小説 本好きゆめの冒険譚 最終頁
発光体となったゆめは「ゼウスの中に」取り込まれる・・・
割れた大地、焼けた空も世界も地球でさえも、ゼウスの中に、ゆっくりと取り込まれて行く・・・
「何もない空間」。
「Αιώνια αλλαγή όλων των πραγμάτων―森羅万象永久流転」
ゼウスは落ち着きながら、ヘーラーに話している。
「この世界を作ったのは、「儂ら」であるのは確かなことじゃ。じゃが、「儂ら」は誰が創ったのかの?」
「我々神は、宇宙と言う生命エネルギーの恩恵を受けて、創られた存在と言う事じゃな。」
「そして、ゆめは「宇宙そのもの」を創り出す事が出来る唯一無二の存在だったわけじゃ。」
「何とも儂らは「絶対的創造神」と一緒に過ごさせてもらった訳じゃな、ありがたい事じゃ。」
ヘーラーは膝まずき祈りながら、
「我々を創り出した母なる存在・・・ゆめ様。ありがとうございます。」
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「それにしても、何故「森羅万象」だったのかしら?地球だけで良かったような気もするのだけど。」
「さあな、神というのは、時には気まぐれじゃしな。」
「また、ゆめちゃんに会えるかしら?」
「この宇宙と世界は永遠に流転する。そう、ゆめが書き記したから、そう遠くない未来に会えるじゃろうて。」
「その時が、待ち遠しいわ。」
「ゼウス様、よろしいですか?」
「ああ、構わん。待たせたな。」
「今までありがとうございました。」
「お前もな「ゼウス」。」
「あっ、少し待ってくれんかの?」
ゼウスはクロワッサンとスープを取り出した。
「本当はゆめが帰って来てから、改めて食べたかったのじゃが…ヘーラーよ、一緒に食べんか?」
ゼウスとヘーラー「最後の晩餐」。
「また3人で食事をしようじゃないか。」
「そうね、そうよね。」
「ゼウスよ、もう思い残す事は何もない。よろしく頼むぞ」
「畏まりました。」
「ゼウス」は2人を優しい光で包み込み、そして取り込んだ。
そして宇宙に広がる全ての星を飲み込み、宇宙そのものを飲み込むと、ゆっくりと消えて行った・・・。
「何もない…」。
音もなく爆発の閃光が走った
「宇宙の誕生」の始まりである。
宇宙はまず、「神々」を創った。その中にはゼウス・ヘーラー、「神」ダイモーンの姿も見える。
「今度こそ、誰も悲しまない世界を作りますぞ、ゆめ殿!」ダイモーンが叫ぶ!
神々は、宇宙という生命体の中に惑星という生命体を創り上げた。
その小さな宇宙の片隅にひとつ水蒸気に包まれた星が誕生した。
その惑星は生命を創り出しいくつもの時代を抜け、滅びゆく生物、進化する生物の誕生を繰り返し、数えきれない年月が過ぎて
そして現代・・・
車は山と海を挟んだ曲がりくねった道を、何でもないかのように走る。
「さぁ~着いたぞ〜!」
パパの声。ママの笑顔。
引っ越し先は、田舎とは言えないけども都会とも言い切れない、のどかな町。
「今日からここに住むんだぞ〜ゆめ」。
ニッコリと微笑む私の傍に3羽の小鳥が舞い降りた。
パパが「この家は不思議なことが起こるらしいよ。」と耳打ちしてきた。
ー完ー