ボクは街の"おまわりさん"
今日から交番勤務、長く厳しい警察学校を卒業しようやく、みんなの役にたつ日がやってきたんだ!
真新しい制服に袖を通し、緊張しながらも配属先の交番へペダルをこぐ。
「おう新人、来たか!」
「今日からお世話になります!」
「俺が今日から教えてやるからよろしくな。」
「よろしくお願いします!」
「辞めんなよ…」
え?どういう事ッスか?
僕が配属になった交番は市内の住宅街の真ん中。
住宅街ではあるが隣は川が流れていて少しのどかな雰囲気さえある。
街行く人はみんなゆっくりと歩くので、ますます田舎感が増す。
「コレなら僕みたいな新人でも、やっていけそうだ。それにしても、なんで"辞めんなよ"って先輩は言うんだろう?」
そう胸を撫で下ろすとトビラが開く。
そこには老人がいた。
そうとう飲んでいるんだろう、かなり酒くさい…
「サイフ拾ったんやが」
「そうなんですね、ありがとうございます。」
「ではこの書類に必要事項を書いていただいて…
どこで拾いました?」
「知らん。」
「え?」
「どんなところかわからんの〜」
「で、では、こちらにお名前を…」
財布を確認すると免許証があった…ん?
「これ、おじいちゃんのじゃないですか?」
「ん?」
「財布に免許証があったんですよ、おじいさんと同じ名前じゃないですか?」
「どおりでワシの財布がないわけじゃ!すまんかったのう!」
「…い、いえ、これからは気をつけてくださいね。」
…なんだったんた…。
交番に慌てた40代ぐらいの奥さんが買い物袋をブンブン振り回しながら「け、喧嘩よ〜!」
さっきのおじいちゃんはオイトマしていただいて、
警察官初めての事件だと鼻息荒く現場へと急ぐ!
これでも警察学校では武術は上位の成績の自負がある!喧嘩を押さえるのは自身がある!
なぜかウキウキとこぐペダルを感じてしまい
「よ、喜ぶな!喜ぶな俺!」と高揚感を感じてしまっている自分を叱責しながら、ようやく到着!
「…喧嘩って……コレですか?…。」
見ると飼い犬、しかも小型犬同士がキャンキャンと吠え合いをしていてお互いにリードがついている。…少しイラッときたが、ここは我慢して
「他の通行される方の迷惑になりますので、早く離れてくださいね。」
と、やや引きつった笑顔で忠告した。
「イラッとしてるの、バレてないよな?」と
交番に帰るペダルが重い…
まさか、こんなのばっかりでは?
イヤイヤイヤイヤ、平和なのはいいことじゃないか!
僕たちが暇だと言う事はそれだけ平穏無事と言う事。皆さんに税金泥棒と言われようが、その方がいいのだ!
すぐ近くのはずの交番がやけに遠い…
やっとの思いでたどり着いた交番で、ひと息つく。
「つ、疲れた…何もないのに疲れた…」
交番の扉がノックする音が聞こえる。
扉を見ると誰もいない…
誰もいないのなら放っておけばいいものを、そこは警察官。確認作業は怠らない。
扉を開けると幼稚園児だろうか、4人ちょこんと立っていて、後ろから「待って〜!」と大人の声…ああ幼稚園の先生だとすぐにわかった。
「どうしたの?」
かがみ込むように子どもたちに問いかけると
「せーの」
「いつもありがとうございます!」
花束とみんなで書いたんだろう似顔絵と寄せ書きがあった。
「ヨーシ、頑張るぞ!」
警察官になってよかったと思った。
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