小説 本好きゆめの冒険譚 第七十二頁
「何もない空間」。
「わぁ〜、何これ〜」
ゆめの髪、瞳が「虹色」に輝いている。
「綺麗でしょう?女の子だもの、おしゃれしなきゃ♡」
ヘーラーが嬉しそうに微笑みながら言った。
「私がねイーリスに頼んだのよ。」
イーリス。「虹の女神」。天の女神だ。
「でも、天の神様ってお父さんじゃないの?」
「儂は天も支配してるに過ぎん。細かい事は他の者に任せておるからの。」
「まぁ、虹の神って言ったって、私達の中では「宴会芸」程度の力だけどね。」
ヘーラーがクスクス笑いながら話していると
「ちょっと、酷いじゃないですか!」
涙目のイーリスがやって来た。
「あら〜イーリス、来たのね!でも今日は宴はないわよ?」
「私は宴会芸の神様ではありません!ちゃんと空の管理もしてます!」
「ほら、ゆめちゃん。このお姉さんが、あなたに加護をくれたのよ。」
「あっ、ありがとうございます!私はゆめって言います!よろしくお願いします!」
と、頭を下げると
「他の神は皆、私を馬鹿にする人がほとんどなのに、そんな私に頭を下げるだなんて・・・なっ、なんていい子…。」
テンションの上がったイーリスは鼻息荒くゆめに向かってー
「ゆめちゃんの為に、私の取って置きの技を見せてあげる!」
イーリスはクルクル回りながら、虹を出していった…。
「ね!宴会芸の神様でしょ?」
ヘーラーの言葉に
「確かに宴会芸の神様だわ。」
と、私も同意した。
「それにしても、この虹色の髪や瞳って、自由に出したり引っ込めたり出来るのかなぁ~?」
その疑問にイーリスが、フフンと笑いながら、
「この虹色はね、特別な時しか出ないのよ。」
「例えば?」
「そうねぇ~本気になった時とか?怒った時とか?マジ恋した時とか?色々ね。虹って奇跡の色でしょ?簡単には出ないのよ。」
「それじゃこの先、虹色になることがないじゃないですか。」
「そ、そんなぁ~」イーリスが半泣きになっている。
「ねぇ、お母さん。」
「な〜に?ゆめちゃん.」
「私って、空を飛べるようになったり出来るのかな〜?」
「ん〜、そうねぇ・・・」
ヘーラーは、何かを考えながら、唇に指を当てている。
「あっ、そうだわ!いい事思いついた!」
ヘーラーは「ペガサス」を召喚した。
ペガサス―空を掛ける馬。白い体には大きな羽が生えている、伝説の生き物だと思っていたんだけど・・・
「ペガサスって、本当にいたんだね!」
「もちろんよ〜」
そう言いながら、ペガサスの羽を根本からもいだ!
「え!?」
ペガサスも驚いた様で、涙を浮かべてる。
「お母さん、そんな事したら、ペガサスが空を飛べなくなっちゃう!」
「大丈夫よ♡ほらっ!」
ペガサスを見ると、見る見るうちに羽が生えてきた。
「ね♡」
ペガサスの羽を私の背中にくっつけようとするヘーラー。
「この羽、くっつくの!?」
「私の神パワーを信じなさい!」
ヘーラーが、私の背中に手を当てると、羽は私の身体の一部になっていった。
「これで、飛べるわよ!」
私は、羽をパタパタとして、飛んで見ようと試みるが、直にコケてしまった。
「練習が必要ね♡」
私は「猛特訓」する羽目となった・・・羽だけに…。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?