文字のつくりかた_活版印刷の世界を楽しむ:市谷の杜の奥深さに迫る
はじめまして、私はmojitamabook編集部の森暉理です。
mojitamaでは、「ミライ」に繋がる様々なことを調べ、紹介しています。
この度、私は大日本印刷の「市谷の杜 本と活字館」にお邪魔し、そこで活版印刷とはどういうものかを学んできました。
この記事では、そこで学んだ様々なことを、できるだけ素人の目線で紹介していきたいと思います。
この記事では、全六回に分け、それぞれ
「作字」「鋳造」「文選」
「植字」「印刷」「製本」
を紹介していきます。
今回は第一回の作字です。
この記事を読み終わった時に、皆さんが作字とは何かをはっきりわかるように書いていくつもりですので、ぜひ読んでみてください
作字とは何か
結論からいいましょう。文「字」を「作」ることです。
活版印刷をイメージする時、多くの人は活字に彫られた文字をイメージすることでしょう。
では、その文字はどうやって作られているのか。どのように彫っているのか。どのようにデザインされて、私たちの使いやすい姿を維持しているのか。
その答えが作字にはあります。
では、実際に作字の様子を辿りながら追っていきましょう。
原図とパターン
原図、と言うより設計図と言った方がわかりやすいでしょうか。
とびっきり字の綺麗な人が丹精込めて字を書いている、わけではなく、
実際は字を書いた後に綺麗に見えるように上から白で塗るなどの調整をしたりしています。
紙に書かれた文字は、特殊な薬剤と光によって金属の「パターン」に写されます。
ただ紙から金属に写しただけではなく、文字で書いた部分が少しへこんでいるのが特徴です。
この後の加工で、このへこんでいる部分を使い、活字の母である母型を作っていくことになります。
活字パントグラフと母型
母型が1つあれば、活字をいくらでも作ることができます。
たとえばひらがなの「の」なんかはかなり多用することになりますし、70000を超える日本語の文字数を考えれば母型を簡単に作れるようになっておいた方がいいです。
その母型を簡単に作れるのが、活字パントグラフという機械です。
活字パントグラフは、パターンのへこみの部分を使って母型にくぼみを彫っていきます。
そうして作られるのが、この母型という小さな真鍮の棒です。
この母型に溶けた鉛を流し込むことで、活字の形を作る訳です。
まとめ
さて、ここまでが作字の範囲になります。
文字を作る、という言葉の通り、設計から実際の形になるまでを紹介しました。
簡単に、原図→パターン→母型 と覚えて下されば幸いです。
次週はこの母型に鉛を流し込んで活字を作る「鋳造」を話していきます。
よろしくお願いします。
mojitamabook編集部 森暉理
次回「鋳造」
リンク→
おまけ
さて、このおまけのコーナーでは、わかりやすくするために省いた様々なことを記していきます。
これは先ほども紹介した、文字を金属に移した「パターン」を「母型」の形に変える「活字パントグラフ」というものです。
これがまだなかった時、母型というものは職人さんが丹精込めて一つづつ掘るものでした。虫眼鏡のようなもので拡大し、彫刻刀で少しづつ削って整えていたのです。しかも左右反転で。そのため、職人さんの中には普段使う文字が左右反転になってしまう方もいらっしゃったとか。そうして作ったものを種字と言い、それを型取って加工し、母型を作っていました。
そして、そうやって職人さんの手で掘られたものを「電胎母型」と言います。
そう言った電胎母型は、ベントン母型彫刻機の登場によって変わります。
アメリカで開発されたこの機械は、母型の生産速度を爆発的に向上させました。
先ほどもお伝えした通り日本語の文字は山のようにあります。ひらがな、カタカナ、漢字、記号、それらの総数は計り知れません。
当時ベントン彫刻機を導入していた会社は、三省堂のみ。
大日本印刷と津上製作所は必死に頼み込み、そのベントン彫刻機を見せてもらうことに。
数ヶ月もの間、ベントン彫刻機で作業している様子を周りから眺め、ついには日本初の母型彫刻機「活字パントグラフ」を開発したのです。
写真に「TSUGAMI」と書いてあるのは、津上製作所が作ったことを表しています。
そうして作られた活字パントグラフは、それまで職人さんが高い技術と時間をかけて作っていた母型を、パートのおばちゃんが短時間で作れるようにしたのです。
その新しい母型は、それまでの電胎母型に対し、彫刻母型と言います。
それから職人さんは少なくなっていきましたが、非常にレアな漢字などで母型がなかったときに、鉛に直接彫刻刀で文字を刻み、活字を作るのはやはり職人さんだったと言います。
(同じ人かはわかりませんが)
mojitamabook編集部 森 暉理