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LEICA MP 0.72 ブラックペイントを4年使った感想

今日は大統領選の投票日で、夜から開票が始まります。どちらが選ばれても、落ち着いて結果を受け入れてもらいたいと切に願います。

さて、4年前の2020年11月初旬に、愛機LEICA MP 0.72を購入しました。この2020年は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界中に広がり、いわゆるパンデミックの年でした。「Stay home and away from others(家にとどまり、人とは会わない)」がスローガンとなり、それまでの日常が一変しました。会社で対面して仕事をするのが当たり前だったのが、家でZoomやTeamsを使ってリモートで仕事をするスタイルへと変わり、働き方自体が大きく様変わりしたのです。今となっては、まるで大昔のことのように感じますが、実際にはまだわずか4年しか経っていないのに驚きます。


国家非常事態

2020年3月13日、当時のトランプ大統領が国家非常事態を宣言し、米国におけるCOVID-19対策が本格化しました。全米の経済活動が一時的に完全停止するという、前例のない事態が発生したのです。2001年9月11日の同時多発テロ事件の際、私はロサンゼルスに住んでおり、その時も大きな衝撃を受けましたが、経済活動が停止することはありませんでした。

国家非常事態宣言を受けて、私は家で悶々と仕事をしていましたが、どこか欲求不満のような気持ちがあり、2日後の3月15日にLEITZ Minolta CLをeBayで購入してしまいました。フィルムカメラは、LEICA M5を売却して以来、友人から無期限で借りているRollei 35Sだけを使っていました。しかし、会社の部下が祖父の形見分けで手に入れたLEICA M7を見て羨ましくなり、その影響とステイホームのストレスが重なり、思わずLEITZ Minolta CL / MINOLTA M-ROKKOR 40mm f/2 を購入してしまったのです。

LEITZ Minolta CLは、露出計を内蔵したレンズ交換式レンジファインダーカメラでありながら、非常にコンパクトで、機能美に優れたデザインが大きな魅力でした。LEICAとMinoltaというダブルネームは、当時のライツ社の厳しい経営事情を反映していたものの、私としてはお洒落で気に入っていました。散歩程度ならば外に出て問題なかったので、LEITZ Minolta CLを持ち出して写真撮影を楽しみました。

コロナ禍での購入

しかし、ロックダウンが解除された後も国家非常事態宣言は続き、ソーシャルディスタンスが求められる不自由な社会生活が続きました。さらに、Black Lives Matterの運動など、社会不安も広がっていきました。その結果、ストレスが解消されることはなく、その影響もあってか、LEICA M5以来の本格的なM型ライカがどうしても欲しくなるという「ライカ病」にかかってしまったのです。この時は、Leica M10 Monochrom “Leitz Wetzlar” と LEICA MP 0.72 のどちらを購入するか悩んでいました。当時はCOVID-19の影響で工場の稼働停止や物流の混乱があり、どちらも在庫切れで手に入らない状況でした。そんな中、定期的にチェックしていたLEICA USのオンラインストアでLEICA MP 0.72が購入可能であることを知り、思わずすぐに注文してしまいました。そして、無事にLEICA MP 0.72が手元に届きました。

LEICA MP 0.72の魅力

私にとってLEICA MP 0.72の最大の魅力は、何と言ってもブラックペイントです。経年によってペイントが剥がれ、真鍮が露出したライカは独特のオーラを放ち、その魅力は計り知れません。このようなライカは人気が高いだけでなく、中古市場でも高値で取引されています。新品のブラックペイントモデルを自分の手でエイジングしていくのは、特別な体験になると感じたからです。また、露出計が内蔵されている点も便利です。露出計のないLEICA M-Aは、完全機械式のカメラとして確固たる存在感を持っていますが、日常的に使う上では露出計がある方が断然便利です。ただし、もしM-Aにブラックペイントモデルがラインアップされていたら、相当悩んだことでしょう。フィルム巻き戻し機構については、LEICA MP 0.72のノブ式よりM4以降のクランク式が好みです。使い勝手が良く、斜めに設計されたクランクのデザインが格好良く感じられるからです。LEICA MP 0.72が発売された当初、アラカルトでクランク式を選べたようですが、そうしたサービスが復活すれば嬉しいですね。

新品のLEICA MP 0.72が手元に届いたときの興奮は、今でも鮮明に覚えています。光沢感のあるブラックペイントが実に美しく、手に取った瞬間、心が高鳴りました。その外観は、銃器のような無骨さとセクシーな魅力が同居しており、その存在感が私の独占欲を強く満たしてくれるものでした。このような利己的な欲望が個人の中で完結することに、なんて平和的なのだろうと感じたものです。同時に購入したSummicron-M 35mm F2 ASPHを装着し、ILFORD HP5+を装填して、さあ撮影です。

初期不良

しかし、最初のロールでフィルムが巻き上げられなくなるという故障が発生し、すぐに1ヶ月間の修理に出すことになりました。この時、ライカの品質管理やその対応に対して大きな疑問を抱いたのは言うまでもありません。残念ながら、ライカの品質管理やカスタマーサービスに関しては、国産メーカーのような高い水準を期待するとがっかりすることが多いです。高級ブランドだからといって過度な期待はしない方が良いかもしれません。

これからも共に過ごす愛機

ネガティブなスタートではありましたが、LEICA MP 0.72を購入して損をしたとか、期待外れだったと感じることは全くありません。むしろ、このカメラは使うたびに喜びを感じる、最高の機械式カメラです。ブラックペイントのしっとりとした手触りと美しい光沢、シャッターを切る際の囁くような音、そしてフィルムを巻き上げる際の官能的な操作感が、このカメラの感性価値を最大限に引き出してくれます。4年経った今でも、その魅力は色褪せることなく、むしろこのカメラへの愛情はますます深まっています。長く使い込むうちに、角の部分のブラックペイントが剥がれ、真鍮が顔を覗かせるようになり、カメラと過ごした年月が目に見える形で表れてきました。こうしたスペックでは語り尽くせない喜びこそが、このカメラが持つ普遍的な魅力と言えるでしょう。2003年に発売され、20年以上というロングセラーが、その普遍性を表していると思います。これからもこのカメラと共に、写真を撮り続けていくのが楽しみです。

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