見出し画像

謦咳に接した記憶

山根あきらさんの企画に参加させて頂きます。

田村 学 様

元國學院大学教授
文部科学省主任視学官


現行の学習指導要領は、小学校では2020年度4月から実施されているのだが、2020年と言えば、3月2日からコロナウイルス感染症対策として休校が実施されていた時期と重なる。
外出が憚られ、4月になっても休校は解除されず、教員の校外における研修も全てなくなった。その情報が閉ざされた中で、これまでで一番大きな変革が求められる指導要領が実施となった。

改訂の趣旨は以下のようなものだった。

近年、グローバル化や、スマートフォンの普及、ビッグデータや人工知能(AI)の活用などによる技術革新が進んでいます。10年前では考えられなかったような激しい変化が起きており、今後も、社会の変化はさらに進むでしょう。
海外の専門家の中には、「今後10~20年程度で、半数近くの仕事が自動化される可能性が高い」、「2011年度にアメリカの小学校に入学した子供たちの65%は、大学卒業時に彼らが小学生の頃には存在していなかった職業に就くだろう」などと述べる人もいます。進化した人工知能(AI)が様々な判断を行ったり、身近な物の働きがインターネット経由で最適化されたりする時代が到来し、社会や生活を大きく変えていくとの予測がされています。
このように社会の変化が激しく、未来の予測が困難な時代の中で、子供たちには、変化を前向きに受け止め、社会や人生を、人間ならではの感性を働かせてより豊かなものにしていくことが期待されています。
子供たちが学校で学ぶことは、社会と切り離されたものではありません。社会の変化を見据えて、子供たちがこれから生きていくために必要な資質・能力を踏まえて学習指導要領を改訂しています。

2020年度、子供の学びが進化します!
新しい学習指導要領、スタート!
政府広報オンライン

改訂の一例を挙げると

言語能力の育成(対話的な授業が求められる)
小学校5・6年生で教科としての外国語導入
プログラミング教育
「特別の教科道徳」の新設
主体的
対話的で深い学び
教師の授業改善  等

2020年度、子供の学びが進化します!
新しい学習指導要領、スタート!
政府広報オンライン

また、コロナ禍でGIGAスクール構想による1人1台端末も加速したため、タブレットPCの使用方法や活用方法についての校内研修も必至となった。

研修の仕事をしていた私は、ネットの中に情報を求め、いくつか情報収集源となった中に「独立行政法人教員支援機構NITS」の「校内研修シリーズ」という動画を見つけた。

その当時、最も必要だった情報を田村学先生が、具体的な事例を挙げてわかりやすく説明されていた。そこで、この動画を職員が「主体的・対話的で深い学び」という概念を共通理解するためのツールとして校内研修で活用した。購入していた「深い学び」という本の内容とリンクする話を、動画の中で田村学先生が生き生きと御自分の言葉で語られていた。まさに、バイブルであった。

田村学先生によると「深い学び」とは「知識・技能が関連付いて構造化されたり身体化されたりして高度化し、駆動する状態に向かうこと」なのだという。自分ごととして学び、新しい知識と、既習事項や体験が結びついたりして、役立つものにしていくことではないかと私は捉えている。

さて、それから2年ほど経過した市の研修会で、なんと田村学先生が講師として御登壇される機会に恵まれた。あの動画で拝見し、研修のよりどころとした方が、目の前で実際に動き、話している様子は、感動的だった。


そしてさらに心に響いたのは、お辞儀が深々として長かったことだ。講義を始めるとき、終わるとき、腰から曲げた美しいお辞儀に加え、時間にしたら1分くらい経つのではないかと思われるほど長いお辞儀だったのだ。
脳裏には「実るほど頭を垂れる稲穂かな」という言葉が浮かんできた。

田村先生の著書を持参した私だったが、さすがに直接話しかけてはいけないと思い、知り合いの指導主事にお願いしてサインを頂いた。そのサインが誰からの依頼か察知された田村学先生から、名刺を頂くことができた。宝物のように今も大切にしまっている。(神様のような方に連絡する訳もなく未使用)



表紙裏に頂いたサイン
見る度に身が引き締まります