見出し画像

おまえは『Warhammer 40,000:Darktide』で人類を守る尖兵となれ

 『ウォーハンマー40K』シリーズが好きだ。
ボードゲームのほうはやってないのだが、コンソール機で発売されているビデオゲームをプレイしてみたり、ファンフィクション界隈を覗いてみたり、アニヲタWikiの該当項目※を読んでみたり……遠未来のダークな世界観でファンタジーとSFが融合したバトルという設定が唯一無二で、つい惹かれてしまう。ディーモンを滅ぼすにはすべての知的種族が消滅しなければならない……というままならなさや、完璧超人である皇帝のやらかしやケア不足によって息子達が離反していく過程など、たんなるドンパチに終始しない奥深さがある。
 そんなウォーハンマー40Kの世界観をベースにしたCO-OPシューター『Warhammer 40,000:Darktide』が先日発売され、けっこうハマってしまっているので今回はこの『ダークタイド』について語りたい。

※アニヲタWikiのウォーハンマー40Kのページはバカ長いことで一部に知られている。所要時間90分のページが数十項立てられているので帝国の書記官が編集している疑惑がある。

世界観が暗いんじゃ

 ウォーハンマー40Kの40Kというのは40000を略記したものであり、つまるところ西暦40000年という超未来を舞台にしたフランチャイズである。技術の発展によって宇宙進出した人類は、しかし暗黒時代の訪れによって隔絶された。文明を守り抜いた惑星もあれば宇宙船なんか忘れて棍棒でウホウホするだけに成り下がった星もある。そんな孤立した惑星たちを全部シメて人類勢力を復活させようとしたのが皇帝(ダークタイドでは“神帝陛下”)である。こいつはすげえやつで、紀元前から人類を見守ってきただの、地球にいたすべてのシャーマンが魂を融合させる儀式によって転生したスーパーサイキックであるだの、いろんな設定があるが、ダークタイドでは会うこともないのでまあいい。
 とにかくこのコーテーという男が銀河をシメて作り出したのが“帝国”なのだが、ダークタイドをやればわかるとおりまあ酷い。

・人の命が銃一丁より安い
・皇帝は宗教根絶政策を取っていたが、1万年経過した今ではその皇帝が神格化されている
・傲慢エルフ、不死身ガイコツ、オーク、バイド、宇宙共産主義などの隣人に囲まれて絶体絶命
・しかも消滅させるのが困難なディーモンとかいうのが異界から湧いてくる

終わりである。このシロアリ被害で倒れかけの家みたいな帝国を改革するため、皇帝の息子で一番のいい子ちゃんであるロブートというトリオ芸人みたいな名前のやつが活躍しているのだが、ダークタイドに出てこないので、まあいい。

3Kが揃った生活環境

 ダークタイドの舞台になるのは“テルティウム”という過密都市なのだが、汚い、暗い、臭そう。雨も降らないのにシメっているし、アジア人の黒目では何も見えないぐらい暗い。しかもこんな場所で疫病の邪神“ナーグル”が陰謀を働いているのだから、もう……。
 当然というべきか、出てくる敵もみんな小汚く、抹茶みたいな色のゾンビ風エネミーや、装備をトゲトゲに改造した世紀末反乱軍、ゲボを吐きながらのたうちまわる地獄のナメクジなど、食欲ダイスにペナルティを与えてくる敵がたくさんいる。

くさそう
(c)Fatshark AB

 でも、汚く見えるということは、それだけ「汚し」「生活感」の表現に本気ということだ。荷物もそのままに放棄された鉄道の駅舎、火を吐く製鉄所、都市郊外の崩れそうなスラム街など、単なるステージにとどまらない多彩な表情を見せてくれる。まあ、見てる暇なんてないが。
 筆者はSFにこそ生活感が必要だと考えている。『スターウォーズ』『ガンダム』がそうであったように、まだ実現しない世界の物語、遠い未来の話だからこそ、生活感がフィクションをわれわれの世界に引き寄せてくれる。光る剣を振り回して光線銃を撃ちまくるヒーローでも、メシを食い、恋愛に悩んでいればこそ共感ができるというものだ。

音楽がいい

 ゲームプレイより先にビジュアルやサウンド面の話ばっかりで申し訳ないが、本作はサウンドトラックもバツグンに良い。『Hitman』や『Assassin's Creed』シリーズファンならご存知のJesper Kyd氏が担当した本作のOSTは、テクノ……ゴシック……ハードコア?なゴリゴリの音色で彩られている。「西暦40000年、ゴシック様式の建築が立ち並ぶ宗教的な帝国」というAIのプロンプトにしたらエラー吐きそうな世界観を見事に表現しきっているのだ。
 殊更に筆者イチオシの一曲がある。それがこの『Disposal Unit』だ。

 この曲は暗殺ミッション(いわゆるボスバトルが最後に待ち構えている)、その標的との戦闘で流れる。Disposal Unit(処分部隊)の名の通り、プレイヤーたちは訳あって囚人から選ばれた懲罰部隊である。帝国は基本的にアレなので、罪の償いは活躍か死なのだ。そんなプレイヤー4人が皇帝陛下の名のもとに剣やライフルを振り回して“異端者”の親玉をしばくときのBGMがこれである。たまらんよね。

共に苦しむか、独りで死ぬか

 先述したとおり、ダークタイドのジャンルはCO-OPシューターである。『L4D2』『Deep Rock Galactic』あたりが同類の作品だ。簡単に述べると、プレイヤーは4人でチームを組み、マップを進行しながらメイン目標を達成するというもの。プレイと厳選を繰り返すシューターなのでストーリーはあるんだかないんだかレベルではあるものの、ワンプレイ単位・プレイヤー間のドラマは生まれやすい。
 たとえばオグリンというキャラクターがいる。いわゆる「タンク」の役職で、敵に突っ込んで散らかしながら味方を守るのが仕事である。このゲームではボスが乱入してくることがある。遠くで扉をぶち破るような音が響き、ボスのHPゲージが現れて対戦開始となる。
 オグリンであるあなたは「デカブツシールド」を地面にどっしりと構え、ボスを迎え撃つ。あなたの防御スタミナがジワジワと削られていく間にも、あなたの戦友たちがグレネードで、サイキックで、デカいハンマーでボスを攻撃してくれる。こちらの防御が崩れるが早いか、あちらが倒れるが早いか、そんな緊張のなかでついにボスがもんどりうって倒れる……。
 そんなときはクイックチャットから「応援」を選ぼう。

FOR THE EMPEROR!!!

近所迷惑レベルの音量でキャラクターが勝鬨の声をあげてくれる。「ありがとう!」「弾くれ!」「あっちから敵!」ぐらいのコミュニケーションはショートカットホイールからいつでも発言できるので、ボイスチャット環境はなくても問題ナシ。

イカれたメンバーを紹介するぜ

 ダークタイドには4種類のキャラクター(クラス)が存在する。それぞれ特化した能力をもち、互いに補うことで最大限の力を発揮することができる。

ベテラン

 ベテランは帝国防衛軍(アストラ・ミリタルム)の熟練兵である。これはすごいことだ。人海戦術と肉の盾で敵を圧殺するのが決まり手の軍隊で長らく生き延びているのだから。やはりというべきかスキルは銃火器と味方の支援に偏っている。銃に持ち替えて数秒間射撃ダメージを強化するスキルで厄介な敵エリートを遠距離で撃破し、味方を鼓舞するスキルで耐久力を強化し、ボスに対して莫大なダメージを与える手榴弾でダメージに貢献する。欠点は逆にインファイトに弱いことか。初期はスコップで敵をペチペチすることになるので、剣あたりを手に入れたい。

ジーロット

 ジーロットは狂信者の意。皇帝が好きすぎてちょっとアカン感じの人たちである。火炎放射器デカハンマーなど過激すぎる道具を扱う。武器を振り上げながら敵に向かって突撃する薩摩武士みたいなスキルや、十字架を空に掲げて敵(と味方)をビビらせるスキルなど、インファイトの対応力に優れる。欠点はやはり遠距離に弱いこと。ボルトピストルのような遠距離にも高火力を投射できる銃を持つか、諦めてベテランやサイカーに任せよう。

異能者(サイカー)

 サイカー(ややこしいのでこう呼ぶ)はいわゆる魔術師・魔法使い系のクラスで、歪み(ワープ)とよばれる異次元から力を引き出して戦うことができる。帝国は宗教国家なうえ、ワープはディーモンの発生源でもあるため、サイカーは基本的に存在してはいけないもの扱いされている。だいたい能力の暴走で死ぬか皇帝の寿命を伸ばすための生贄にされるのだが、たまに能力を制御でき、なおかつ帝国に協力の意思を示すものがいる。それが本作のサイカーで、シスの暗黒卿のように電撃を飛ばしたり、相手をにらみつけてこぶしをギュッとやることで脳ミソを破裂させたりできる。しかしバチバチや脳ミソパンパンにも代償がつきもので、スキルを使うごとに危険度が上昇し、100%に振り切れてしばらくすると自分の脳がパンしてしまう。幸い、リロードボタン長押しで危険度を「抑制」することができるため、戦闘の合間にリロード感覚で挟んでおこう。スキルでは敵を転倒させる衝撃波や防弾バリアなどクラウドコントロール能力に優れ、また銃の代わりに装備できる杖やサイキック能力のおかげで味方と弾薬の取り合いにならないことが長所。短所といえば、スキルはチャージしなければ発射できないことと、危険度のシステムに慣れるまで複雑なことか。

オグリン

 オグリンはいわゆるタンクを担当するクラスだ。帝国内に住んでいる亜人(アブヒューマン)という扱いの種族で、地球と異なる惑星の環境に適応した結果ホモ・サピエンスとは異なる種になった人たちである。敵を押しのけながら突進するスキルや、自身に攻撃を集中させる挑発スキルを持ち、ダウンした味方の蘇生を邪魔されないという特性で味方を守り抜く。「オデ、タタカウ。オマエ、マモル」みたいな感じのキャラなので、使える武器がみんなデカショットガンとかデカ棍棒みたいなやつなのが悩み。遠距離の敵に対しては石を投げるぐらいしかないので、ベテランやサイカーに任せよう。

皇帝陛下より賜りし武器をブッ放せ

 ウォーハンマー40Kはイカれた宇宙SFなだけあって、ダークタイドに出てくる武器もみんなイカれている。チェーンソード、チェーングレートソード、チェーンアックス(チェーンソー好きすぎだろ)にはじまり、デカくてバチバチするトールハンマーもどき、敵を殴ってそのまま爆破できるグレネードランチャーガントレット、串刺しにした敵にワープエネルギーを流し込んで体内からポンできる剣……まあ自分の目で確かめてくれ。
 なかでも筆者のお気に入りは、作中でボルトガンとよばれる種類の銃火器だ。これはボルトという自分で推進力を生み出す弾を発射する。銃の動作方式について講義するつもりはないので簡潔に話すが、普通(我々の世界で)の銃は薬莢に収められた火薬を発火させ、そのエネルギーで弾頭を前に飛ばす。だがボルトは自力で推進して飛行するので、ある意味では小型ロケットに近い。ダークタイドではボルトピストル(オグリン以外の3人が装備できる)とボルトガン(ベテラン・ジーロット用)の2種類が実装されているが、ともに高威力・高反動・低レートという特徴で、リアル系シューターにおけるデザートイーグルやバレットのような質感がある。
 ボルトピストルはまだ常識的なサイズの範囲に収まっているのだが、ボルトガンが異常である。まず取り出しが遅い。対人FPSなら絶対死んでる遅さだ。「よっこいしょ……」と米袋でも持ち上げるようなモーションで、咄嗟の射撃は望むべくもない。次に反動があまりに強い。1発撃てば敵を見失い、フルオートで撃てば反動で空が見える。やっぱりリロードも遅い。よっこらしょと銃を持ち上げて弾倉を替えると、中で工場でも動いてんのかと疑うレベルの金属音が鳴る。

 それもそのはず、ボルトガンというのは超人パワーアーマー兵士であるスペースマリーン御用達の装備なのだ。彼らはピストルみたいにボカボカ撃ちまくるが、こちらは人間なのでそうもいかない。しかし超人軍団御用達なだけあって威力は申し分なく、ボディアーマーを装着した敵であっても胴体に2~3発、ボスでも弱点に当たれば目に見えて削ることができる。しかも弾丸はヒットした場所で爆発するので、筆者のようにヘッドショットを狙ったエイムが苦手なプレイヤーでも大物対策をバッチリこなすことができる。ダークタイドはサウンドデザインも最高だ。「ドム……ドム……ドム……」というボルトの銃声は病みつきになること間違いなし。

亀のように遅い

皇帝の前に迷いは捨てよ

 ここまで読んで購入を考えている方々にもうひとつお得な情報がある。現在ダークタイドではイベントが開催されており、カンストレベルではないプレイヤーと協力してミッションをクリアするたびに大量の資材やキャッシュを獲得できる。つまり始めるなら今だ。
 このゲームに欠点がないとは言わない。画面はビビるぐらい暗いし、先走って孤立した味方が死んだりするとピキッとくることもある。翻訳の質は……まあ、怪しい。(女口調と丁寧語を交互に行き来するキャラクターがいる)
 だが仲間たちと協力し、蚊柱のごとき敵の群れを薙ぎ払い、強大な怪物を打ち倒し、皇帝陛下の帝国を守護することは、なにものにも替えがたい楽しい経験となるはずだ。

THE EMPEROR PROTECTS
皇帝陛下がお守りくださる

いいなと思ったら応援しよう!