今日も私は、音楽を聴く。
深夜のコンビニ。
会計中に「ポイントで引いてください」と伝えたにもかかわらず、ガン無視で会計を進めようとする店員に向かって「すみません、ポイントある分全部引いてほしいんですけど」と再度言ったら「は?」と返されました、もかちゃんです。思わず私も「は?」って言ったわ。こちとら、ポイントあるのは知ってんねん。ネームプレートみたら研修中の外国人だったから「もういいです」と会計終わらせたけど、後ろの夜勤慣れしてるっぽい女性店員(日本人女性)はちらっとこちらを見てからバックヤードに消えていった。いやこっちのこと少しくらいは気にしてよ。
「アリガトウゴザイマシタ」と渡されたレシートには、612ポイントの文字。600円分引けたわ。怒りと悲しみの置き場をなくしたまま、King Gnuさんの「白日」を歌いながら帰宅した。今だけはこの心を凍らせてくれーすべてを忘れさせてくれよー。
……というわけで(どういうわけだ)
私の人生の大半には音楽があるわけだが、幼少期の私は、特に音楽が好きだったわけではない。むしろ、幼少期は本の虫で、とにかく文字と書籍がお友達だった。両親も人並みに音楽を聴いているけれど、特にバンドをやっていたとか、そういうことはない。でも今では、移動中は絶対に音楽を聴いているし、なんなら家でぼーっとしていても、最高に落ち込んでいても、めちゃめちゃおなかをすかせていても、生活のどこかに音楽がある。先日、15年前にやっていた交換ノートを「遅くなってごめんね」と今さら回してもらったのだが、そのノートには当時好きだった歌詞やアーティストのことがびっしりと書かれていて、懐かしい気持ちになったものだ。
なんでこんなに音楽が好きになったんだろう? と考えてみたら、初めてギターに触れた日のことをふと思い出した。
小学生のとき、両親が離婚した。父親と母親は顔を合わせるたびに喧嘩をしていて、私は定期的に「ねえねえいつおうちを出るの?」「この生活はいつ終わるの?」と母に聞き続けていたので、待望の…というとなんだかおかしな話だが、望みに望んだ両親の離婚だった。離婚をこんなに喜ぶ娘がいるのか? というくらい歓喜した。家を出た日は鼻歌交じりでスキップしちゃうくらいにうれしかった。
その後、母親が少しだけお付き合いをした男性がいたのだが、あるとき家に遊びに来たその人はアコースティックギターを弾いてくれた。(今思うと、あの軽さはクラシックギターだったと思う。確かめようがないくらい、曖昧で、遠い過去の記憶だ。)
「もかちゃんもやってみる?」その人から渡されたギターは思ったより軽くて、でも小学生の小さな手にはフレットがうまくおさえられなくて。ちゃんと音を鳴らすことすらままならなかったけれど、弦を弾けば響く音に、心が浮足立つのを感じた。
結局、飽き性だった私は、しっかりと弾けるようになるまえに辞めてしまうのだが、ギターに触れたことがきっかけで、テレビやラジオから流れる音楽で、ギターや楽器を意識するようになった。
私があまりにも各所で藤原基央とBUMP OF CHICKENの話をしすぎているので、最初に好きになったギタリストの話をすると驚かれることが多いのだが、私が最初に好きになったのは新藤晴一(ポルノグラフィティ)だった。彼のギターフレーズが好きだったし、弾き方や紡ぐ音、そして歌詞に焦がれた。かっこよくて眩しくて、私にとっては大きなあこがれだった。彼ほどにギターが弾けるようになることはないまま、すぐにギターを諦めてしまったけれど、彼の影響でずっと作詞は続けていて、何曲かメロディもつけた。彼の世界観が、とにかく好きだった。幼少期に「本を読む」ことに夢中になったように、曲の歌詞を理解して口ずさむことが私の生活を占めるようになった。
【ポルノグラフィティの歌詞の魅力】
https://note.com/chiffon_06/n/n203161ee87ea
↑めちゃめちゃ的確に表現されているので、ぜひこちらのnoteを読んでほしい。ポルノグラフィティは「不完全なこの世界を誰かが 描き足してくれるなんてない」(瞬く星の下で)という歌詞にもあるように、つらい世界も誰かに期待するんじゃなく、自分の人生なんだから自分で変えていけ、という応援歌をたくさん歌っている。ほんとそれがまあ、かっこいいんすよ。
実は晴一さん、エッセイ本も出してます(大好き)https://www.amazon.co.jp/%E8%87%AA%E5%AE%85%E3%81%AB%E3%81%A6-%E6%96%B0%E8%97%A4-%E6%99%B4%E4%B8%80/dp/4789726584
新たな音楽に触れる瞬間は、まるでクリスマスに枕元へ置かれたプレゼントのラッピングを開けるときのわくわくに似ていると思う。どんな音が続くのか、どんな言葉がつづられているのか。サンタの正体には幼稚園時代に出会ってしまったけれど、それでもクリスマスの日の朝は好きだった。
大人になるにつれ「昔聞いていた音楽」を流して安心したがることが増えてしまったけれど、やっぱり新しいワクワクに触れると胸が高鳴るし、かっこいいギターソロを聴けば、ギターなんてもう全然弾けないはずなのにわくわくする。音楽を聴けばそのとき感じていた気持ちがまるで花が開くようにぶわーっと蘇るし、当時の自分を思い返したりもする。たったワンフレーズが、私のつらさや喜び、楽しさとか、いろんな感情を封じ込めて未来へと運んでいく。
今日も私は、音楽を聴く。
仕事をしながら、移動をしながら、ごはんを食べながら。懐かしいもの、新しいもの。うれしい思い出、悲しい思い出の詰まったもの。思い出は上書きされて、悲しくなったり楽しくなったりすることもあるだろう。
今日も私は、音楽を聴く。
作り手が心を込めてつくった一曲を、プレゼントのように噛みしめながら。
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