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小説 ちひろ⑤

小説 ちひろ 第5話 お客さんは”神様”です?


30分経過・・・終了。お客さんが部屋から出てくる。


「お客さん、どうでしたか、うちの”ちひろ”は・・・?」

店長が神妙な顔つきで、常連客の顔をうかがっている・・・。


「あの子、ちひろちゃんって言うのか・・・?」

「はい。」


客が黙り込む・・・。

ダメだったか?


「申し訳・・・・」店長が謝ろうとしたら

「あの子、すごくいいね!」店長の声に被せるように言ってきた。


「そ、そうでしょ!うちのNo.1になる予定の嬢ですから!・・・で、どの辺がよかったです?」

「ああ、とにかく一生懸命にプレイしてくれたよ!ぎこちないけど。」

「そんなことよりも、心が癒されると言うか安心させられるんだよね。話も上手だし。」


「へ、変な事は言いませんでしたか?」

「ああ、思いっきり頭をはたかれたよ!」

「え”ぇ!」なにやってんだ、アイツは。


「僕がいつも会社で言ってる洒落が「つまんねぇ!」って言って、はたかれた!」

「それは、大変失礼を・・・」

「いや、いいんだ!僕は会社で、それなりの立場にあるだろう?だから、こういう対応が新鮮だし、懐かしくもあった。これからは、ちひろちゃんを指名するよ。」


「それはそれは、ありがとうございます。またお待ちしてます。」

常連客は、満足げに店を去って行った・・・。




「ち~ひ~ろ~!」事務所で店長の声が響く。

「お前、何やってくれてんだ!今回は、たまたま良い客だったから許されたんだぞ!」

「でも、たぁ~ちゃん、喜んでましたし・・・。」

「たぁ〜ちゃん!もう、そんな呼び方してんのか!」

「これからは、そう呼んで欲しいって言うから・・・。」


「あのなぁ〜。いいか、ちひろ。これからお前は何人も数えられないぐらいの男を相手にすることになる。だから名前を覚えるのは、常連客だけにしとけ。他の客は話の内容だけにしとけ。その方が、後々楽だからな。」

「何でですか?」

「それが、接客のテクニックと言うもんさ。覚えたきゃ、覚えてやってもいいんだぜ。出来るもんならな!」


事務所のドアをボーイがノックしながら入ってきて、「ちひろさん、50分ブルマーでお願いできますか!」

「解りました。」

「いいか、ちひろ。くれぐれも接客には注意しろよ!」

「は~い。」


しかし、ちひろに付けた客に感想を聞くと、「怒鳴られた。」「噛まれた。」「無視された。」の感想ばかり・・・。

それでも、客は満足して帰って行く。その中のひとりが話してくれた。

「ちひろちゃんは、正直だからいいんだよ。」


ちひろデビューから、1ヶ月。ちひろは本当にNo.1になった。


「よ!チャンピオン!」

「わ、私なんて新人だから、珍しいだけなんで・・・」

「だからお前は馬鹿なんだ!」

「傲慢な馬鹿は本当に馬鹿だが、謙虚な馬鹿は、もっと馬鹿だ。客は他の誰でもない、お前を指名してきてるんだ、もっと天狗になってやれ!」


「わ、わかりました。」


「ちひろさ~ん、指名が入りました~!」

「はい!すぐ行きます!」


少し、「天狗になった」ちひろが事務所を出て行った。



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