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【万年筆】スーべレーンの良さ
ある日、noteを見ているとおすすめに「スーベレーンM800」の記事がいくつも上がってきた。種々の万年筆の記事があるだろうに、あの時だけはスーべレーン一点推しであった。
「なんかの偶然か?まあ嫌いじゃない」とまんまと乗せられ、たくさん読んだ。とかく、この万年筆は便利らしい。うんうん、確かに。分かります。と思いました(小並感)。もう少し皆さんの記事を読んで、アウトプットしたいなぁ…
そういうことがあったので、私も軽くスーべレーンの話をしたいと思う。
私もスーべレーンを使っている。
多くの方からの支持を集める万年筆。もちろん、私にとっても特別な一本(3本だけど)である。
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M800が2本、M205ブルーデモンストレーターを14cペン先に変えたものが1本である。
出会いも鮮明に覚えている。
M800の青軸は、オークションで新品を落札して手に入れた。そんなものを格安で売るとは思えなかったため、「本当に新品?」と疑心暗鬼だったが本当に新品だった。ニブの調子も良く、とても満足している。
緑軸はフリマアプリで、他の出品物からして貴婦人であろう方が出しているものを、格安で買った。その時は「スーべレーンが安く買えた!」と嬉しかったが、金持ちのお下がりを嬉々として使うのが惨めに見えて、後で少し泣いた。まあ、今でも使っているのだが。
こちらはいくつかのオーナーを経ているようだったので、自分で少し調整して使っている。少し太くなったが気にしない。
手に入れた今でこそ何気なしに使っているが、私はスーベレーン、とりわけM800への憧れが強かった。
それは多くの方が「至高の逸品」と評しており、万年筆使いのゴールのひとつと考えていたからでもあるが、なによりビジュアルに心惹かれたのである。
数年前、ときおり百貨店のショーケースを眺めていたのだが、一番「使ってみたい!」と思っていたのがスーべレーン。ショーケースの光に照らされた、バイカラーで大きなニブに、まるで魂まで吸われたようだった。書き味は言うまでもないだろうが、あのニブは所有欲を十分に満たしてくれる。
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「あの輝きを、いつか…!」
そう思いながら、買う機会を待っていたのである。
そうして様々な手段を駆使して手に入れたが、実際に使ってみると感動ものであった。
まず、書き味。
「溶けたバターのよう」「水の上を走るよう」などと評されており「いやいや、まさか」と思っていたのだが、対して誇張していないのだと思わされた。特に中字だともうペン先というより「水先」。ウォーターマンである(?)。
もちろん、細字でもぬらぬらと筆記できる。国産万年筆とは異なる筆記体験が味わえるのが特徴だ。
私はM800がお気に入りなのだが、それは内部に真鍮を用いているから。これも書き味に寄与してくれる。
初めて持った時、正直言って「重いし太い!」と思った。そりゃ、金属を用いていれば重いに決まっているが、いち筆記具の重量ではないと思ったのである。太さは4色ボールペンくらいなのだが、あまりに手に合わず「これ持って書けるのか?」と不安にもなった。
しかし、慣れてくるとこのサイズでないと手が満足しなくなる。真鍮の重みも相まって、ペンに任せてスラスラと書くことができるのだ。
M400は軽くて細いため、M800のイメージで持つと持て余す感じがする。まあ、M400は手帳や野外、M800は室内で腰を据えて使うのが最も良いということだ。私はチキンなため野外に万年筆を持ち出すことはほぼない(あってもサファリにする)。よって、M800を使うのが快適だ。
そして、スーべレーンのもうひとつの特徴は徹底した実利主義である。
胴軸の浮かれたカラーリングとは違い、質実剛健な使い心地であると言える。
スーベレーンは吸入式である。つまり胴軸にインクを溜め込む機構なのだが、カートリッジやコンバーターを用意するまでもなく、これとインクだけで筆記が完結しているのが個人的には楽である。
そして、ペン先を取り外し可能。くるっと回して外せば、内部の洗浄も簡単である。ペン先がダメになったり字幅が気に入らなかったりした場合も取り替えるだけでOK(といってもペン先がめちゃくちゃ高いのだが)。
つまり、万年筆としては相当テクニカルであり、工業製品としての性質を備えているといえる。「自分、仕事できます」といった空気を纏っているのだが、そこを緑軸や青軸といった「チャラさ」でうまく隠しつつ、おしゃれに見せているのがにくい。
別に、インク窓以外は真っ黒の「仏壇カラー」も見慣れているし、それでも構わないはずである(一応M800のラインナップにブラックもあるが)。ところが、一般と異なるカラーを取り入れることで実利一辺倒でなく「使う楽しさ」というものを想起させてくれる。
というわけでスーべレーンは使っていて全く飽きないし、憧れであり続ける。
ただ、最近は細い字を書くことが多く、ぬらぬらで細い字が書けないこれの出番は減りつつある。だが、極限まで万年筆を厳選するなら間違いなく選択肢に入ってくるだろう。
これからも初心を忘れず、書く楽しさを味わいながら使っていきたい一本である(三本あるけど)。