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はじめに

 もしかしたら私は幼い頃から見えない世界が身近だったのかもしれない。
私は幽霊なんかを見た事はないけれど親族の間ではそんな話が特別な事ではなかった。

「いやぁ昨日家に帰ったら灰皿が飛んだりひどくて!上の部屋葬儀だったみたいでさ!」
なんてのが母の家系の方では世間話の中に自然と紛れていた。

 親族の中で最もそういった力が飛び抜けていたのは叔伯父(母の従兄弟)で、葬儀などで集まると叔伯父の周りに遠く離れた場所から来た親族達の人集りが毎度出来てお悩み相談会が自然と始まる。
「仏壇が家の一階と二階にあるべ?それがな…」
叔伯父は行ったことも写真で見た事もない遠く離れた親族の家の間取りや配置まで問題点を口数少ないながらに伝える。
葬儀の為にやって来たのか叔伯父と話す為にやって来たのか、子供ながらに疑問に思った。
 寿命までわかってしまうからか叔伯父の涙を私は葬儀で見た事がなかったし、○○(地域名)の神様と呼ばれる霊媒師なんかも叔伯父に相談に来る程霊能力が高かったが、叔伯父は普通に会社勤めをし霊能力でお金を貰う事は一度もなかった。

あれは私が20代前半だったろうか。
叔伯父が「俺の力を継ぐとすれば、お前だな。」
と言ってニタリとした。
本当なのかジョークなのかわからない含んだ言い方をよくするので、その時の私はブラックジョークだと受け取ってやり過ごした。
が、20年あまり経った今。
あれはこういう意味だったのか…と、してやられた気持ちが拭えない。

思えば長女の能力が強くなり始めたのは、叔伯父がガンになり寛解した頃
「俺は長生きする事にした。」
と直接言われたあたりだ。
つまり、もう霊能力は使わない、という意味だった。

そのあたりから長女は神が見え始めた。

その瞬間の事はよく覚えている。
あの日は買い物の後、我が家の氏神様の神社の前を通るので参拝をした。
参拝を終えた後の参道を歩いていると横からパンパン!と柏手を打つ音がした。
私がその音の出所を特定するよりも前に、長女が
「あ、神様だ…」と言い、斜め上を見上げていた。
柏手を打ったであろうおじいさんは、長女の目線の先の斜め下で両手を合わせ頭を下げ、まさに拝んでいた。
長女が言うには、そこには太陽の光のような光の玉があったそうだ。
その後はもう、まるでダウンロードしたみたいに13歳かそこらの子が知る由も無い哲学のような真理のような事をつらつらと家に帰るまで長女は話し続けた。

経験で幽霊のようなものに入られた人が発するそれを私は知っていたし
言葉にしようのない疑う余地のない『感覚』しかなかった。

今振り返ると、まるでスマホの初期設定のようだなと思う。

それからは長女の見えない世界が一気に広がった。

傍で見てきたそれら、主に見えない世界のことを記録していこうと思う。











 

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