コンパクトな引き伸ばし機「The Intrepid Compact Enlarger」を5ヶ月使った感想
5ヶ月前に「The Intrepid Compact Enlarger」が届いてから、自家プリントをスタートしました。構図と露出を決定してシャッターを切るだけではなく、現像からプリントまでの一連の作業を通して、写真を完成させる醍醐味を味わっています。
昨晩も自家プリントを夜な夜な楽しみ、アナログ写真ライフを満喫しました。The Intrepid Compact Enlargerが届いた時の開封やファーストインプレッションは、過去の記事で挙げています。
この商品の最大の特徴は、必要な時に組み立てて使う引き伸ばし機であることです。このような製品は他にはないと思います。一般的に、引き伸ばし機は大きく場所を取るので常設が基本です。私のように、家族が寝静まった後に浴室を暗室化するようなユーザーにはピッタリな製品です。使わないときは、分解してボックスに入れ保管しておけば場所を取りません。私は、Negative Supplyの「PRO RISER MK2 - PROFESSIONAL COPY STAND FOR FILM SCANNING」というコピースタンドに取り付けていますが、普段使用しているカメラ用の三脚に取り付けることも出来ます。まさに、大胆不敵(Intrepid)なコンパクトさです。
逆に言えば、家に暗室を作る場所があって常設が可能な人には、この製品を選ぶ積極的な理由はありません。中古で程度の良い引き伸ばし機を購入した方が良いかと思います。
コントロールボックスは至ってシンプルです。カラーのCMY値・モノクロ多階調(コントラスト)がメインのダイヤルになっています。私はカラーをプリントしたことがないので、モノクロ多階調のダイヤルしか使っていません。タイマーの露光秒数は、左側にあるT+とT-で調整します。説明書では0.1秒単位で調整できると記載されていますが、実際には0.5秒単位でしか調整できませんでした。説明書と違うので、メーカーに問い合わせたら以下のような回答が直ぐに届きました。
ということで、0.5秒刻みで露光秒数を調整できます。問い合わせに対して直ぐに返信をくれたのは好印象でした。
コントロールボックスには、セーフライトも内蔵しています。ただ、コントロールしやすい場所に置くので、必ずしもセーフライトを当てたい場所と一致しません。あくまでも予備的な機能と考えておいた方が良いと思います。
二つの不満点
コントロールパネルで不満点を挙げれるならば、露光をスタートする緑の「RUN」ボタンです。グレーの「Foucs」赤の「Cancel」ボタンとサイズが同じで、セーフライト下ではボタンの色分けもあまり効果はありません。そのため、間違ってグレーの「Foucs」を押してしまう危険性があります。実際に押してしまった事があります。「RUN」ボタンは露光をスタートさせる最も重要なボタンなので、他のボタンよりもサイズを大きくするか、点字のようなテクスチャを設けて指先で「RUN」ボタンを認識できる工夫が求められます。
もう一つの不満点は、ネガをネガキャリアにセットし引き伸ばし機に取り付けるシステムです。一般的な引き伸ばし機はネガキャリアをトレーにセットしますが、この製品はマグネットで繋がっている蛇腹とLEDライトの筐体の間にネガキャリアをセットします。蛇腹をLEDライトの筐体から外してネガキャリアをセットするとき、強力なマグネットのおかげでセットしにくいのです。横の隙間から差し込む場合もきついので中々うまく入りません。もう少しスマートにセットできる工夫が欲しかったです。ただ、このマグネットのおかげでコンパクトに設計されているので、ここはしょうがないかもしれません。
以上、二つの不満点はあるものの、総じて素晴らしい製品であることは間違いありません。3Dプリンターで作られた製品ではありますが、280ユーロという価格も良心的だと思います。
アンセル・アダムスの「ネガは楽譜、プリントは演奏」という言葉を残しています。演奏する楽しみを与えてくれた「The Intrepid Compact Enlarger」には心から感謝します。
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