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もじこ塾 総合型選抜 合格報告会2021〜その1

1月15日に、総合型選抜の合格報告会をオンラインで行いました。
(2/15まで、見逃し配信をご覧になれます→)
そのときの様子を、3回に分けてお届けします。

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本日は【もじこ塾 総合型選抜 合格報告会21】にご参加いただきありがとうございます。
質問がたくさんあると思いますので、Q&Aコーナーの時間を多めにとっています。それではどうぞよろしくお願いいたします。

◆序――AO入試の現在

もじこ塾は学習相談を行っています。その中で、特に小学生の保護者の方から「うちの子はこんなに英語できなくて、大学とかどうするのだろう」と悲嘆にくれている方がいらっしゃいます。確かにディスレクシアにとって英語を学ぶのはとても大変です。

しかしながら、ディスレクシアにとっても大学に合格する手段はありまして、それが今回紹介する総合型選抜なんですね。これは、2年前までAO入試と呼ばれていたものです。内容は全く同じで、看板だけ変わりました。なので、今日この後、総合型選抜と言うと長くて大変なので、AO入試と言っていくこととします。

このAO入試ですが、この進学方法のおかげで、ディスレクシアでも大学に入りやすくなりました。
これは文科省の方が発表した平成29年度、つまり2017〜18年の資料です。

図1

一般入試で大学に入る人はこの20年でどんどん減っていまして、今、全体で見ると、55%対25%くらいになっているわけです。

でも、保護者の方々から「そうは言っても、国立大学はほぼ一般入試じゃないか」という声も聞こえてきそうです。確かにその通りで、国立大学は今でも、平成31年入試でも、一般入試が8割近くを占めています。

図2

ただし、そんな国立大学でも、推薦入試は増えています。
そして私立大学では、推薦入試とAO入試を足した入学者が、すでに一般入試の入学者を上回っているという状況があります。

ここから考えて、もじこ塾が到達した結論は、
「最難関大学に入るのでなければ、基本的にはAO入試で大学に入ることを目指していくべき」ということです。

こうしたことに数年前から気づき、もじこ塾に来ている高校生には、最難関大学を目指しているのでなければ、早い時期から推薦入試・AO入試に絞りなさいというアドバイスをして、そのような指導を行ってきました。

◆大学によって異なる入試方法

もじこ 前置きはこれくらいにして、では、自己紹介をお願いします。

さえ さえです、よろしくお願いします。都立高校で、都内の女子大に合格しました。

いおり いおりです、よろしくお願いします。都内の一貫校を中退後、通信制から私立大学に合格しました。

もじこ それでは、今日裏方を務めてくれる柳沢くん。

柳沢 柳沢です。教員養成系の学部で学んでいる大学2年です。

もじこ 柳沢くんはもじこ塾のブログにも文章を書いているし、合格体験記も書いているのでご覧いただいた方もいるかと思います。小学校教員になるために、いま英語を頑張って勉強しています。

では早速、どうやって勉強してきたかを聞いていきますが、その前に、二人は英語がどれくらいできるか聞いてみたいと思います。辛い質問ですが……。

いおり 高2の時に英検3級に合格したのですが、その後の準2級は落ちています。

さえ 私は本当にできなくて、ローマ字がやっと書けるか書けないかというレベルです。

もじこ さえちゃんのディスレクシアはだいぶ重度です。
もじこ塾では「フォニックス講座」を行っています。フォニックスはディスレクシアにとても大事なのですが、さえちゃんはフォニックスが定着しなかった最重度のディスレクシアです。
ちなみに柳沢くんは?

柳沢 英検3級がギリという感じです。今、生徒と英文法の勉強をしています。

もじこ 「これくらいの英語のレベルでも、正しい対策を立てれば大学に合格できる」というのが今日のお話の趣旨です!
では、次に入試方法を聞いてみます。

さえ 私はAO入試です。エントリーシートを送った後、一次が小論文、二次が集団討論の後に小論文という試験でした。

もじこ AO入試はいわゆるペーパー入試ではなく、志望理由書と小論文、面接、課題提出などで行われる入試のことですが、具体的な試験方法は大学によってまちまちです。さえはその中で、「試験会場に行き、時間内で小論文を書く」という入試に一次と二次で挑んで、合格しました。

いおり 私もAOで、一次試験は事前課題。事前に出された課題を書いて提出して、それに合格すると二次で面接、というのでした。

もじこ 課題は手書きしていますか?

いおり 事前課題はワードとエクセルだったので、携帯で打ってから、それをコピペで移していました。志望理由書もワードです。

もじこ いおりちゃんの志望理由書や課題は全部ワードだったので、手書き一切なし。スマホで書いて、ある程度完成したらワードに移して、という形で文章を作っていきました。こうやってツールを使ってなら文章を書けるという人は、もじこ塾にも一定数いまして、いおりちゃんはそうやってずっと書いてきました。

さえ 私は、小論文も志望理由書も手書きです。漢字が書けなくて大変でした。

◆合格の勝因は?

もじこ では、合格の勝因を聞いていいですか?

さえ 私はまず、一般入試を早めに捨てられたことが一番大きいと思います。それでも粘ってて、高3の夏休みに入る前でも、どちらにしようかなと思っていたのですが。
でも、もじこ塾で「小論一本、AO一本にしたほうがいい」と言われて切り替えられたので、それでちゃんと必要な勉強に専念できて受かれたのかなと思います。

もじこ 高校にしても、よその塾にしても、なかなか「AOに振り切りましょう」と言うところは少ない。大抵は志望大学を決めて、「志望大学に入るために、AO対策と一般入試の対策の両方をしよう」とアドバイスするようです。でももじこ塾では、もともとディスレクシアという困難があるのに、2種類の入試対策をするのは無理、という考え方です。
「勇気を持ってAO対策に絞る」が勝因ですね。いおりちゃんは?

いおり 自分は、AOにしようというのは早くから決めていたのですが、自分が本当にやりたいことを見つけられたのと、あと「事前課題と面接」という、自分に合う受験方法を見つけられたというのが大きいかな、と。

もじこ 受験方法で絞り込んだのは、割と特殊なケースですよ。

いおり 私は消去法と言うか、時間を測られてその場で書くというのが絶対無理だと思ってて、そこをなるべく避けたことが大きくて。でももし、行きたい大学があって、そこがそのような方法だったら、覚悟を決めてやっていたかもしれないです。でも、一番行きたい大学は、自分に合った受験方法でした。
思いが強ければ挑戦するのも全然アリだなと思うけれど、なるべく自分に合った受験方法を、消去法でも見つけておいたほうがいいかもしれない。

もじこ 「時間を測ってやるのが無理」という自分の特性を、はっきり自覚して選んでいったんですね。
いおりちゃんは、やりたいことを見つけるまでが大変だったよね。紆余曲折あったと思うけれど、その話をお願いします。

いおり 自分は結局食品の方に行ったのですが、最初は心理系に進もうかなと思っていました。でもその時はなかなか自分から前向きに受験勉強をできなくて、親に「大学フェスに参加してみよう」と言われてイヤイヤ参加したんです。そこに×大学が来ていて、話を聞いて「そういえば食品いいな」と気づきました。

食品は自分から興味を持ったので、自分から大学を調べてみたのですが、そうやって調べている時の方が、周りの人から「輝いている」と言われたし、自分に合っている方向を見つけた時から、意欲が出た。それで「あ、こっちだな」という感じになって。そこからは、あまり受験が辛いということはありませんでした。

もじこ ディスレクシアはモチベーションで動く人種だと言われているので、食品に出会ったときのいおりちゃんの輝いた感じは、とてもディスレクシアらしいと感じましたよ。その後はこっちが何も言わなくてもどんどん、資料を見つけてきましたよね。
その前の話も聞いていいですか? なんで最初心理を目指したのか。

いおり もともと進学校に通っていて、高1の10月で中退したんです。その理由が、ディスレクシアで授業についていけないのもあったのですが、それ以前に、人間関係でメンタルをやられていた時期があって。いわゆる重度のうつで、「この学校は無理」となってしまったんです。
あと、ディスレクシアと分かってから学校側に「これをやってほしい」と頼んだけれど、それをやってくれなくて。進学校だからだと思うんですけど、成績が上の人にレベルを合わせるんですね。なのでどうしても追いつけませんでした。

それで通信制の高校に移ったのですが……通信制には普通に来た子もいるのですが、何かしら背負ってくる子が多いので、先生がメンタルケアに慣れているんです。それですごく心が休まったのが良かったです。
あと「通信制だと勉強ができなくなるんじゃないか」という偏見があると思うのですが、自主的に勉強すれば、学力が落ちることは正直ないです。自主性が大事になる。なんなら大学の練習になるくらい。

もじこ 高2でコロナ禍となって、全員にとって学校生活が変わったタイミングで通信に移った。それで一挙に自分のペースで勉強できるようになったり、内省的な時間も増えたり。コロナの最初の1年があったから、だいぶ立て直すことができたと言ってましたよね。

いおり そうですね。

◆ディスレクシアに気づいたとき

もじこ さえちゃんがもじこ塾に来るまでの話をお願いします。

さえ 自分がディスレクシアだと気づいたのは高校1年生の時です。高校受験の時、かなり真面目に英語をやってはいたのですが、本当に結果が出なくて。結局最後までbe動詞がわからない。「本気で言っているの」と思われるかもしれないけど、私のディスレクシアはそれくらい重度で、さすがにこれはおかしいのではと思ってネットで調べたら、もじこ塾にたどり着いたんです。

もじこ ちなみに、ネットで調べるときの検索キーワードは?

さえ 「英語」「できない」です。
高1か高2の時、5問の単語テストのために2時間くらい対策したのに1問しか正解できないとか、普通にありました。

もじこ 2時間、その単語を書き続けたけれど、覚えられなかった。

さえ そうです。高校受験の時も、そんなことのくり返しです。ちゃんと授業は聞いているし、授業中に寝ているとかも全くないのですが、全然覚えられない。そうすると自信がなくなっちゃうので、自分に合う道は早めに決めるのが大切なことだなと思います。

もじこ 高校受験の時は「なんで自分はこんなに英語をやっているのに、できないんだ」と思っていた?

さえ そうですね、さすがにおかしいなとは思っていたのですが、努力不足なのかな、集中できてないのかなと。ディスレクシアという言葉を知らなかったので、おかしいと思いながらやっていましたね。

もじこ もじこ塾に来る生徒からよく聞きます、「自分が英語で点数を取れないのは、他の人がもっと頑張っているからではと思ってた」と。「2時間やっても単語を覚えられないのは、他の人はその倍くらいやっているからじゃないのか」と思い込んで。で、もっともっとやるようになって、そうすると他の教科をやる時間がなくなって、ますます負のスパイラルに入っていく……というパターンをよく聞きますね。

自分はいくら勉強してもできない、馬鹿なんじゃないかと傷つき疲れて、もじこ塾にやってきて。「これは特性なんですよ」「脳の仕組みなんですよ」と知ってひっくり返る、という展開が多いですね。

ディスレクシアだと知ってどうでしたか?

いおり 私は「どうにもならないんじゃないか」という気持ちと、「頑張れば大学受験までになんとかなるんじゃないか」という思いが両方、半々くらいでありましたね。

もじこ やっぱり、ちょっと絶望感もある?

いおり ありますね。自分は確実に不利というのがわかったら、心にくるものがありまして。でもそれでも、心が安心するのはずいぶんあります。自分で何をすればいいのか、別に自分が努力不足じゃなかったんだ、そういうのがわかるだけでも、良いことがだいぶ多かったと思いますね。

もじこ 私はディスレクシア塾という看板を掲げている以上、ディスレクシアだと本人や保護者に伝えることは良いことだと思ってやっています。それはディスレクシアにも長所がいっぱいあるし、戦略的に動けば社会生活をまったく問題なく送っていけると信じているからです。

でもやっぱり、告知と言いますか、「英語が普通の人のような形でできるようになるのは難しい」と伝える瞬間は、やはり、落ち込むのがわかるというか、辛いものがありますね。
「ディスレクシアは本人は気づかない」というのも、もじこ塾をやっていてわかったことです。誰かが指摘しないとわからない。だから教師に気づいてほしい、というのが私が一番言いたいことです。

さえ 他の勉強ができない人のなかに、ディスレクシアの人はかなりいると思うんです。漢字が露骨にできないとか。私もそっちなんです。差がちょっとあるのだけれど、どちらもできない。だから気付きにくいかな、というのがあります。

もじこ いおりちゃんにも、ディスレクシアとわかった時の気持ちについて聞いてみようかな。

いおり 結論としては、知ってよかったなと思っています。ただ最初は「普通になりたい」という気持ちがあった。これは結構小さい時から持っていました。それで自分がディスレクシアだということを聞いて、今までは努力すれば普通になれると思っていたのだけれども、それがなれないという絶望感はあったりましたね。

けど、それと同時に、今まで自分が努力してもできなかったことがあるのは自分がバカだからと思っていたのが、それはバカじゃなかったんだと知らされて、ホッとした。あとなぜか自分を客観視している視線があって、「そうだよな、こんだけ努力してできないわけないもんな」という気持ちで、結構複雑に、何個かの感情があったという感じ。

もじこ 自分を見ている自分がいる、客観視するというのはディスレクシアっぽいですよね。
せっかくですので柳沢くんも。

柳沢 僕は結構プラスに捉えてて。プラスでしかなかった(笑)。自分は特別な感じというか(笑)。

もじこ すごいポジテイブシンキング(笑)。置かれている環境のおかげかな。

柳沢 僕は高校が自由で、進路も多彩なので。

もじこ 多様性を許容する環境にいれば、ディスレクシアとわかってもポジティブに受け止められるんですね。

◆入試方法は細かく調べる

もじこ 受験対策の具体的な話もしていきましょう。
さえちゃんは高2からもじこ塾で月1回小論を書いて、だんだん志望校を固めていったという流れですよね。

さえ AO入試の科目って小論だけかと思われるけど、国語と英語も必要という大学が意外とあって。小論だけの大学を探すのに苦労したのを覚えています。

もじこ AO入試の試験内容って、本当に各大学によって異なるので。そういうことを事細かに調べていくというのは大変でしたね。

さえ そうですね、「AO入試は小論だけだろう」と思わないで、ちゃんと早めに、どんどん調べて決めていくのが大切かなと思います。

もじこ 志望校を決めるまで1年くらいかかったかな。

さえ そうですね。女子大の経験がなかったので迷っていた部分があって、それでなんだか時間がかかっちゃったなというのもあります。

もじこ あと、普通の人でも大学の募集要項みたいな書類を読むのは煩雑で大変だけど、ディスレクシアはさらに読むのが大変なので、一緒に読んであげたこともありました。
志望校を決めるまではどうでしょう。評定と受験方法と科目を見て、行けるところに決めたという感じ?

さえ そうです、大体今言ってもらった感じですね。

もじこ 自分がやりたいこと、というのは考えに入れなかった?

さえ 特にないです(笑)。もう、とりあえず、今の高校よりはいいところに行こうということと、あと受験方法だけで決めました。

もじこ 「高校よりもいいところにいきたい」というのが、モチベーションになったということ?

さえ 自分の行っていた高校と同じレベルの大学に行って、将来何か役に立つのかなという気持ちはありました。ちなみに高校は偏差値39(笑)。
中学校の時クラスで全く勉強しない人、クラスで騒ぐ系の人が来る高校(笑)。あと、一次で落ちた人。

もじこ 大学進学率は?

さえ 3割くらいですね。高校は私の大学受験に関してはノータッチでした。

もじこ さえちゃんのAO対策は、全部もじこ塾で行いました(笑)。
いおりちゃんは、志望分野を決めるまで時間がかかったけど、その後は自分から大学を調べて。

いおり 食品に行こうと決めてからは大学を探していました。あと自分の祖父が食品系の会社を起業した人なので、ある程度、食品の大学を知っていたんですね。「こういう大学があるから調べてみたら」という感じで、それで調べつつ、今の大学に決めたという感じです。

もじこ ディスレクシアにとって理想は、高1の1月頃には、志望学科が決まっていること。食品に行く・福祉に行く、という感じで。大学は決まってなくてもかまいません。また簡単に決まらなかったとしても、探し続けてほしいです。やりたいことが決まっている方が、モチベーションで動くことができます。
「やりたいことが決まれば、大学名が後からついてくる」という流れかもしれません。

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次回は「もじこ塾 総合型選抜 合格報告会21〜その2」をお届けします。

※このnoteで取り上げてほしいテーマを募集します。
コメント欄、またはmojikojuku@gmail.comまでお寄せください。

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