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小説 本好きゆめの冒険譚 第八十二頁

 神々が、勇者に加護を与え、防具・剣を作っている間、ゆめは「何もない空間。」に、さらにもうひとつの「空間。」を作りあげた。

 これには、流石のゼウスも驚きを隠せないようで、「ゆ、ゆめ!何をしたんじゃ!?」

「私はお父さんの娘だもの…これ位は出来るわ。」

「それよりも・・・お父さん、お母さん、お願いがあるの。」

「な〜に、ゆめちゃん?」
 ヘーラーが、いつものように優しく聞いてくる。

「一緒に食事をしたいの。最後になるかもしれないから・・・」

 その言葉に、ヘーラーは涙を隠しきれず、ゆめを抱きしめた・・・ゼウスもしかりである。

 ゆめが、用意した物は「クロワッサンとスープ」。一緒に食べようと自分で作った物だった。

「ゆめ、これって・・・」

「そう、初めて皆で食べた物だよ。お母さんが、美味しい、美味しいって喜んでくれたから。」

 それから3人で、色々な話をした。

 初めてゼウスに会った時は3人に分裂してたことや、初めての「加護」の話。ゼウスが「ケラウノス」で星一つ消滅させたら、ヘーラーがマジ切れした事、私の力は宇宙に星を作ってしまう能力、そして、初めてお父さん、お母さんがパパとママに会った日の事・・・。

ゆめの手が止まった・・・。

不思議そうに見つめる2人の視線の先は、ゆめの「涙」だった。

「私、本当は戦いたくない!」
「私、本当は、こうやって笑いながら食事がしたい!」
「私、もっともっと、お父さん、お母さんに甘えたい!」
「私は、私は・・・」

流れる涙を拭おうとしないゆめを、ヘーラーがそっと抱きしめた。

「ゆめ、あなたなら大丈夫よ・・・ゼウスと私の娘なんだもの・・・負けるはずないわ。きっと大丈夫、大丈夫・・・。」

ゆめは涙が止まらないまま、何度も頷いた。


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