"印象に残る" ということ
私たちが日々過ごしていく中で色々なものを目にして、触れて、嗅いでいると思いますが、1日を振り返り印象に残っていることはあるでしょうか。
旅行という非日常な出来事を振り返ったとき、全てを覚えているわけではなく、自分自身の物差しの中の断片的な事柄しか覚えていないなんてことはないでしょうか。
私はよく美術館に行きますが、展示はどれも素晴らしいもののはずなのに、その中で何を覚えているか?と聞かれると案外1つや2つだったりします。
何故全ての事柄を覚えられず、逆に"印象に残るもの" が出てくるのかということを不思議に感じ、何故印象に残ることが起きるのだろうかと考えてみました。
印象に残るもの1つ目、"他と違うもの"
私が初めて小学校に登校した日、教室に居たのは若くてさっぱりとした女性の先生でした。
その担任の先生は"あの"という名字で、その夜、祖父に電話をかけた際
「"あの先生" って言うんだよ。」と伝えたところ、「"どの" 先生?」と聞き返されたのです。
「だから、"あの" 先生だよ!」
「だから、"どの" 先生?」
なんてやり取りを何往復かした後、"あの" という名字だと祖父には認識できないと私は気付き、的確に訂正したのです。
こんな出来事があったので、私にとって"あの先生" は他にない名字として、印象に残っています。
印象に残るもの2つ目、"共通点があること"
以前旅行に行ったとき、素敵なカフェを見つけ、ランチを食べました。
食事中、向かいに座っていたカップルの女性が突然「すみません!雰囲気が素敵なので、写真を撮ってもいいですか?」と尋ねてきました。
私は快諾しながら話を聞き、その女性が写真を撮ることが好きだと分かりました。
私も一眼レフを持っていて写真を撮るのが好きだったので、あの一瞬の数十分の出会いの中だったのにも関わらず、同じ場所を選び、同じ食事をし、同じカメラの趣味を持つ女性ということが印象的でした。
"同じ物が好き" という共通点だけで、どこか繋がっている気がして昨日のように思い出せる印象的な出来事となりました。
印象に残るもの3つ目は、"好みであること"
私は絵本作家の酒井駒子さんの絵がとても好きなのですが、酒井さんの絵を初めて見た瞬間の衝撃は今も忘れることが出来ません。
どこかの本の表紙で一瞬見たとしても「それは酒井さんの絵ですね。」と答えられる自信があるぐらい、彼女の絵を見ると鼓動が速くなり、身体が脈打つのが分かるのです。
柔らかいタッチ、繊細な線から描かれるのはとても可愛らしい動物や人。
あの温かい世界観が好きで、私は生涯忘れることなく印象に残し続けるのでしょう。
印象に残るもの4つ目は、"違和感のあるもの"
私が初めて音楽番組で「あいみょん」という文字を読んだときのことです。
「一体、どんなギャルの女の子が出てくるんだろう。」と思いました。
「ゆきぽよ」さんのような、平仮名の名前は=ギャルの女の子、というイメージだったのです。
しかし、実際テレビに出てきたのは黒髪のとても落ち着いた女の子。
そんな人から驚くほど力強い歌声が発せられたので、本当に驚きました。
"あいみょん" と言う柔らかく可愛らしい名前ですが、実際にそこに立つのは 誰もが口ずさみたくなるような曲を考え、心打つ詩を書き、ギターを掻き鳴らしながら曲を奏でる女の子。
その違和感が、私の印象に強く残したのです。
印象に残るもの5つ目、"その人自身を感じられるもの"
少し前、美術館で出会った石塚源太さんという方の漆の作品が印象に残っています。
それは、その作品がこの人にしか作れない、内側から出てくる彼の心の具現化したもののように感じられたからです。
漆塗りの質感と触感を追求し、漆塗りの良さを最大限に引き出せる形を見つけようと、様々な形に塗られた漆はまるで生き物のよう。
作品を通して彼のエネルギーを感じ、彼自身を感じて印象に残る作品でした。
印象に残るもの6つ目、最後にあげるのは"感情に触れるもの"
ある画家の生誕100年記念の展覧会を観に行った時のことです。
綺麗に描かれた無数の動物や女性画を幾つも堪能し、最後にぼやっとした女性の絵が一点ありました。
それは、死ぬ間際まで絵を描きたいという強い想いで描き続けた絶筆の作品だったのです。
その絵の女性が、先に亡くなった奥様に似ているという作品の紹介文に胸が熱くなりました。
特に好きな色使いや構図でもないのに印象に残っているのは、彼の絵が私の心に触れたからでしょう。
"印象に残る"という事象1つをとっても、これだけの気持ちを配り、心に刻んでいるのだと思うと面白いなと思いながらここまで書いてきました。
みなさんはどんな時に、印象に残ったなと思うのでしょうか。
またお話する機会があると楽しいかもしれませんね。
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