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「津軽」を旅する〜④弘前・大鰐温泉

私は何とかして弘前市の肩をもってやりたく、まったく下手な文章ながら、あれこれと工夫して書いて来たのであるが、弘前市の決定的な美点、弘前城の独特の強さを描写する事はついに出来なかった。重ねて言う。ここは津軽人の魂の拠りどころである。何かある筈である。日本全国、どこを捜しても見つからぬ特異の見事な伝統がある筈である。

『津軽』,太宰治,昭和19年,小山書店

今回旅行するまで知らなかったが、弘前には明治から大正に建てられた洋館や教会がたくさんある。古風な城下町をイメージしていたけど、美味しいフレンチのレストランや素敵な喫茶店も多いらしい。
この日は、あまり目的地を決めずに、弘前の街を散歩してみた。

市内はバスが発達しているし、名所の間も結構歩いていける距離にある。車なしの旅行者にも観光しやすい街だった。

せっかくの旅先で、写真ばかり撮るのはやめようと思っている。ちゃんと自分の眼で見ておきたい。でも、弘前ではやめられなかった。絵になる風景がたくさんあって、1人ハイテンションで写真を撮ってしまった。

追手門近くのお堀。桜や紅葉の季節じゃなくても十分美しい。弘前の人が誇るのも納得

旧弘前市立図書館
観光館にバッグを預けて街歩きスタートしようとしたら、すぐそばに。無料で入れました。

ディズニーの世界みたいでかわいい外観
優しくて上品な雰囲気。淡いグリーンの窓枠に、クリーム色のカーテン。カラシ色の天井もセンスが良すぎて感動した

旧第五十九銀行本店本館(青森銀行記念館)
ここも重要文化財。周りの雰囲気も良くて、とても気分があがった。

豪華でオシャレ。遠くから見ても目立つ美しさ
重厚感も華やかさもあるつくり。窓から見える松も、日本の洋館の好きなところ
天井のデザインがオシャレでずっと見ていた。「金唐革紙」という珍しいものらしい。この壁紙欲しい。
他の部屋とちょっと雰囲気が違って、ほわぁっと優しい光。私の家もこんなカンジにしたい

カトリック弘前教会
弘前城付近から歩いて10分くらいの、明るく可愛らしい教会。

歴史を感じる畳敷の教会。比較的新しいらしいステンドグラスには、リンゴや津軽三味線の絵が入っていた

大正浪漫喫茶室
藤田記念庭園が見えるカフェでランチができる。

松と洋館。大正時代っぽくていい
大人気で結構待ち時間があったけど、インテリアを眺めてたらあっという間だった

藤田記念庭園
6,600坪もある広大な庭園で、和館や茶室がいくつかある。

明るく美しい和室
眺めのよい廊下。細部のつくりも美しい
このお庭は最高だった。遠くに真っ青な岩木山が見える。

太宰の生きた時代だと、これらの建物や庭園は、子供の頃にできたくらいの、まだ新しいものだったはずだ。100年経った今見てもまったく古くなく、オシャレだと思う。こういうのが創られていた、昔の人の美意識が羨ましい。

弘前すごい!美術品みたいな建築がたくさんある!映えを求める若い人たちも、絶対に楽しいから来るべき!!と1人で大声で言いながらうろうろして、大満足だった。そして、この日の宿の大鰐温泉に移動する。

大鰐は、津軽の南端に近く、秋田との県境に近いところに在って、温泉よりも、スキイ場のために日本中に知れ渡っているようである。山麓の温泉である。ここには、津軽藩の歴史のにおいが幽かに残っていた。

『津軽』,太宰治,昭和19年,小山書店

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