前科あります(15)
中で出会った人の話です。
この人にあったことで、後の人生が変わりました。
この人は、クラブのオーナーママでした。
私より後に入って、先に出ていかれました。
であった場所は警察署の留置場、夜に入ってきて一週間もたたないうちに出ていかれました。
運動の時になぜ捕まったかを聞いたら、さくっと教えてくれました。
簡単に言うと高校生をホステスとして雇った、ということでした。
彼女には高校生の娘がいて、娘の友達をホステスさんとして雇ったらしいです。
怪しい風俗店ではなくて、普通のまっとうなクラブなのですが、やっぱり高校生はアウト。
同業者に刺されたらしく、まあよくあることのようです。
彼女は、私の方のことは知っていたようで(何せ新聞でもテレビでも出ましたから)、そのこともあって自分の話もしてくれたみたいです。
ちなみに留置場でも新聞は読めますが、自分の署の事件が載っている場合は、その記事を切り取ることになっています。
だから、翌朝の新聞の地方欄は小さく切り取りがありました。
でも中で、みんな自分のこととか話すことも多いので(しかもそれを看守の警察官は制止しない)、意味があるのかないのか。
私が、数か月後には執行猶予で出られそうっていったら、そのあとどうするのって聞いてきました。
仕事は馘だし、家もなくなったのでとりあえず従妹のところにでもと言ったら、うちで働かないって言ってくれました。住むところもあると。
うまい話には裏がある、というのが普通なので、うーんて悩んだら、無理にとは言わないから、いつでもどうぞって笑ってくれました。
聞いてた警察官たちも、にこにこ笑っていたので、大丈夫そうかなと思って、調べの時に担当の刑事に女性のことをそれとなく聞いたら、自分たちは行くことはないが、まともな店だと答えてくれました。
まあ、高校生を雇っていて、まともな店もないものだが、客層もいいらしい。
ということで、次の日の運動の時に、お願いするかもって話したら、えらく喜んでくれました。
何か仕事見つかるまででもいいよ、ということで、そのありがたさにちょっと泣きそうになりました。
ちなみに、警察関係者は飲みに行く店も限られているようです。
客は、ほぼその手の関係者ばかり。
酔っぱらった姿や懐具合を、反社たちに握られることのないように、ということらしいです。
まあ確かに私の職場も、決まった店しか利用しませんでした。
結局彼女の店に、出てしばらくお世話になることになりました。
それはまた後の話。
留置場、拘置所含めた中では、いろいろな人に会いました。顔をあわすことはないので声だけ聴いていた。若いやくざ、女子高生といいことして捕まったそこそこまともな仕事の人、誰とも話の合わない無口な人、陽気な詐欺師。
圧倒的に男性が多くて、留置場ではクラブのママ以外は女性が収容されることはありませんでした。
だから、男性諸氏の馬鹿話を声を殺して笑いながら聞いていました。
たいていの人は捕まっているという状況を忘れているかのように、陽気でした。
弁当持ち(執行猶予中)なのにまた捕まった男性は、ダブル執行になるかならないか心配したり、懲役いったらどうなるって心配したり。
私がいたときには今まで懲役を喰らった人はいなかったので、中の話は分かりません。
担当の警察官も、刑務所の中については通り一遍の情報しかもっていないらしく、尋ねられて困っていました。
拘置所で、運動のときにあった年配の女性は前科三犯とか、覚せい剤の繰り返しと窃盗。
出て風俗で働いたりもしたけど、もう年でだれも買ってくれないから、なるべく長く中に居たいとか、冗談とも本気とも取れない口調で話してくれました。
でも最後に、入るのは癖になるから、あんた、気をつけなさい、可愛い顔してるんだからいい男捕まえなさいって、ありがたい忠告をいただきました。
可愛いかどうかは置いといて、その言葉は心に刻みました。
ということで、次は裁判について書こうかな。