結婚して苗字が変わった話
32歳 男、結婚して苗字を変えました。
「なんで苗字変えたの?」
「婿養子?」
結婚してから、こんな質問がマニュアルに書いてあるかの如く、会う人・話すたび降りそそいできた。
まず、興味を持ってくれて大変ありがたい。
そして話題になることは目論み通り。
なんとなく男性の苗字に合わせることが当たり前な世の中に抗ってみたかったのだ。
結果として、常識を疑い合理的に判断していきたいという自己表現のひとつになった。
「なんで苗字変えたの?」
その理由は言うまでもない。私の苗字が「佐藤」だからだ。
「佐藤」は日本で1番多い苗字。
このままいけば、約500年後には日本人全員が「佐藤さん」になってしまうのだ。
参考文献:日本における佐藤姓増加に関する推計方法と結果について
アイデンティティのひとつでもあるフルネームの半分が「みんなと一緒」になってしまうことに、佐藤姓としてとても責任を感じる。日本の危機だ。
ましてや私は男3人兄弟。さらに佐藤姓の勢力を拡大させようとしているわけである。
同姓同名について否定するつもりはないが、デメリットは多い。私の実家地区に弟と同姓同名がおり、年賀状が間違えて届いたことがある。どのような付き合いがあるかわかってしまうため、送り主にとってはいい迷惑だ。
犯罪者が全国ニュースになれば、ネット特定班の大捜査により同姓同名者が疑われることもある。すすきの首切り殺人事件の同姓同名者も被害に遭われただろう。
話は戻り「なんで苗字変えたの?」に対しては「佐藤が多いから」。まるでAIチャットbotばりに回答している。
ちなみに弟の相方さんの旧姓も「佐藤さん」。佐藤姓同士の婚姻による打ち消しが実現された。
「婿養子?」
苗字を変えたとなると、なぜだか多くの人は「婿養子になった」と思うよう。
私もはっきりと違いがわかっておらず調べたのだが「婿養子」と「婿入り」の違いはこうだ。
婿養子と婿入りは、妻の両親と夫が養子縁組しているかしていないかで違いがあります。婿養子は妻の両親と養子縁組しますが、婿入りでは養子縁組を行いません。
女性が嫁入り後に夫の苗字へ変わるように、婿入りした男性は妻の苗字を名乗るようになります。婿養子になっても苗字が変わるため、この2つは混同されることがあるのでしょう。
言葉の通り養子の関係にはなく、苗字を変えたほうが「入る」形になる。
「息子の配偶者(妻)=嫁」「娘の配偶者(夫)=婿」と呼ぶことから、「嫁入り」「婿入り」となる。
どうも世の中的な認識がされていない気がするのだが、当たり前のように苗字を変えてきた女性は「嫁入り」してきたというわけだ。
ちなみに自分の妻を「嫁」と呼ぶ男性が一定数いる。
おそらくこのことを知った上で、三人称「うちの嫁」呼んでいるのだろう。
「結婚して苗字を変えたら実の両親との戸籍関係はどうなるのか…」
婚姻届を提出するまではそう考えていたが、何も問題がなかったというお話。
それもそのはず。世の中の嫁がれた女性たちだって実の親との関係は変わらないのだから。
ちなみに私は長男である。心配性な私は佐藤姓がなくなることも恐れた。
しかし両親が佐藤姓(弟夫婦)という「純潔・佐藤の男の子(私の甥)」がいる。我が家系だけでも、100年は佐藤姓が残ることを確信した。
いつ籍入れたの?
私たちが婚姻届を提出したのは2024年1月1日。
一粒万倍日だった。それだからか有名YouTuber HIKAKINや、他にも結婚をした芸能人もいた。
しかし私たちにとっては「キリがいいから」「忘れないから」の理由が大きい。
お正月や三ヶ日は多くの人にとって仕事が休み。家族や親戚、親しい人や「推し」と同じ時間を過ごす人が多いだろう。
夫婦の節目を年初にすることで、過ごしている時間や空間に感謝する日にできればいいと考えている。
そして、よく「結婚記念日を忘れた」というのを諸先輩方から聞く。
過ぎてから「記念日だったよね、忘れてたよね」と言われたら…恐ろしい。
お互いの誕生日にプレゼントを渡したことがないほどに、祝う形を気にしない2人ではあるが、話題にしながら美味しい食事をしたいもの。
「元旦に籍入れたんだ!」
この言葉には2つの違和感がある。
元旦婚?元日婚?
入籍日?婚姻日?
たしかに婚姻届の提出は11時ごろ。元旦といっていいだろう。
元日(がんじつ)と元旦(がんたん)は、どちらもお正月の1月1日をあらわす言葉です。
しかし、元日が1月1日の「丸一日」をあらわせるのに対し、元旦は1月1日の「午前中」のみをあらわす言葉だというのが通説となっています。
これは、「旦」という漢字が太陽の意味である「日」と、地平線を象徴する「一」によって成り立っている=初日の出が昇った朝から午前中までの間、と覚えると分かりやすいですね。
しかし提出した日、そしてのちに結婚記念日になる日くらい夜まで浮かれさせてほしい。
私たちは「元日婚」だ。
そして「籍を入れる」とは、なんともウィットに富んだ表現に感じる。しかし、どこか違和感があり調べてみるとまったくウィット貧乏であった。
入籍は、読んで字の如く「既存の戸籍に入ること」を意味する言葉です。入籍届を書いて行う民法上の手続きであり、婚姻届とは異なります。
いわゆる「結婚」は夫婦になることを意味し、民法上は婚姻届を出したタイミングで結婚したとみなされます。
入籍届は、もともとある戸籍に違う戸籍にいた人物が入ることを意味します。例えば、お子さんのいる人が再婚する際に、自分の戸籍に入っていた子供を相手の戸籍に入れる場合は入籍届が必要です。また、初婚だけれども婚姻届を出さずに出産し、その後改めて父親の姓を名乗るために、父親の戸籍に入る場合も、入籍届が必要となります。
初婚の二人が結婚する場合、結婚前は双方の親の戸籍に入っていることが多い。もちろんさまざまな家庭の事情はあると思うが、多数派ではないだろう。
私たちが提出したのは「婚姻届」である。
結婚するときに提出する届を「婚姻届」といいます。(中略)婚姻届を出すと、これまで入っていた戸籍から除籍して、二人だけの新しい戸籍を作ります。
もし戸籍のことが気になって聞いてくれているのであれば、「いつ籍を入れた?」よりも「いつ新戸籍をつくった?」のほうが質問としては外さない可能性が高いことを伝えたい。
戦前の戸籍は「家制度」の考え方のもと、「家」を基本単位とし、「戸主」と呼ばれる家の家督を継いだ一家の責任者の役割(戸主権)が存在していました。
長男が家や相続財産を継ぐという慣習もその頃のものです。
昭和23年。新しい戸籍法が施行されます。この戸籍法では、戦前が「家」を基本単位としていたのに対して、夫婦とその子供(2世代)が基本単位とされることになりました。
つまり「家制度」が廃止され、親子単位の登録に変更になり、「戸主」は特段の権利をもたない「筆頭者」に置き換わりました。ようやくここで現在の戸籍制度が確立したことになります。
理解するまでに時間がかかるが、調べるほどに戸籍はおもしろい。
結婚式はするの?
結論から言うと、今のところ予定はない。
弟や友人の結婚式に参加してきて、素晴らしいモノだということはわかっている。が、「自分が主役になれる日!」に喜びを感じない。
感謝の気持ちを伝えたいけど、わざわざ結婚式の場でなくてもいい。
一般的に結婚式は、入場→ムービー鑑賞→歓談→催し物→お色直し→挨拶→お見送り→二次会と、一人ひとりと話せる時間が非常に短い。
自分の友達を妻や家族に紹介したいし、妻の友達も紹介してもらいたいが、それなら飲み会やホームパーティー、庭で焼肉などで交流をしたほうがお互いに知り合えていい。
実際に私が参加した結婚式の友人パートナーで、私のことをそれほど知っている人はいないだろうと悲観的になっている。
なによりその時代時代でたくさんの人のお世話になり、感謝を伝えたい人が多すぎて、参加してほしい人を選ぶ(逆に言うと声をかけないで日々過ごす)自信がないことが、結婚式を挙げたくない大きな理由だ。
風潮として地元の友人、学生時代の友人、職場のなかよしなどが一般的だろう。
昔は遊んだけど今はほとんど会わない人もいれば、知り合ったのは最近だがめちゃくちゃ気が合う人もいる。友人というよりも、年齢の離れた先輩や尊敬する先輩もいる。
声をかけなかった、括りに入らなかった人にできる説明が見当たらない。誘わないことで嫌われたくない小心者で自信がないのだ。
今年、妻は3ヶ月間で5件の結婚式に参列した。やらない方向で固まっていた2人にとっては強敵だ。
実際にウェディング強化シーズンの当初、妻は「私も挙げたい…!」と心変わりしたほどだ。
見ず知らずの人件費も参列者で割り勘するくらいなら、会場費と食費のみ頂戴して、式次第はプロジェクターに投影しておく、映像は時間が来たら流れるように設定しておく、自分でアナウンスする形をとりたい。
そういう自作自演のパーティーで、招待状もなしで誰でも出入りできるようにしてみたい。
手続き大変だったしょ?
ありがたいことに労いの言葉をもらえる。おそらく女性側より男性側のほうが多く言われるだろう。
どちらが苗字を変えても、2人の煩雑な手続きの工数は同じ。それなのに労ってもらえることは不思議だ。
銀行口座、クレジットカード、各種会員情報など、とにかくまあ多い。
苗字を変えた人にオススメしたいことは、マイナンバーカードと運転免許証に旧姓を入れること。
更新時などに申告しないとやってもらえないので、忘れずに伝えてほしい。
たとえば、私は某メガバンク口座をもっているがなかなかオンライン上で氏名変更手続きができない。
窓口までも車で1時間。しかも平日のみ。
まだそのシーンに出くわしていないが、そんな時に身分証の名前が変わっているとさらにややこしいことが想像ついた。
生年月日を伝えたくらいで本人一致としてもらえる保証もない。リスクヘッジにオススメである。
さいごに
私は同じ価値観で話し合いができるパートナーと出会い、結婚できてよかった。
妻は「苗字から派生するあだ名」が気に入っているんだとか。
苗字変更後に、私もその「苗字から派生するあだ名」で呼ばれた時、結婚をして苗字が変わったことを実感した。
佐藤姓の最大のメリット「下の名前で呼ばれやすい」は失ったが、まさに第二の人生といえるだろう。
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