あなたがいるから生きていられる 〜新刊紹介〜
今日はご紹介したい本があって。あ、4月13日出版で、しかも安くないし、もしかしたら難しいって感じる人の方が多いかと思うのですが。
ICU、いわゆる集中治療室というのは 医療現場でも特に生死をわける時間の治療をするところ。そこに「ICU(集中治療)症候群」というものが存在すること、それがただのせん妄(意識の混乱)でないことは、実は医療者の間でも十分に知られていないと思います。
新型コロナ感染症のパンデミックで家族に会えないまま亡くなった方もそのご家族も辛かったと思うけれど、その時家族に会えずともICUから生還したひと(ICUサバイバー)にその後どんな苦悩がおきたか、そしてその苦悩が決して稀ではない事やその後の人生にどれだけの大きな苦しみを与えるかということの実例からこの本は始まります。個性と、かけがえのないそれぞれの人生をもった人間と関わっているのだということを忘れてはいけない、少しでもこんな悲劇を減らしていかねばというウェズリー・イリー医師の心からの願いが本になっています。
ICUの医療に関わる人だけではなく、「人間として生きるために必要なことは何か」を再確認出来るという意味で 誰もが考えさせられる内容だと思います。ヴィクトール・フランクル医師の「夜と霧」にも、根底の部分で繋がるものがあると感じました。
原作のオーディブルの他、身内の翻訳なので先に読みました。すいすい読める本ではありません。もしかしたら病院ときいただけでそこで起こることは理解できなくなる、という人もいらっしゃるかもしれない。
でも、パンデミックで人々が切り離されたときのいいようのない不安感や「気が狂うんじゃないだろうか」と畏れたような気持ちは、あながち間違っていなかったんだと、これを読むとよく分かります。
この本は医療とかその救命技術を超えて、個人のいのちに触れるときに相手を尊重するとはどういうことかという根源的な部分を教えてくれると思うのです。命あってこそ、だけれど、そのひとの心を置き去りにしたら人間は心の命の火から先に消えてしまうという、当たり前なのに忘れがちなことが書かれています。
チャンスがあったら手に取っていただきたいです。
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