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【万年筆】集めてから気づいたこと

私は万年筆の収集を趣味としている。
今や手書きの機会は少ないし、そもそも手は2本しか備わっていないのだから集める必要ある?と思うかもしれない。しかし、字幅やタッチの柔らかさ、軸のデザイン、そして紙やインクの相性、果ては自分のコンディション(書き味を楽しみたい日もガシガシ書きたい日もある)などを考え出すとキリがないのだ。
私は実用主義なので、コレクションをコレクションのままにしない。自分にとって最高の万年筆をいくつか求めるべく、旅を続けているのである。ポケモンリーグに挑む前にベストメンバーを6匹揃えるサトシと同じだ(違う)。

というわけで、私の作業スペースの傍らには万年筆が2~30本転がっている。ダンゴムシでも使い切れない数である。
本当はバトルロイヤル方式で、使わなくなってきたものからインクを抜こうと考えた。そうして将来的には、数本に減らす計画であった。

しかし、最近になって全部使うわけでもない膨大なコレクションを本気で反省し、「いや、本当に処分しよ……」と思った出来事がある。

それは先日、旅行に行った時のこと。
一応、出先でもメモを取ろうとノートやペンを取り繕ってみた。

ノートはモレスキン(ラージサイズ)を採用した。
一番の魅力はカバー。堅牢な表紙は傷つきにくく、ゴム紐で閉じられるので中身がグチャグチャになることもない。公式のペンケースを装備すれば荷物がまとまるのもポイント。持ち運びには最適だ。



しかし、弱点もある。紙質がお世辞にも良くない。個体にもよるのだが、多くは万年筆での筆記で裏抜けする(にじむ)。もともと鉛筆やボールペンでの筆記を想定しているのだろう。
ただ、実験した結果セーラー万年筆の顔料インク「極黒」ならあまり裏抜けしないことが分かった(プラチナは無理)。これを入れた万年筆ならお供にできる!

……が、マニアなら知っているが顔料インクにも弱点がある。
今のインクのほとんどが水性インクで、水で洗い流せるが顔料インクは頑固である。使わなければガッツリ詰まる。扱いには注意を要する代物なわけだ。詰まりすぎて使えなくなった万年筆が私の手元にもある。

というわけで、持ち運ぶ万年筆にも気を払わねばならなかった。
できれば、外に持っていくなら安い方がよい。外で仰々しくモンブラン(10万はくだらない)……と洒落込む紳士もいるようだが、私には無理!!!!頑丈ではあるのだが、擦り傷ひとつでもついてごらんなさい。旅行中ずっと引きずることになる。そもそも、書くことも大した内容ではないので鷹揚と書く必要もない。最悪、壊したり失くしたりしてもダメージが小さいものにしよう。

また、顔料インクを扱う都合上、分解洗浄しやすい方がよい。分解できない構造だと詰まった後の始末が悪い。工具無しでバラバラにできればなおよい。
そして、あまり高そうに見えない方がいい。盗まれてしまいそうだからである。また、金ペンをモレスキンに差した時の見た目のアンバランスさが目立ったので、鉄ペンくらいがラフでいいだろう。

そうしてモレスキンのお供はLAMY社のsafari(vista)とした。

ネットで買えば2000円台の安さでありながら書き味もそこそこよく、分解洗浄もできる。傷が入ってもsafariなら味として受け入れられる。モレスキンにはピッタリではないか!?

……はっ!?

ワシ、外にsafariしか持って行けないじゃん!!

当初の話題に戻るが、数十本も万年筆を持っていながら、外にはsafari、せいぜいAL-STAR(safariのちょっと高いやつ)や安い金ペンくらいしか持っていけないことに気づいてしまった。
外で書き味を堪能する必要がないと考えているのもあるが、チキンなので傷ついたり失くしたりするのが怖い。特に私は忘れん坊なので、出先で万年筆を遺失する可能性がかなり高い。諸々を考えると、safariかAL-STARあたりで済ませておくのがちょうどいい手合いである。

……となると、それ以外は家で使うことになる。
用途はかなり限られてくる。家でも原稿やメモ、プロットを書くためにしか使わない。家で手帳に書き込むことはまれである(あってもボールペンでよい)し、手紙を書くこともない。だから全体的に数本あればよい。

万年筆は使い込むのがよいとされる。そろそろ拡大路線をやめなければ……どうせ、家で書くだけなんだから……と、自分に言い聞かせつつ、歯止めがかかるかどうか怯える日々である。

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