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小説 本好きゆめの冒険譚 第八十七頁
その瞬間は、あっけなかった・・・。
ダイモーンはゆめが打ち込んだ雷鎚と同じ物を私に打ち返して来たのだ。
「ゆめ様!」アイギスがとっさに身を挺にして庇った為にもろに雷鎚を受けてしまった。
私は、地面へ叩きつけられ、アイギス、ラードーンは消し炭になっていた・・・。
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「ゆめ~、朝よ~ご飯を食べましょう!」
「おはよう、ゆめ。」
パパ!ママ!私は2人に向かって走り出す・・・
ハッ!一瞬だが、気を失っていたようだ・・・
起き上がろうとするも、体が動かない。
私は、右腕のみを残し、腕と両足を失っていた。
「フッフッフ、やっとだ、やっと我の勝ちだ!さあ我の糧となれ!」
ダイモーンが、ゆっくりと近づいて来る・・・
私にもっと、力があれば・・・お父さんの武器の様な力があれば・・・
「ケラウノス!私に力を!」
右手に刻まれた「勇者の証」が光を帯び、その光はやがて1本の「槍」になった。
ゼウスが最後にくれた力「ケラウノス」である。
私は渾身の力を込めて、槍を振り投げた!
その槍からは今までに見たことがない「大火力の雷鎚」を発射し、ダイモーンの四肢を奪い取るが、その代償に遥か先まで地を割りマグマが吹き出し空を焼く。
「ゼウス!」
「ハッ、ゆめ様!」
ゼウスから浮き出したのは「封印の書」。
「悪魔よ!封印されよ!」と封印の書に右手を翳す!
封印の書からは無数の手が伸び、ダイモーンを掴み吸い込んで行く
「フフフ コンカイモ ワレガ マケタカ。ダガ ツギハマケン。 リンネノサキデ マタアオウ カミノコ ユメヨ…。」
ダイモーンが封印の書に吸い込まれる瞬間に彼の心の一端が見えた・・・誰よりも人間を愛し、誰よりも人間の幸せを願っていた頃の「神・ダイモーン」。
「もしかすると、私に救いを求めてたの?お前は誰よりも優しかったんだね。救ってやれなくてごめんなさい。」
ダイモーンは封印の書に収まり、更にゼウスの中に閉じ込められた。
・・・勝った。
・・・全てが終わったのだ
・・・しかし、ケラウノスの高威力の雷鎚のために半分に割れたしまった星は、もう地球ですらなくなった。とても人間の住める環境じゃない。
「ゆめ様。」ゼウスが話しかける。
「確認しました所、全人類は消滅したようです。」
「そう・・・」
「ゼウス、地球、街、全人類を復元して。」
「申し訳御座いません。先程の衝撃で、記載されていた文章が消えてしまいました。」
「そう・・・。人類は復活できないのか・・・」
「ゼウス、お願いがあるのだけれど・・・」
「白紙のページを開いてくれる?」
「畏まりました。ゆめ様。」
ゆめは仰向けになり、空を見上げる…。本当は青空なんだろうなと思いつつ、焼かれた空を憂いた。
勝てなかった…。悪魔は封印したけれど、人類が誰もいなくなれば、負けと同じだ。
誰も、守れなかった…。
こんな時こそ、会いたい人がいる。思いっきり、甘えたい。頑張ったねと頭を撫でてもらいたい…抱きしめて欲しい…今は叶わないことなのだが、天に向かって懇願する。
パパ、ママ…。
ゼウスのページに残った右腕を翳し記した。
「Αιώνια αλλαγή όλων των πραγμάτων」