小説 本好きゆめの冒険譚 第八十六頁
唖然とした・・・。
確かに首を刎ねたんだ、私も見た・・・。
なのに、奴は生きている。
どういう事だ!
残るは、私と魔王数十体のみ・・・。
「ゆめ様、我々も元は悪魔と同じ魔物、弱点は必ずあります!」
「どういう事?」
魔王達が言うには、我々「悪魔」と言われる存在は、「全身がコア」であるが故に、一度に全部を吹き飛ばさなければ、いくらでも再生出来るという事らしい・・・。
「一度にって、あんな大きさをどうすればいいの?」
ダイモーンはヘラクレスを「喰った」為に、さらに巨大化、力を蓄えたようである。
「任せて下さい、我々が全方位から最高位魔法を全身に打ち込んでやります!ですので、ゆめ様、この瞬間でおさらばです。」
え・・・・?
「どういう事なの?」
「この魔法は、全身の魔力を失います。魔法発動と同次に、我々は消えてなくなります。」
私が困惑してるのが分かったのか、魔王全員が笑いかけた。
「我共は、ゆめ様の眷属になれて、本当によかったです!それでは!」
数十体の魔王はダイモーンを囲うように飛び回り、それぞれが大魔法陣を作ると、ダイモーンを包み込み・・・
「絶対炎弾!」強烈な白い炎がダイモーン包み込み、焼き尽くしたかの様に見えた・・・見えたのだが・・・影が消えない
「ハッハッハ!お前等如き「下等の悪魔」の魔法など、我には効かぬわ!」
炎の中から無傷のダイモーンが現れる。
残りは、私「ひとり」だけだ・・・。
「久しいな、後はお前だけだ、「神の子ゆめ」よ。」
「私はお前など知らない!」
「知らないとは言わせんよ「Πρόσκληση」お前を招待したではないか!」
「何のためよ!」
「お前が我のトリガーなのだよ!お前を、お前さえを喰えば、我は絶対的な支配者になれるのだ!」
「絶対炎弾!」
ダイモーンの腕から炎が現れ一直線に向かってくる。
「アイギス!」
アイギスが盾になり炎攻撃を防ぐ。
「アイギス!撃て!」
アイギスの口から高火力の炎で応戦する。
これには、ダイモーンもマズイと思ったのか、防御壁を使い無効化していた。
「アイギス、一旦離れるわよ!」
「わかりました!ゆめ様!」
「クックックッ、逃げるか神の子よ!」
逃げる私達を絶対炎弾で、攻撃をしてくるが、その度にアイギスはヒラリヒラリと躱していく。
「ああ、街が・・・」
街は炎に焼かれながら、朽ち果てて行く。何処かにガスの吹き溜まりがあったのであろうか、爆発を起こしている。
「このままではマズイ!アイギス、広い場所に逃げるわよ!」
私達は、ひたすら逃げる、ダイモーンはしつこく攻撃の手を緩めない。その一発がアイギスの翼に命中してしまい、空を堕ちるように降下した。
眼の前には広い草原、海が隣接している地域。
草原に着地したアイギスを休ませゆめは、攻撃に転じる。
「ラードーン召喚!」
ヘーラーの召喚獣、もう一体の黒龍である。
「ラードーン、炎弾を撃て!」と言ったものの、ラードーンは炎を吐かない・・・
「どうした!」
「ゆめ様、ラードーンはヘーラー様の召喚獣、アイギスのようにはまいりません。」とゼウスが答えた。
「ならば!」
ゆめは、ラードーンの背に乗り羽ばたく。
「北風と太陽、召喚!」
「北風よ!奴を凍らせてしまって!」
北風が、極寒の風を吹き荒らす!しかし、奴には効かなかったようだ。
「太陽よ!奴を焼き尽くして!」
太陽が、猛烈な熱波を生み出す!が、これも奴には効かない感じだった。
アイギスの炎は防御を張って、太陽の熱波は何とも無い・・・?
試しに氷柱を打ち込んでみた。簡単に薙ぎ払われた。
ならばと、威力アップ・巨大化の氷注を打ち込んで見ると、防御壁を張る!
これだ!威力を最大にすれば、撃ち抜けるはず!
意を決したゆめの瞳と髪が虹色へと輝き出した。
その光はゆめ全身を包み込み、ゆめ自身が虹色の光を発している。
ゆめは両腕を天に上げ、黒雲をもたらす。渦巻く黒雲からは、雷のエネルギーが、バチバチと放電を始める。
「喰らえ!」
大電流が雷鎚となり、奴を貫こうと走る!
ダイモーンは、防御壁を張るがそれをも砕いた!
奴の左腕から左足辺りをねごそぎ奪ってやった。
これで勝てる!
「え?・・・」
その瞬間、雷鎚が私へと向かって来た。
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