ひかりの気配
友達と白夜の話をしていた。
彼女はフィンランドで、私はアラスカで白夜を経験している。
「夜がさ・・・・カーテン閉めてるのに、眠りにくくてね」
「あー、そうそう。なんだろう、あれ」
「なにかが動いてるみたいだよね。落ち着かない」
言葉の外で 同じ様に感じていたんだなとわかるのは嬉しい。いつも慎重に言葉にする友達だから、ますます。
旅先の夜は、早く寝るようにしていた。
翌日も 普段身をおかないその土地の人のように歩きたいから。
遮光カーテンがつけられた部屋の中は本当に真っ暗だ。
なのに目を閉じると 窓の外が心なしかざわついている。
音ではない。生き物でもない。
でも なにかがうごめく、というか、小さなささやき声が聞こえそうというか。決して こちらを脅かそうとかそんなのではない。
そうだな、空気が細かく震えているというか。揺れているというか。
気配 としか言いようが無い。
「実体」があるようでない。
冷たいものではなくて、なにかこう、「見知った」もののような。
普段は気付かないだけで、光の存在感は「目で見える」だけではないらしい。今でもあの泊まった部屋の窓の外の、微かな音が聞こえそうだ。炭酸水が立てる微かなぴち・・・ぴち、ぱち・・・・という気泡の消える音のような。
それは気付かなくなってしまうほど、思い出した様に微かに聞こえてくるのだが 確かに私達の周りにずっとあって、加えて本当に時たま、窓から誰かが覗いてくるような気がする。
北欧のトロール伝説(ムーミンとか)みたいな話が生まれるのもなんとなくわかる。
もちろん、そこに「在る」「覗く」ものは人間とかではないんだ。確かめようとは思わないけど、絶対そう。そしてなんとなく存在感が大きい。
確認のしようも、証拠もないけれど、あのざわめきや「在るもの」は太陽の光の粒だったのかなぁと今でも思っている。