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【万年筆】私とウォーターマン カレン

ウォーターマンのカレンを購入した。

カレンはフランス語で「船」を意味する。船の穂先をイメージしているという流線的なボディは、万年筆としては異質の存在感を放つ。オシャレな中に可愛げを感じさせる、まさに「可憐」なデザインだ。先端がバランス型でもベスト型でもない(丸くも角ばってもない)のが良い。

しかし、その細身に反して金属軸でかなり重い。ペン先は18金なのだが、インレイニブである(軸とペン先が一体化している)ためか、滑らかではあるが柔らかくない。高い万年筆といえばよくしなり、ふわふわな書き心地だと考えている方からすれば、とんだ見当違いだと言えるだろう。
だがこれは、裏を返せばしなりによる制動を抑え、適度な重量で安定した書き味をもたらしてくれるということ。よく「鉄の棒で書いているようだ」とたとえられるが、遊びの少ない実利的な一本である。

この美しいデザインと質実剛健さから、私はカレンが好きである。書き味が特段面白いわけではないが、普段使いにはピッタリである。ぜひとも愛用していきたい。
……と思っているのだが、カレンが私を好いていない気がする。

実は、これは3本目なのである。全部中古だが、同じものを買った点でいえば、トップクラスに多い。
カレンが好きすぎてコレクションしているのではない。先代の2本は破壊してしまったのだ。これらは完全に自分のせいだが、カレンの性質が残念な方に向いてしまった結果でもある。

1本目は魔改造をした結果、使えなくなってしまった。
先述した通り、カレンはインレイニブである。よくある万年筆のようにペン先が露出した形でないほか、取り外しができない。よって、調整が難しい部類に入ると思う。
しかし、若かった私は無謀にも、書き味をスルスルにしたくて調整をした。その結果、なんだかよくわからなくなってしまったのである。大損失である。何も、こんな高い万年筆でミスらなくても…。

2本目はその反省があったので、調整はほどほどにしていた(しないとは言わない)。
ちょっとした調整で具合が良かったので、「これは使っていけそう!」と思っていた。しかし、まもなく悲劇が起こったのだ。
書いている途中でのことだった。その日は暑かったことから、手汗をうっすらかいていた。それがいけなかった。カレンの身体はぬるっと私の手をすり抜け、自由落下を始めたのである!

「あぁっ!!!」

嘆いたのも束の間、床に叩きつけられた。
ここがカレンの落とし穴なのだが、軸が結構ツルツルしている。とはいえ普段はそんなに滑らないが、条件が悪いと手から落ちる可能性もなくはない。

しかもこの時、不幸にもペン先から落下し、無様に曲がってしまった。万年筆使いの悲哀として、よく「ペンを落として曲げた」というものがあるが、今のところ最初で最後のペンがこれだ。

波打っていて修復しようもない。本来なら修理に出すべきだろうが、カレンは66000円もする。ペン先の交換なら半値はかかるかもしれない。
先代2本は、中古で購入した。ならば、中古で具合の良いものを漁って取り替えた方がいいのではないか…と思い、放置していた。

そして、3本目である。
これも中古で買ったが、ペン先はほとんど磨耗しておらず具合が良い。インクフローが渋かったのでそこだけは調整した。

書き味も問題なく、滑らかな筆記ができる。これだ、これを求めていたんだ!

というわけで、大好きなカレンが3代目にして定着したかもしれない。また落とさないようにだけ注意しなければならない。
また、軸はいくらでも残っているので余裕があればペン先の交換もお願いしたいと思う。私の筆記具ライフをカレンで埋め尽くしていくぞ!



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