長続きする。跡も赤くなって残ってしまう。
私は耐えきったが、家人が耐えきれず人間の医者に診てもらったところ、ノミに噛まれたものとはわからず、ただの痒み止めを出されて終わった。わからないものなのだろうか、最近はノミに噛まれた人間というのはあまりいないのだろうか?疑問である。
しかしこの赤い跡というのはいつになったら消えてくれるのだろう。今は痒くないのだが、点々と残る跡が目立つ。ノミよ、やってくれたな、の思いである。いやそれにしても忌々しい出来事であった。再発しないことを祈りたい。
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