小説 本好きゆめの冒険譚 第五十六頁
「その人」は眩しい光の中に立っていた。
目がだんだんと慣れて行くのと平行して、
姿がはっきりとしてきた。
2人いるのだろうか?
ひとりは男性、もう一人は姿からして、女性のようだ…
はっきりと見えた。
5mはあるのではないだろうか、筋骨隆々の男と
余りにも美しい、母性を感じさせる3m位の女が立っていた。
「ちょっと、お父さん、お母さん!」
ゆめの声が聞こえる。
そうか、ここが、「神々が住まう場所」。
「やっぱりいつもの大きさにもどってよ!パパ達が怖がってるじゃない!」
ゆめ!何を言っているんだ!相手は神様だぞ!
「あ〜、すまんかったの、ゆめや。この方がカッコいいと思ったのでな。」
「ゆめちゃ〜ん、怒らないで〜お願い♡」
なんだ、この2人は?ゆめの方が立場が上なのか?
いや、お父さん、お母さんって、言っているんだ、ゼウス達で間違いないだろう。
「パパ、ママ、おじさん、大丈夫?」
ゆめが心配そうに見ている。
「ああ…大丈夫だ。心配してくれてありがとう、ゆめ」
「やぁやぁやぁ、久しいの、パパさん、ママさん。そして、おじさん。」
身体のサイズが、いつの間にか一般的な大きさになっている。
「貴方様方が、ゼウス様、そして、ヘーラー様ですか?」
「左用。儂がゼウスじゃ。」
「まぁ〜、私の事も知って下さるだなんて!」
ヘーラーが、感激するように手を胸に当てている。
「は、はぁ、毎日、ゆめから聞いておりますので…」
ゆめが毎日、私の話をしている・・している・・している・・・
ヘーラーは、昇天してしまった…。
「立ち話も何じゃ、座るとするかの?」
・・・と言っても、この空間は何もないのだ。
「この方が、寛げるじゃろう?」
ゼウスがパチンと指を鳴らすと、「私達の家の中」にいる。
「これで、儂達が、そなたの家に来た感じになるじゃろう?」
部屋の中を見渡してみる…寸分たがわず再現されている…。
「あの、この空間は、どうやって作っているのですか?」
「これは、ゆめの記憶じゃ。それを再現しとる。」
「こんな事も出来るぞ。」
パチンと指を鳴らす。
そこは宇宙の中、足下には地球が見える。
「どちらが、良いかの?」
「家でお願いします。」
「では、何処に座るとするかの?」
「で、では、リビングのテーブルで…」
ゼウスは4人掛けのテーブルを見て、
「全員で、座れんな…」
パチンと指を鳴らす。
テーブルが伸び、6人掛けになった。
昇天から帰ってきた、ヘーラーも座り
話し合いを…
するとゼウスが、思い出したかのように、
「お客人が来たというのに、茶の1つも出さんとは!」
ゆめを呼び、頭の上に手を乗せる。
テーブルの上には、沢山の料理が並べられた。
「あの、これはどうやって…」
ママが尋ねると、
「これも、ゆめの記憶じゃよ。」
「ママさん、お料理、お上手ですのね!こんなに美味しい料理なんて、今まで食べた事なかったわ!」
ヘーラーが、ママの手を握って、何度もお辞儀する。
「い、いえ、私の料理なんて、神様の口には…」
その言葉を遮るように、
「いえ!あなたの料理は世界、いえ、全宇宙で一番美味しい!この最高位女神のヘーラーが保証致しますわ!」
ママは、ヘーラーから、料理を教えてくれとせがまれているので、2人仲良くキッチンへと消えて行った。
「では、本題に入ろうかの?」
「はい、単刀直入に申し上げますが…」
「何じゃ?言ってみよ。」
「貴方がたは、ゆめをどうしようと思っておられるのですか?」